第73話 刻に縛られた者/見捨てられた者⑯

「ふう……」


 ルージュはやっとのことで咳が収まった。

 少しだけ体がだるかった。


「相棒!」


 ルナがルージュに抱きついてくる。


「良かった……本当に良かった……」


 消え入りそうな声で何度もそう呟いてくる。

 ルージュも申し訳ない気持ちでルナの背中を抱く。


「ルナ、ごめんなさい。心配かけちゃったみたいね」

「本当だよ、馬鹿ぁ……」


 ルナは大粒の涙を流し、しゃくりあげるように言うのだった。


           *


 しばらくすると、二人とも落ち着いてきた。


 ルージュは体が汚れていたのでシャワーを浴びた。今は青い麻のパジャマ姿である。この格好にも、段々と慣れてきている。

 そして今はルナの方がシャワーを使っていた。


 ルナの汚れからして鉱山に行ってきたのだと推測できる。

 それにサイファーの証言を合わせれば、そこでゴーストを狩って、シードを手に入れたのだろう。


 ルージュはハンガーにかけてあったノワール用の衣類に手を伸ばす。

 そしてホルスターから呪印銃を抜いた。


 ――回復はしているわね。


 マグナムを放った呪印銃は時間が過ぎたことで再び三発撃てるように治癒されていた。意識を失っていた間も身に着けていたおかげである。


「キャンサー……」


 憎々しげにその言葉を口にする。

 あの男に完膚なきまでに叩き伏せられた。

 悔しさで手が震える。


「私はこんなところで立ち止まっている場合じゃ――」

「相棒?」


 ルナに呼びかけられ、反射的に振り返ってしまう。

 シャワーを浴びたばかりのルナは黄色の下着だけの格好だった。


 最近ではお互いに紐で側面が固定されたヒモパンを履いている。

 ルナはルージュの持っている物を見ると悲しそうな顔をして俯いた。


「何でそんなもの持ってるわけ?」

「その、ちょっと確認したいことがあったから」

「明日とかでいいじゃん。そんなの……」


 咎められているような気分だった。

 ルージュはサッと呪印銃をホルスターにしまう。

 ルナはとぼとぼと歩くとルージュの前のベッドに座った。


「ねえ相棒、どうしても戦わないと駄目なの?」

「ルナ……」


 ルージュはパジャマを脱いだ。

 ルナとほぼ同じ格好になる。下着の色が赤いのが違う程度だ。


「私は……戦うためにノワールになったの。だから、その……ごめんなさい」


 ルナの意には沿えない。

 それがルージュの答えだった。


「でも私は――」


 ルージュはベッドの上に膝で立つ。


「貴方のことは本当に大切に思っているわ。今はもう任務とかそう言うのは抜きで」

「相棒……」

「助けてくれてありがとう、ルナ」


 ルージュはルナの手を握ってそう言った。

 二人は言葉もなく自然にソフトなキスをする。


 ルージュはそのままベッドの上にルナを押し倒した。

 もう一度、唇を合わせる。


 ルージュはルナのブラジャーのホックを外し、パンツの紐を解いた。

 ルージュは自分の下着も同じようにすぐに脱ぎ捨てる。


「ルージュ、キスして?」


 ルナがせがんでくる。

 ルージュは言われるがままに口付けをした。

 激しく相手を求めるように舌を絡め合わせる。


「ん……」


 唾液が混ざり合い、まるでお互いの性器を擦り付けあっている感覚だった。

 それだけで気持ちがよかった。

 口を離す。


「はぁ、はぁ――」


 唾液が糸を引いてルージュとルナを赤い糸のように繋げる。

 ルージュの中の淫靡な本能に火が灯った。


「ルナ、好きよ。愛してる」

「私も愛――」


 ルナの言葉を待たずに、ルージュはその唇を奪った。

 そして手をルナの下腹部を伝って、陰部に持って行く。

 じっとりと濡れたその穴を優しく撫でた。


「~~ッ!」


 ルナが声にならない声で、ビクビクっと反応する。


 ルナは特定のどの場所が、あるいはどの行為に弱いと言うよりは、愛されていると言う雰囲気が重要なのだと、ここ最近でようやくわかった。


 ルージュがたった一言「好き」と言うだけで感度は倍以上になっている気がする。

 だからルージュは愛を込めてキスをした。愛撫中も絶え間なく、舌を絡め合わせ続けた。


 しかしそんなルナ相手だから、今日の行為にルージュは大きな罪悪感を抱いてしまう。

 唇をルージュが離すと、ルナは真っ赤な顔で喘いでいる。


「ルージュ、私もう……」

「いいわよ」


 ルージュがルナの口元に空いている指を置く。

 ルナは誘い込まれるように、それを口に入れた。指先からルナの体温を感じる。


「んん!?」


 ビクンとルナの腰が震えた。

 愛液がルージュの愛撫している手にかかる。

 絶頂に達しているのだ。


「んあ!」


 ルナはよがり声をあげて上体を左右に捩らせる。

 さらにルージュは指の動きを激しくする。


「あ、あ、あぅ!」


 体が幾度となく跳ねて、ようやくルナはぐったりとした。

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