第18話 バオム教⑥

 自由になったルナはブラブラと周囲を散策する。


 ――立派なもんだねぇ。


 赤い絨毯がそこらに敷いてある。壁にはユグドラシルと思われる絵画が設置されていた。決して安くはない造りなのが伺える。

 さぞ儲かっているのだろう。


 二階の通路を歩いていると、ドアが開放された一際大きな部屋があった。


 何となく興味本位でそこに足を踏み入れる。


「ほえー、すごいなぁ」


 一階の礼拝堂と大差ない広さの部屋がそこにはあった。椅子がないのでより広く感じられる。


 そこには立派なステンドグラスが飾られていた。

 巨大な美術品と言うのはそれだけで圧倒される。特に美に対する審美眼を持たぬ素人ならなおのことだ。


 ステンドグラスには緑色の立派な樹とそれに向かって祈りを捧げる人間、空から降りてくる天使が描かれていた。

 赤青緑黄白、明るい原色を使ったそれは、天国を連想させる明るいものだった。

 さらに白い棺がステンドグラスの前に横並びに十数個並ぶ。


「何だあの棺?」


 ルナが気になって歩き出そうとした。


「ん?」


 小さい女の子がルナの前にとことこ走ってきた。

 髪を二つに結び、白いダボっとした宗教色のある服を着ていた。

 そして興味深そうにルナを見上げてくる。


「あなた、だれ?」

「私はルナってんだ。そっちは?」

「あたしはエリーって言うの。七歳なの」

「七歳か、そーかそーか。自己紹介できて偉いなぁ」


 ルナがわしゃわしゃとエリーの頭を撫でる。


「これあげる」


 エリーはおもむろにポケットを漁って飴を取り出し、差し出して来た。


「いいのか、お前さんのだろ?」

「いいよ、分けてあげる」

「ありがとう。じゃあ受け取っておくぜ」


 ルナは飴の紙を外してポロッと口の中に入れる。レモンの味が舌に広がっていった。


「うまいぞ、エリー」

「エヘヘ」

「そういえばお前さんは一人なのかい?」

「ママと一緒だよ」

「ここにいて楽しい?」

「全然。でもママがいるから」


 少女の正直な感想に、ルナは大笑いしそうになる。


「アッハッハ、まあそんなもんだよな実際」

「あなたも?」

「……そうだな。まあ似たようなもんさ。相方に引っ付いてたらいつの間にかここにいた」


 そんなことを話していると急に少女の顔がパッと輝いた。


「ママ!」


 少女がルナの背後に手をブンブン振るう。振り返ると若い女性がこちらに歩いてきていた。

 女性は若く、長い髪を首元で結んでいた。そして出迎えた男と同じく黒い祭服を身に纏っている。

 女性はルナを見て不思議そうな顔をする。


「あら貴方はノワールと一緒にいた方では?」

「そうだよ」

「ママ、ルナって言うの」

「あらそう。貴方はノワールじゃないのですか?」

「違う違う、ただの付き添いだよ」

「そうなんですか。子供がお世話になりました。私、エリーの母のエレナって言います」

「いやいやそんなことはないって」


 ルナは正直な感想を述べた。


 エレンの方は嬉しそうに手を合わせる。人の良さそうな雰囲気である。子供が懐くわけだ。

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