EP3
第13話 バオム教①
EP3 バオム教
カタカタとキッチンから包丁とまな板のぶつかる音がしてくる。
ルージュはその音で眠りから覚醒した。黒いライダースーツのままゴソゴソとベッドで上半身を起こしていく。
「相棒、朝ご飯できたぞ~」
「はいはい」
半開きの目でブーツを履いてベッドからのっそり立ち上がった。枕の近くに置いていたゴムで髪を後ろで束ねる。
白いショートパンツに蒼いブラウスを着たルナが、鼻歌を歌いながら皿を持ってくる。それを二つ、ベッドに置いた。
「なあいい加減さ、机の一つでも買わない? 不便だろ」
「そうねぇ、でもあと五日でここを出るし……我慢しなさい」
「えぇ~」
「次の都市ではちゃんと買うから。いいでしょそれで」
「ケチンボ」
「無駄がないって言いなさい」
銀髪のサイドテールを振り回し、ブーブー文句を垂れるルナ。
ルージュはそれを軽く受け流す。面倒は嫌いなのだ。
その時のルージュの機嫌は良くもなく悪くもなかった。起きたてで感情の起伏もないのだ。
ブルル――と通信デバイスが鳴る。
「……はぁ」
通信をしてくる相手は一人しかいなかった。
朝っぱらからアレの声を聞かなくては思うと、ルージュの機嫌が一段階悪くなる。
しかし無視するわけにもいかず、通信には応答した。
「ルージュ」
「何の用かしらサイファー。朝からアンタの声を聞かされるこっちの身にもなってくれる?」
「ルージュ、何だお前そんなに私と長い時間お喋りしたいのか? いいだろう長電話に付き合って――」
「さっさと用件を言いなさいよ」
「任務だ。詳細は午後に伝える。バオム教関連なのでちょっと面倒になるかもしれん」
「はぁ!? バオム教ってアンタ――」
「では詳しい場所は電子メールで送ろう」
そう言って早々と通信は切れてしまった。
「バオム教ですって……」
ルージュの顔がひきつる。その機嫌が二段階悪くなるのだった。
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