第51話 さよならおっぱい

年末年始は、家族全員が家に居る時間が増えるためか春馬の睡眠も不安定に。今年は無理せず、お正月は初詣だけでもと地元の神社に5人揃って行った。人生初のおみくじは、中吉。おばあちゃんのネックレスでも、何でも掴みたい春馬は迷わず一つ掴み取り自慢げだ。


短時間とはいえ初詣に行ったのが祟ったのか、新年早々発熱。小児科が、診療再開した日だったのが唯一の救い。またも39℃を越えていた。


離乳食を中止して、2日間下痢と戦う。1日で7度のうんち。あまりの緩さにオムツでも受け止めきれず、お尻もただれてしまう。熱が下がると、発疹が。これが、噂の突発性発疹なのだとわかるのは、もちろん発疹が出たあと。6ヶ月から1歳前後に、何度もかかる場合もあるそうだ。


突発性発疹からも立ち直り、10ヶ月に突入すると離乳食は朝昼晩の3回食に。主食のパターンを決めることで、献立に悩むこともなくなった。朝は、パン粥かコーンフレークをミルクでふやかしたもの。昼は、くたくたに煮たソーメンやうどん。夜は、かゆ。卵豆腐やバナナ、お麩をきなこで和えた物、かぼちゃの煮物など好みもはっきり出てきた。春馬は、甘みのある食材が好きなようだ。


そして、ここまで離乳食が進むとあっと言う間に歯も生えてくる。油断していたら授乳中に歯が当たり、乳首に傷が出来てしまった。乳頭保護のシリコン製カバーも購入したが、突き破られる日もそう遠くなさそうだ。


私は、意を決して休日に一気に断乳進めることにした。お風呂の時に、おっぱいを思い出すと面倒なことになると予習してのことだ。パパと遊べば気も紛れる。搾乳機を使ってしまうと自然に母乳が止まらないことも聞いていたので、胸が張り火照っても我慢。春馬はパパに任せて、お昼寝をして私の方もやり過ごした。寂しい気がするのは、言うまでもない。すでに授乳は、習慣になっていた。


ただ、授乳を辞めてわかったこともある。産後だから疲れやすいのではなかったのだ。母乳の原料は、血液。常に、フラフラなのにもちゃんと訳があった。


授乳は、いいスキンシップになっていた。私は、変わりの新しい習慣を探った。膝に乗せてあげる時間を急に減らさないように。絵本を読んであげたり、本屋さんで見つけた童謡カラオケセットで歌を歌ってあげたりすると拍手をしてくれた。これだ。近所の図書館で、一緒に絵本を探すのも2人の楽しみになった。


こんな風に過ごしていると、ムクッと急におっぱいに手が伸びることがある。そうしたら、惜しみなく触らせてあげるのだ。「今だけ特別だよ。」

と言って。


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