第36話 救世の胎動⑩
「嘘だろ!?」
トルエノも顔から血の気が引いていた。
この覇王と形容できる超力の主。
――超力を隠せるカタストルだったのか。
初めの出会いで気付くべきだった。
そもそもあれほどの超力を直前まで気付かない方がおかしいのだ。
けれどそれを悔いていても仕方がない。
ルージュは探知能力をフル稼働させて探そうとする。
しかしわからなかった。あまりにも力が大きすぎて探知がうまくできない。海の中で水を探せと言っているようなものだ。
ただその中で一つだけわかることがあるとすれば、かなり近くにいる。
目視できる位置にいてもおかしくはないと言うことだ。
ふと窓を見ると影があった。
「チッ!」
ルージュは手でルナを後ろに追いやる。
パリィン――と窓が派手に割れて一人の男が室内に入ってくる。
くちゃくちゃくちゃとガムを噛む汚い音が沈黙の部屋に響いた。
堅く身構えるルージュやトルエノと違い、男は余裕の雰囲気でプーッとガムを風船のように膨らませて口に入れる。
カプリコルヌ、その男だった。
その不気味な目はじっとルナの方を見つめる。
「貴方、凄く純粋で綺麗な超力をしてらっしゃる。普通じゃない。ノワールにもカタストルにもそんな超力を放つシードを持った者はいませんね」
そしてガムをベッドに吐き出す。
「探しましたよ、ワタナベ博士の置き土産」
カプリコルヌはルナを指さしてにやりと笑った。
「クラウィス、本当に完成しているとはね」
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