第26話 新生児室通いの1ヶ月
私自身は、帝王切開後1週間に退院した。春馬は、まだ保育器の中にいる。生後1週間の時点で、1度のミルク(搾乳した母乳)量は50ml程度。面会時間は、ちょうどミルクタイムなので飲み終わるとすぐに寝てしまう。ふわふわして安定しない体を起こして、おむつ替えをさせてもらう。小さいおちんちんが、なんだか可愛かった。そして、うんちの匂いも、ほぼミルクのままだった。
生後2週間で、保育器から出てきた。初めて抱っこしたのは、パパ。1時間半、ずっと首の座らない春馬を抱っこして肩が凝っちゃったって。でも、かわいいからやめられなくってと言っていた。へその緒も取れた。まだ、乾いてない取れたて。自分の時のカラカラなへその緒しか見たことがなかったので、何だか不思議な感じ。
ちなみに、私はその日残念ながらめまいがしたので面会に行けなかった。自宅に帰ってからは急に疲れが出たのか、めまいがしたり偏頭痛がしたりして、一日に何度も涙が出た。結局、春馬の退院まで面会は2,3日に一度のペースになっていた。その分、パパは母乳を届けたり、学校から帰宅してから面会に行ったりとはりきっていた。
生後3週間。授乳教室に行って、直接母乳をあげられることに。まず、おむつ替えをして、体重を計る、そして飲み終わったら再度体重測定をし何mlくらい母乳を飲めたか確認するのだ。首の座っていない赤ちゃんは、安定感がなく母乳を飲ませるのが難しい。クッションで高さを調整して、胸と赤ちゃんの頭が直角になるようにあげると上手くいくことがわかった。初日は、20ml。ミルク瓶で飲ませている時より、赤ちゃん自身体力を使うのか、おっぱいをくわえたまま眠ってしまった。寝顔が愛おしい。
沐浴(お風呂)の練習もした。パパが抱っこして、私がささっと春馬の体を上から下から洗うことにした。説明のイラストには、一人で洗って、背中を洗う時にはうつぶせのような形で抱えて洗っているものがあったが、そんなこと怖くて出来ない。春馬は、沐浴中は固まっていたが、水から上げると珍しく大泣きしていた。
沐浴の練習が始まると、赤ちゃんとの生活が現実味を増した。不安がる私を見て、新生児科の先生が「おばあちゃんにも、練習に来てもらおうか?あなたを産んでから、もう20年以上経ってるし面会がてら練習に参加してもらおう。」
と提案してくれた。
おばあちゃんが(私の母)、沐浴の指導に来てくれた。さすがにやったことがあるから、特に指導を受ける必要もなさそうだった。ただ、わかったことがある。こんなに、小さくても春馬はパパとママがわかるのだ。この日は、終始キョロキョロしていた。ただ、新生児も人見知りで泣くと聞くが、この子は新生児室に居て看護師さんたちもローテーションするので、おばあちゃんに抱っこされたからと言って泣くことはなかった。
母乳をあげるようになってから、春馬との距離が縮まった気がした。たくさん話しをするようになった。「今日は、パパ教習所で車の練習してるから来られないんだ。」
「おやつにプリン食べたんだけど今日の母乳は美味しい?」
「パパに、写真見せたいから目開けててね。」
と言ったら、ぱっちりして止まっててくれた時はびっくりした。うちの子、話しちゃんとわかってると、もう親バカモード。
切迫早産で2370gで生まれた我が子。心配したけれど、無事1ヶ月で退院した。長いようで、あっという間だった。あと1ヶ月、お腹にいてくれたら入院しなくて済んだのにという気持ちも強かったが、手取り足取りおむつ替え、母乳指導、沐浴指導を看護師さん受けたことは、若い私たち夫婦のためだったのかもしれないとさえ思う。「これからは、ずっと一緒だよ。」
私は、つぶやいた。
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