第29話 義母の自爆
出産後、私に感謝の意を述べ、何か手伝えることがあれば…と言ってくれた義母。新生児室に春馬が、1ヶ月入院している中で一番困るのは交通手段。毎日でなくてもいいので、車を出してくれると助かると伝えたが、結局口だけだった。
そして、自分たちは優雅に温泉旅行。私には秘密にしてと言いながら、当初の出産予定日に、義両親と義理の弟で温泉旅行。夫には、密かに温泉饅頭を渡すあたりも気分が悪い。
普段、この家族はあまり旅行になど行かないらしいが、夫がボーイスカウトで宿泊しているうちに3人で旅行に行ってしまったりするのだと以前聞いていた。夫の分の食いぶちが減ったので、旅行に行ったのかと思うとさすがに胸糞悪い。
そんな折、夫は実家に戻った時に義母に聞いたのだ。「お祝いのお金は、どういう意味?」
言葉足らずだが、的を得ている。しかし、反射的に義母はキレた。
「まずは、お礼を言え!」
「でも…入院費は、あっちのお父さんが出しているし。俺の食費も。だから、誰が受け取ればいいのかも。」
押し黙る義母。
「あと、父さんが車運転中に、信号待ちでこれってだけ言って渡したんだよ。」
「そんなの、自分が思ってたのは違うわ…」とブツブツ。
そして、極めつけに「ちゃんとお金返してよね!」
と言われたそうだ。
一銭も貸してなど貰っていない。それは、私の父の台詞だろう。夫が、無口で悲しそうに眉をひそめていたので問いただしたところ吐き出したのだ。
これで、義母の気も済んだかと思ったがこれだけでは終わらなかった。夫が、大学に行き、家を空けている時間を見計らって自宅に電話をしてきたのだ。
「なかなか孫に、会わせてくれないのね。この間は(妊娠中で点滴に通っていた頃)、急に行っちゃったら困っていたみたいだからちゃんと連絡したんだから。息子は、何も言わないし…あの子もあの子で、熱出してて困るなら帰って来ればいいのよね。」
一方的に言いたいことを言って来る。
息子の昼夜逆転睡眠と、夜中の授乳でほっておいても涙が溢れた。そこに、義母の攻撃。私は、パニックになった。電話を切るわけでもなく、キーキー喚いて母に電話を渡す。状況を察した母は、「あとで、連絡しますから。退院したばかりで、夜中も春馬くんは泣いている。授乳中で、大変なんですよ。考えてください。」
とはっきり言って切った。
私の母は、普段は人と揉めたりしない。おとなしいし、聞き役に回ることも多い人だ。しかし、この時も以前義母ができちゃった婚をした私を責め立てた時も私を守ってくれた。「学生結婚で、妊娠と結婚の順番が逆転している中、親が味方にならなくてどうするんですか。周囲の風当たりが、こんなにも強いのに。」
そう義母を諭してくれた。まぁ、全く響いていなかったようだが。
そして、何よりの結果は、この事件を機に私と義母の間で中立を維持していた夫が、私側に付くこととなったことだ。事実上、義母の自爆である。冷静さを先に失った方が、ゲームに負ける。人間関係だって、同じだ。
私は、義母がいくら変わろうとも完全には忘れない。一番、私が弱っている時に攻撃してきたのだ。忘れてはならない。忘れてはならない。絶対に。
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