4章 新国家 地下帝国編
第63話 地下帝国
◆ ◆ ◆
ばしゅっ、という衝撃音と共に俺はゼリー状の物体の上に着地した。
着地したと言ってもヒーローがビルの屋上から飛び降りるようなカッコイイものではなく、全身がゼリー状の物体に強く叩きつけられた。例えるなら飛び降り自殺だ。
ゼリーが衝撃を吸収してくれたとはいえ体中にズキズキと痛みが走る。だがそれと同時に俺は生きているのだと実感した。
「いってててて……」
体に付いているゼリー状のぬめぬめとした不快な物体を落としつつ周りを見ていく。
畳2畳ほどの薄暗く狭い空間に床はゼリー状の物体。壁に触れるとごつごつとした感触と一緒に手に砂が付着した。
「岩と砂みたいだな。洞窟の中か?」
俺は
ゼリーの上に俺と一緒に落ちてきたであろうスマホがあった。それを拾ってポイントを確認するがやはりポイントは0ポイントだった。
「そうだ。ありすさんに連絡を…………圏外……」
スマホの左上には圏外と表示されていた。これでは上にいるみんなと連絡の取りようがない。
スマホのライト機能を使って壁を照らす。すると周りの壁の色と違う部分があった。俺はその部分を両手で押してみた。力を加えると簡単に壁がくるんと回転し、勢いそのまま壁の外に放り出された。
「また洞窟だ」
ゼリー状の物体に覆いつくされた狭い空間からようやく脱出することはできたけど次は長い廊下が現れた。どうやらここは地下にある洞窟のようだ。
右をぱっと見た限り行き止まりなので左に進むことにした。それにしてもこの洞窟の中は湿気が多いのかじめじめしている。ゼリーのこともあって体がべとべとだ。
果たしてこのまま進んだ先に何があるのか。できれば人の1人や2人いてくれればいいんだけど。そんな恐怖と希望を抱きながら歩いていると真横の壁がくるんと回転した。
「あっ、おっとっと。んーいったーい」
壁の中から俺と同い年ぐらいの可愛らしい少女が出てきた。黒髪のセミロングでラフな格好をしている。お尻を擦ってんーっと唸っていた。
「んっ? 君、誰?」
「俺ははやと。その、大丈夫?」
「うん。ちょっとびっくりしたけど平気平気」
少女が立ち上がり微笑んだ。
「私は
未来が手を差し出してきた。
「あ、あぁよろしく」
俺はその手を握った。
お互い分からないことだらけだったので、互いのことを知る為に話しながら出口を目指した。
「未来もやっぱり上から落ちてきたのか?」
「うん。選別ゲームで脱落しちゃってね。へへへっ、でも脱落したら殺されると思ってたからびっくりだよー」
未来が服の上から体をぽんぽんと触っていた。ゼリーのせいで服が少し透けていたが気にしていないみたいだ。
「俺も脱落=死だと思ってたから今何が起きててここは何の為の場所なのかさっぱりだよ。その選別ゲームでっていうのはこの間、えっと確か5日前ぐらいに対象者がモニターで発表されたやつ?」
「うん。多分それ」
ということはその選別ゲームには剛とロッドもいたはずだ。
「選別ゲームはまだ続いてるの?」
「終わったんじゃないかな」
「そうか。俺の友達の剛とロッドって奴も対象者に選ばれてたんだけどどうなったか分かる?」
「ごめん。その人は知らないかな。あっ、出口だよ!」
未来が走り出したので俺もすぐに追いかけ未来と並んで走る。
「うわっ、なんだこりゃ」
「迷路だね」
長い廊下を抜けると等間隔で小さい部屋らしきスペースが数え切れないぐらいあった。見た感じだと雪で作るかまくらのようだ。それに合わせて右に行く道や左に行く道も複数存在しかなり入り組んでいる。
俺と未来は一先ず声が聞こえる方へと向かった。近づくにつれてどんどん騒がしくなってきた。
声がしていた場所は大広間だった。男女幅広い年齢層の人が数台設置されているモニターを見て談笑している。モニターを見ないでただ雑談をしている人もいた。
俺は話を聞こうと大広間に足を踏み入れた。すると、モニターを見ていた50代ぐらいの男が俺に視線を向けた。
「おい、また来たぞ。もう俺は疲れた。コロモ!! お前がやれ!」
男が大広間の隅の岩に座っていた30代ぐらいの体格のいい男に向かって叫んだ。
「えっ、おいら?」
「コロモっつったらお前しかいねぇーだろうが!」
男の取り巻きがガハハハッっとコロモと呼ばれた男を馬鹿にするように笑った。
「は、はい」
コロモが岩から立ち上がるとのそのそと重そうな体を動かして近づいてきた。
「こんにちは。こんばんは。おいらコロモ。多分ここに来たばっかりだべ?」
「は、はい。さっき落ちてきました」
「了解。了解。えっと、君の名前は?」
「はやとです。でこっちが」
「
「はやと君に未来さんね。了解。了解。で、まずここがどこかというとだね、ここは新国家から見放された国。地下帝国だべ」
『「地下帝国!?」』
俺と未来の裏返った声が揃った。
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