小説には情報密度の違いがある

 昨日、ムー――――リー――――!!と喚いておったわけですが、文体の違いと言っても『まーた高尚サマが何か好かんこと言って…』みたいに受け取られるだけなので、もっと解りやすい言い方を考えてみよお、となりまして。


 解りやすいというか、正確な言い方?


 文体自体はほぼ変わらんと思うのな。通常とラノベ調で変わったのは「情報量」だわ。一つのシーンにおける、伝達のための情報量ね。これが、みっちり量があるタイプが通常版で、必要最小限になってんのがラノベ版。


 言うて私の例のヤツは、スカスカって部類だけど。


 スピード感とかテンポってのにも関連して、いわゆる「サクサク進む」感覚を与えるのは情報量を絞った書き方なんだけども、私の場合は悪癖があって、削りすぎるんだよね……昔っから。(苦笑


 自分は解ってるから、省略したって解るはずだ、のムチャ振り論法で。しかも伝達しようとしてるモンが通常の連想とは外れた桶屋理論だったりするから、まったくチンプンカンプンになる、てのはよくあるパターンだったりしますわ。


 テンプレがなぜテンプレとして通用するか、てのに通じるわ。(笑


 あれはほれ、「想定範囲内の連想パターンの組み合わせを踏襲し、飛躍した連想を徹底排除する」ことを前提とすることで、いわゆる、予想しない展開にはしないことで逆にね、文章で書く時には、情報がスカスカでも読者が連想しやすいようにしてるんだよね。


 普通に「Aは大泣きした。」と書いたって、普通はね、場面なんか浮かばないわけよ、だけどテンプレはパターンの踏襲に徹底してるから、どんなシーンも全部が倉庫に入った既製品を脳内から取り出すだけ、みたいなシステマチックな読書体験になってんのよな。シーンごとの情景を楽しむんじゃないんだ、完全にストーリーとか人物の動きに特化してんのよな、ゲームの立ち絵が一切変わらなくても会話文だけで表情は補完して楽しむじゃん? アレな感覚で文章を読んでるフシがある、というか。


 普通の「一般文芸」ってのは従来通りの、場面ごとで情報を提供して細かく全部を指示する感じで、これは脳内でアニメーションを描かせるようなモンなのね。あるいは映画のように映像を構築させる、というか。


 読者はフツーにどっちでも出来るんだわ。どっちでも出来るけど、脳の負担が少ないのはやっぱ前者で、既製品を倉庫から取り出してくる方が、一から作り上げるより楽は楽だよね、て話なんだけど、書く側はまったく違う作業になるわけでさ、感覚的にも両者がまるで違ってくるから、両方を使いこなせるって人は器用ってことになるわけよな。


 感覚を切り替える、一部の役者さんのようにONOFFでカチッと感性を変える、てことで、私もまぁ自慢じゃないがそれを曲がりなり出来てたわけですよ。


 それが最近、通常の書き方が一般文芸で固まってきて、さらに情報量を増やす方向に向かってくにつれてね、切り替えが困難になってきた、ということなんですわ。


 文章を書く際の感覚がね、一般文芸の感覚で固定されてきてて、ラノベ的な感覚で的確に必要量だけ残して削る、ていう芸当が出来なくなってんの。読み返してみた時にね、不遜ながら「なんじゃこのスカスカは」て感覚が優勢になっちゃって。


 実際、ラノベの中でも私が書くような文章はスカスカの部類なんだけどさ、感覚的にこれをスカスカと感じるよーじゃ、とうていまともなラノベ文体も書けやせんのですわ。ここはまだ説明難しいけど。むーん。


 文を削るにも、参照する感性ってのはセンスのモンなのよな。てことなんだが。


 ミステリ書きにはコレ、ちょいマズいかも知れんのだよね…

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