第17話 バオム教⑤

 十八時になる。


 ルージュ達は北西にあるバオム教の教会の前に立っていた。ゴミ山や廃墟に近いこともあり人気はほとんどない。


 教会は三角柱の尖がった屋根が三つほどあり、その中央の屋根に緑樹をモチーフとしたマークがなされていた。

 四階建てくらいはあるだろう。


 旧欧州風の教会と言った風貌がある。廃墟のビルが周囲にあるせいで目立ちにくいが、間近で見ると意外にも大きい建物だとわかった。

 建物の白く綺麗な壁を見ると、それだけで金回りの良さが伝わってくるようである。


 木製の扉の前に立つと独りでにそれが開いた。

 中から黒い祭服を着た男が出迎えてくる。


「お待ちしておりました。こちらへ」


 男はルージュ達を教会の中へ案内してくる。


 入口に入ったすぐの部屋は礼拝堂のような場所で、長椅子がずらりと並んでいた。その先には祭壇が、よこにはピアノが備わっていた。天井にはガラスの装飾がなされた電灯がぶら下がっている。

 元になる宗教はないが、形としてユダヤキリスト教辺りを参考にしているのは間違いないだろう。


 神秘を愛する彼らには形も重要なのだ。


 その奥にある階段まで行き、それを昇る。

 二階まで上がると、赤い絨毯がしかれ、無数のドアが並ぶ光景が見える。

 そこで男が止まって口を開いた。


「実はノワールの方に折り入ってお願いがあるのです」

「何よ?」

「現在、我々の間で教会内に出没した天使様――いえカタストルをどうするか話し合っているのです。あくまで教義に則るべきだという派閥と、命あってのものだと言う派閥。是非ノワールの方の意見も聞き入れたいのです」

「ふざけないで。そっちの話はそっちで済ませなさいよ」

「どうかお願いいたします。穏便に済ませたいのです。それにここで前例を作れば、きっと貴方達にとっても悪い話ではなくなるはずです」


 確かにここで前例を作っておけば、今後の活動に面倒は少なくなる。

 やはりバオム教徒とて死にたくない者がいて当然なのだ。


「誰がカタストルかはわかっているの?」

「それが被害者はわかっているのですが、誰がシードに乗っ取られてしまったのかまでは」


 これでは協力がないと面倒になる可能性もある。

 今のところ超力は感じない。見つかりにくい場所に潜んでいる可能性も十二分あるのだ。


「わかった。その話し合いの場に案内しなさい。ただし下らないと判断すればすぐにでも任務に取りかからせてもらうわ」


 それにカタストルであればノワールに仕事をさせるのは反対のはず。うまくいけば話し合いの場の中にいる可能性もある。


 ルージュはルナの方を向く。


「悪いけど、その辺で時間を潰しておいてくれるかしら」

「はいよ」


 ルナを残してルージュは歩き出す。


 男に案内されて三階にやってきた。一番奥にある会議室に案内される。


 室内には数十人の人間達が左右に別れて討論をしていた。

 ルージュを見るとそれらの顔が曇る。

 明らかに歓迎されていないムードであった。


「こちらでお待ち下さい」


 案内役の男に椅子を勧められる。


「結構よ」


 ルージュはそれを拒否して、腕を組んで壁に背を預ける。


 ――何か……変ね。


 違和感を覚えつつも、ルージュはその場で待機するしかないのだった。

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