【-第四章-「“DNA”<デストロイ・ネメシス・オブ・アポカリプス>編」】

Fragment99. 「それでもオレは、お前が欲しい」~シークレット・ロスト・ナイト ~





――思いだす。


鈍く、柔らかい感触を。


甘酸っぱい香りが、鼻孔いっぱいに広がる瞬間を。

愛しいその躰が、冷たくなっていく音を。


……その鮮やかな赤をすすり、その真っ赤な果実をえぐりとり、喰らいたいと思ったことを――。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




好きになってはならない人を好きになって、愛してはならない人を愛した。


どうか、オレを許さないでほしい。

憎んで嫌って、絞め殺してほしい。


遠い遠い、「あの日の約束」のように。


頼むから、忘れないで欲しい。

永遠に。


オレを、オレだけをみて。


血まみれの両手を握りしめ、喉が枯れるほど泣いた。


絶え間ない慟哭と、悲しみの果てに、愛しいあいつの声がする。


名前を、つけてほしい。

こんな罪深いオレに、お前のその花のような唇で。


呼んでほしい。

――××と。



そうすれば、オレはもう、ためらわない。

もう二度と、間違えない。


今度こそ、オレは、お前を護って、死んでゆくから。


オレは今、お前がほしい。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



オレはとうとう、〈秘密〉を打ち明けた。



もうすぐ終わる。――すべてが。


オレは、遠くて近い距離に、ただひたすら、その時を待った。



「――好きだったよ、“千夜”」



オレは、崩れ落ちる「千夜」を抱きしめながら、そうつぶやいた。




――雨が降っていた。


――――冷たい雨が。




運命は繰り返す。


動き出した運命の歯車は、止まらない。


オレは、オレ達は、約束された裏切りを繰り返す。

――何度も、何度でも。ただ、〈たったひとつ〉を手に入れるために。


そのためなら、オレは、もう、すべてを壊すことができるだろう。


――壊しつくせ。


絶望の運命よ、どうか、オレを壊してくれ。

この心臓を、止めてくれ。



オレは、もう、止まれない。

最期の瞬間まで、すべてを裏切り、壊しつくし、果てるだろう。



――それでもいい。


――――オレは欲しい。



〈失われた夜〉が。

あの愛しくて憎い、夜空のひとかけらが。


すべてが終わったとき、オレは天の裁きを受けるだろう。


ネメシス。

ネメシス・オブ・アポカリプス。


〈約束された天罰〉が、〈黙示録の青ざめた馬〉が、オレの額に口づけるだろう。



――それでいい。

オレはこの世で一番罪深い、大罪人だ。


どうか、このオレを愛さないでほしい。


なぜなら、愛しいお前を、オレは……いつか――。




<< ……ずたずたに引き裂き、身も心も、喰らい尽くす定めにあるのだから――。 >>


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