第2章 アクト=ファリアナの心友(8)
そんな思いでアヴァインを送り出したものの。
「な……なんなのさ、あれ」
何とも、ギクシャクして頼りないから思わず呆れてしまう。
なによ、あんなにもギクシャクとしちゃってさ……あんなので本当に、大丈夫な訳??
ケイリングは結局、遅れてアヴァインのあとを、気づかれない様についてゆくことに決めた。
リリアのところまで、あとほんの5メートルといったところで。なぜかアヴァインは急に立ち止まり、その場でため息をついていた。
『なんでだろう?』と思い、体を斜めに傾け、その表情を後ろから伺ってみると。なんとも浮かない様子で、悩み顔を見せている。
こンのバカ! ここまで来て、なにを迷ってんのッ!! リリアがさっきからアンタが来るのを、直ぐそこで、ずーっと待ってるのよっ!!
見て分からないの?!
疎いのにも程があるわねっ。早く、さっさと行っちゃいなさいよっ!
そう思うが、アヴァインはまだ一向に行こうとも動こうともしない。
アヴァインとしては、単に心を落ち着かせていたのだが。その様子を見ていたケイリング的には、苛立ち感が増すばかりであった。
ああ、もうー! こうなったらこの私が、背中を押して、勢い付かせ、もう強引にでも向かわせてやるしかないわねぇーっ!
ケイリングはそんな頼りない様子のアヴァインを見て、そう決めた。そして直ぐに、行動に出る──!
しかしそれは……不運・不幸としか言い様がない出来事の始まりであった。これはもう、神様のイタズラによる連鎖なのだと、ケイリングは後に思うほどだったのである。
ケイリングは良かれと思い、アヴァインの背中を勢いよく『トン☆』と押すのと。アヴァイン自身が心を決め、『よしっ!』とばかりに歩き始めたタイミングが、ドンピシャリと合う。
そればかりなら、まだ良かったんだけど。アヴァインの直ぐ後ろに居る、ケイリングに気づいたリリア本人が、手を振る為に腕を軽く上げ、勢いよく数歩ほど歩きこちらへと近づいて来たことが、同時に、信じられないことだけど、信じたくもないんだけど、恐ろしいほどに重なったのだ。
アヴァインはケイリングから、思わぬタイミングで後ろから押され、前のめりに倒れ掛かりながらもなんとか〝あるもの〟を両手に掴み押さえることで、倒れるのだけは踏み止まった。
しかし、その〝あるもの〟とは……リリアの柔らかな両胸の上ッ!?
リリアとしては、そんな思いもしない、予想さえもしない、いきなりな事態に。間もなく……腰を抜かしたかの様に、その場で膝を落とし、後ろに倒れそうになる。
アヴァインはそんなリリアの腰へ、慌てて腕を回し、倒れそうになる体を支えてくれた…………のまでは、ナイスフォローだから、全くもっていいのだけど。何故かその右手だけは、依然として、リリアの胸の上に乗っかったままだった。
「だ、だいじょうぶですか?! リリア様!!」
──ぶわきゃあッツ☆!!
「ぜんぜん、大丈夫なんかじゃないわよおーっ! こンの、バカぁああぁああ──!!」
近くにあったナンカで、『軽く』そんなアヴァインを〝ぶんなぐり〟「おほほほほほほほほほほほほ!」と、取り敢えずこのうすらバカタレを、四階の人気のないテラス(つまり窓の外)へと連れ出し。ケイリングはその場で、思いの
そこで気持ち清々し、テラスから出てくると。同じくらいのタイミングで、リリアはしずしずとその身を起こしていて。まるで何事もなかったかの様に、静かにこの会場からそそくさと出て行ったのである……。
「あ……」
思わず声を掛けようとしたけれど、なんだか不思議とそれが出来なかった。
今は少し、ほんの少しだけ、一人にさせてあげよう……気持ちが落ち着いたあとで、慰めたらいい。そうしよう。
わたしはそう決めた。
リリア……ホントに、ごめんね。まさかこんなコトになるなんて、思ってもみなかったのよ……。
ケイリングは、リリアに対する罪悪感から深いため息をその場でついていた。
そして同時に、心のどこかでこの結果にホッとしているもう一人の自分が居ることに気がつき。それを感じて、またそんな自分に対し、ため息をついてしまう。
いやな娘だな、わたし……。
なんでよりにもよって、こんな
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