第72話 竜人族のボス

海たちが、竜人族の寺を突き進むこと、数分が立った。


「いやっはああああああああああああ!!」


海は、魔法サイクロンと共に奇声を叫ぶ。そんな海に対してレオパルドは、何も言うことはなくなっていた。場所を荒らしながら、進んでいく海は敵に悟られることなく進んでいたからだ。なぜなら、道行く竜人族をすべて溶殺していたのである。見つかっても報告されなければ意味がない。


「...」


レオパルドは、相変わらず冷たい目をしていたが、奥に進むと今ままで障子だった扉が急に銀色に輝く流の刻印が埋め込まれている鉄の扉に代わったのだ。海は、この奥に敵の大玉がいることを気配から感じ取り、慎重に扉を開いた。


「どりゃあああああ!!」


海の慎重とは、つまり扉をけ破ることである。大きな音を立てて吹き飛んだ鉄の扉。扉の先には、黒い部屋があり、その奥にそびえたつのは、鋭利にとがった黄金の鎧で身を包んだ竜人族だった。


「だっさ!!」


海の第一声がそれであった。金ぴかにとげとげ、海はあまり気に入らなかったのであろう。


「ダサいとは何だ。ダサいとは!!これは竜人族の秘宝「オールプロテクトアーマー」だぞ!!」

「そうか...ではその鎧、いただこう!!」


もはやどちらが悪人か分からないこの状況で海は、走り出す。


「待て、鈴木!!」


そんな、猪突猛進な海に対して、レオパルドは叫ぶ。


「なんだ?今僕は、忙しい!後にしてくれ!」

「いや、お前、私の可愛い領民が捕まっていることを忘れたのか?」

「そうだ。その通りだ、そこの間抜けな人間族!!」


金ぴかの竜人族は、レオパルドに便乗するように叫び指を鳴らす。指を鳴らすと、どういった仕組みかは分からないが、金ぴか竜人族の隣から、ヴァンパイア族の人質が現れた。


「貴様!グラン・ドラコス!!私の領民を返せ!!」

「それはできぬ相談だな・・・」

「なに!!」


海は、いつも通り先手必勝アザードサイクロンでグランを溶解させるつもりだったが、人質にも当たってしまうので躊躇する。


「そこの、キチ〇イじみた人間族も状況を理解したようだな」

「してない!!」

「そこは素直にしておけ!」


海は、反抗期ではないが思わず叫んでしまった。レオパルドは、こんなやつ連れてこなければよかったと心底後悔する。


「で?要求はなんだ?グラン?}


レオパルドが質問する。


「要求。そうだな。まずは服を脱げ」

「はぁ?」


レオパルドは、グランから出た唐突過ぎる返答に疑問符を浮かべる。


「何を言っている。グラン・ドラコス。貴様、頭でも打ったか?」

「いや、打ってない。だが、私はいつも父の隣から、キサマの横乳を眺めていたのだよ...で、私は決意した。いつかその体を手に入れてやると...」

「そうか、それだけで領民を解放するのだな。お安い御用だ」


レオパルドは、黒色のドレスに手を伸ばす。


「ちょっと、待った!!」


ここで黙っている鈴木海ではない。


「なんだ人間族?文句でもあるのか?」

「ある!!大いにある!!」

「そうか、そうか...だがキサマにこの状況如何にかできるかな?」

「できる!!バルブレイク!!」


海は、レーバテインをすぅと取り出し魔法を放つと、グランの周りの酸素が無くなる。


「フン!!それがどうした?」


どうやら海の魔法は、グランには聞いていないようでピンピンしている。


「この鎧、「オールプロテクトアーマー」はどんな攻撃も無効化する」

「そうか!そうか!「ワープ」」


海がそう言うと、一瞬にして海の姿が消える。そして、海はいつの間にかグランの真後ろに立っていたのだ。


「収納!!」


海は、グランに手を伸ばし「オールプロテクトアーマー」を収納する。そして...


「ぐぎゃあああああああ!!」


海は、丸裸になったグランを蹴り飛ばした。グランは螺旋を描きながら、石畳に叩きつけられる。


「がはっ!!」

「ざぁまあああああああああああああああああ!!」


海が、およそ主人公ではない雄たけびを叫ぶ。


「おいレオパルド、今のうちに領民を保護しておけ」

「わ、分かった」


レオパルドは、海の指示に素直に従い領民のそばに行き、無事領民を助け出すことができた。


「貴様~!!」


そうこうしているうちに、グランが土煙の中から現れた。


「おう、どうしたリザードマン?その程度か?」

「だれが、リザードマンだ!あんな下等生物と一緒にするな!!」


グランが、丸裸で激高しているが、どう見てもリザードマンにしか見えない。


「もうプラン変更だ。父を殺して手に入れた財宝はまだある」


そう言うと、グランは口の中に手を突っ込み何かを取り出し始めた。


「おえ」


海がその光景を見て呆れていると、グランはとうとう物を出し終えたようだ。


「はぁ、はぁ、はぁ...どうだ。これが魔剣グ「アザードサイクロン」!!」


海の放つ酸の竜巻は、グランに吸い込まれるようにして直撃した。


「ぐぎゃあああああああああああああああああああ!!」


グランはドロドロになって溶けていく。


「やったぜ!」


海は、溶けていったグランを踏みつけながら、残った魔剣を拾い上げ。鑑定の書を開き鑑定する。


魔剣グラム…剣は、折れるこなく無限の魔力をもたらす。だが持ったものは呪われ、生涯装備を解除できなくなる。オプションとして色欲が高まる。


「大変だ!!これでは、変態になってしまうではないか!!」


海は、慌てて魔剣グラムを収納しようと試みたが、収納できず手に残ったまま。そんな中、領民をすべて解放したレオパルドが、海に歩み寄ってくる。


「おい鈴木安心しろ!お前はすでに変態だ。案ずることはない」

「ダニィ!!」


海は、悲しき事実に動揺するのであった...



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