第28話 救世の胎動②

 本来組織は、カタストルが死滅するまでノワールを何人も送り続けるのが常だ。


 しかしレッドリストに載っている個体はあまりの強さに組織も実質放置している状態である。


 ただでさえ強いカタストルが時間の経過によりさらに強くなる。

 その強くなった個体には手を出せず、強さは増していく。

 そんな最悪の循環にいる難攻不落の業の者が、レッドリストには記載されているのだ。


「六魔将は散々暴れ回ったものの、未だに我々はその一体として倒せていない。そのカプリコルヌをお前達が対処しろ」

「お前達?」


 その言葉にルージュの眉間にしわが寄る。


「二人でチームを組んでもらう」


 ルージュとトルエノの視線がぶつかる。互いが互いを露骨に見下す瞳だった。

 当然、非常に険悪な雰囲気が生まれる。


 トルエノが嘲笑混じりに口を開く。


「こんな雑魚と組まされるのはゴメンだな。一人の方がましってもんだろ」

「あぁ? んだとコラ?」


 ルージュのこめかみに青筋が浮かぶ。

 トルエノがさらに話す。


「超力を感じ取ればわかる。ルージュつったっけ? お前は下の下だ。敵をおびき寄せる餌にもなんねぇ」

「私もこんなゴリラと組みたくないんだけど。思考停止で魔眼をぶっ放すだけが取り柄のゴリラと組んで勝てるとは思えない。こっちこそ一人の方がましよ」

「何だと!?」

「ごめんなさいね、ゴリラって言われて虐められたトラウマでも思い出させちゃったかしら?」

「コイツ……」


 トルエノも激高した感情を露わにする。頬をひくひくと痙攣させ、鷹のように鋭い目つきと化す。

 険悪なムードから一触即発へ、さらに悪くなっていった。

 ルージュもトルエノも、右手を胸まで上げて今すぐにでも呪印銃を抜く体制はできていた。


「やめろ、クソガキども」

 見かねたサイファーが鉄仮面のまま口を出す。


「でもよ、コイツが!」

「黙れトルエノ。私に言わせればどちらも屑だ。それなりのキャリアを持ちながら、この体たらく。それにどっちも屑だが、先に喧嘩をふっかけたのはお前だぞ。意味はわかるな?」

「チッ……」

「お前達は全く状況がわかっていないようだな。敵はすでに動き出している。ノワールが二人死んで、こちらはもう増援は望めない。失敗すればルナ君以外の者は全員死ぬぞ」


 サイファーの眼がギロリと光る。


「しかも地力で言えば間違いなく向こうの方が上。それで勝つには持てる手段を全て使うのは当然、その上でその手段を最高のタイミングで最大限有効活用しなければならない。それでようやく勝負の土俵に立ったくらいだ」


 暗にルージュとトルエノ、二人の力を合わせても到底及ばないと言うことだ。


「今、追いつめられているのはこちら側だ。いつもとは違う。我々は狩る側の立場ではない。狩られる側の立場なんだ。わかったな?」


 サイファーは二人のノワールを一瞥する。


「作戦は日が落ちてからだ。わかっている範囲でのカプリコルヌのデータを送る。各自、対策を建てろ」


 話は終わり、気が付けば険悪な空気も白けていた。

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