第45話 殻の外⑤

 ルージュはシャワーを浴びる。

 淡いピンク色の湯船の方にはルナが浸かっていた。


 入浴剤の果実の香りが匂ってくる。

 ルナは銀色の髪を湯船に浮かないように頭をお団子ヘアーにしていた。ルージュも同様である。


「相棒、到着ってまだ時間かかるんだろ?」

「そうね、あと丸一日はあるわよ」


 ルージュは一通り体をお湯で流すと、ルナのいる湯船に入る。

 二人で向かい合うと、ルナは笑顔で口を開いた。


「じゃあさずっとエッチし放題だね♡」


 ルナがルージュに体を寄せてくる。

 その腕をルージュの後頭部に回してきた。


「そ、そうだけど……」

「嫌?」

「い、嫌じゃないわ」

「次は私の番」


 ルナがルージュの唇を奪う。

 その手がルージュの陰部に触れた。


「ん!」


 お預けされていたルージュが敏感に反応してしまう。

 さっきは攻めに集中しすぎて、自分の分はあまり考えていなかった。あくまで怪我をしているルナを満足させようと必死だったのかもしれない。


 故に過敏になっている。


 ルナがルージュの首筋を甘噛みしてくる。その間は指を動かし、性器を刺激してきた。


「あ、駄目!」

「やっぱり私は相棒のそう言う顔を見るのが一番好きだな。攻められるのも嫌いじゃないんだけどね」


 そう言ってルナがルージュを左腕で抱き寄せてくる。

 湯船のお湯が波を起こす。


 なされるがままに、ルージュはルナに引き寄せられた。互いの肩が触れ合う。

 そこから陰部をまさぐるルナの指が激しくなっていった。


「~~っ!」


 性感帯が擦られ淫らな快感が増してくる。

 じらされたせいもあって、早くもルージュは我慢の効かない状態になっていた。

 快楽にその身を委ねる。

「ル、ルナ……」

「ルージュ、好き」


 ルナが指の動きをそのままに耳を柔らかく噛んでくる。

 もはやルージュはただ快楽の波に泳がされてしまう。口からは唾液を垂れ流し、足はビクビクと震えている。


 腰が一人でに動いていく。

 絶頂までコントロールができないレベルまできていた。


「いぃ!」


 頭が熱くなり、そこに快楽物質が放たれる。

 オーガニズムが頂点に達した。

 淫靡の絶頂が陰部を刺激する都度、やってくる。


「あぁ……」


 ルージュは体の力が抜けて、ルージュにもたれ掛かる。

 ルナがルージュの顔を見てくる。

 そして不意にキスをしてきた。


「ん♡」


 くちゅくちゅと舌と唾液が混ざり合う。

 一旦離すが、しばらく見つめ合ってまたディープキスをする。

 貪るような淫靡な雰囲気は途切れることはなかった。


 結局、その後の列車での記憶はほとんど愛し合うことしかしなかった。

 ほぼ裸のまま過ごしたと言ってもいいだろう。


 ベッドで、浴室で、トイレで、通路で二人は愛を確かめるようにところ構わずキスをして、淫らをした。


 攻めて攻められ、愛液にまみれた。

 到着する一時間前には、ルナの傷もすっかり直っていた。


             *


「……さすがにやりすぎたわね」


 列車の中でルージュはノワールの正装に着替えながら呟く。黒いライダースーツに、黒いレザージャケット、そしてやはり黒いミリタリーブーツ。

 何だかんだで、これはこれで落ち着くものである。


「まあ、いいじゃん。超力も回復したっしょ?」


 ルナが上機嫌にそう応えてきた。


「そうだけど……」


 この二日間のせいで、すっかりルナに体を許してしまった。下手をすれば、しばらくはルナなしでは満足できない状態だろう。


 まだ体が火照る。

 こんなことは前にも何度かあった。


 ――カノン……。


 かつての相方を思い出す。相方と言うよりは師匠と呼ぶべきか。


 ルージュにカウンターショットを授けてくれた張本人でもあり、ルージュのMっ気を開発してきた人物でもある。

 もし彼女と出会っていなければ、ルージュはとっくの昔に死んでいてもおかしくはない。


 刻魔眼はあまりにも弱い。

 攻撃能力はなく、防御能力も高いとは言えない。カウンターショットがあって初めて下の下レベルの魔眼になれるのだ。


 ただしその分、ルージュは基礎的な体術や射撃術は並のノワールに比べて遙かに高い。魔眼頼みの戦闘が困難な以上、戦う数だけ勝手に洗練されていくのだ。


 だがそれだけではない。ルージュを最初にそこまで鍛えさせるベースを創ってくれたのは、やはりカノンだった。


「相棒?」

「……何?」

「どうしたの暗い顔して」

「いえ、何でもないわ」


 少し過去に浸ってしまった。


 ルージュはショルダーホルスターを装着する。そこに呪印銃を納めた。愛銃もすっかりマグナムの傷から癒えている。

 そして上から黒いレザージャケットを羽織った。


 車窓が真っ暗な闇になる。


「どうしたんだろ?」

「シェルターのトンネルに入ったのよ」

「じゃあもうドーム都市に入ったってことか」

「そう言うこと」


 ガタンと最も外側のシュルターの閉じる音がする。

 オレンジ色の交通灯とトンネルの闇が交錯する。


 そうやって五重のシュルターを抜けていった。

 やがて白い灯りが窓に映る。

 灯りの下には駅のホームがあった。


 同時に列車も減速していく。歩くような早さまで来たかと思うと、ついに止まった。

 到着したのは蒸気都市ドゥーエ。



 波乱と選択の待つ第二の都市にルージュは降り立つ。

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