第82話 刻に縛られた者/見捨てられた者㉕

 ボロボロの体でルージュはアパートに戻る。


 疲労感が凄まじかった。

 初めて魔眼を進化させた影響もある。

 しかしキャンサーとの戦いは一撃一撃が深く重く、何よりも神経をすり減らすものだった。


 手摺に寄りかかりながら、アパートの階段を昇る。


 ちょうど朝の日差しが差し込もうとする時間だった。

 人工的な朝焼けがルージュを照らしてくる。


 疲れた体でアパートのドアを開けた。

 室内に入る。

 何事もなかったかのようにベッドに、ルナの横に戻るつもりだった。


「お帰り……」

「!?」


 俯いたルナが、ドアのすぐ横の壁に背を預けて立っていた。


「……やっぱりお前さんは行っちまうんだな」

「ルナ、私は……」


 ルージュはそれ以上、言葉が続かなかった。

 何て言えばいいのか、わからなかった。


「あのさ」


 ルナが暗い顔を無理矢理に明るくさせる。


「相棒が休んだら、今日はデートしようよ?」

「へ?」


 予想外の提案にルージュは呆気に取られるのだった。

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Psycho Blaster 魔眼のルージュ リンゴあきと @akihito

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