第2話 予想外

 浩平は、早速彼女について調べ始めた。藤村家跡取りの彼にとっては、一人の女性を調べるなど造作もないことだったが、なにぶん相手には真下真琴という彼氏がいて、自分も通っている女がいる。

(さて、どうやって説得するか)

 浩平が悩んでいると、真下から電話があった。

「なんだ?どうした」

『いや、特に用ということもないんだが。今夜飲みに行かないかと思ってね』

「まぁ、構わないけど」

『じゃあ19時に、いつものバーで』

 そう言うなり真下は電話を切った。相変わらずマイペースな奴だと呆れつつも、浩平はある名案を思い付いた。


 約束の時間。真下はすでにいつもの場所に座っていた。浩平が来たのを確認すると、マスターにいつものと注文をする。

「で、なんの話だ?お前が用もなく飲みに行こうなんて、何かあるんだろ?」

「まぁな。浩平さ、この間の女のこと気になってただろ。だからまぁ、牽制する意味でもいろいろ教えとこうと思ってな」

 浩平が頼む前に、真下はすでに夕顔の彼女のことを調べていた。驚いた様子の浩平に真下が続けた。

「偶然、親父とお袋が話してたんだよ。あそこ、元々は、あそこら一帯の地主ですっげー金持ちだったらしいんだ。でも父親が亡くなって、今はあの家しか残ってないんだと」

 マスターが酒を持ってきたタイミングで、話が途切れた。いつも飲むマティーニだ。

「彼女、まだ大学生なんだけどさ、奨学金で行ってる苦学生ってとこまでは聞いた」

「で、名前は?」

 マティーニで口を潤すと、真下はニヤリと笑って答えた。

皆藤早智かいどうさちっていうんだ」

「そうか」

 しかしこの日、浩平が今日は自分が奢ると言った時、真下は有益な情報だったのだと確信した。それと同時に、早めに結婚した方がいいかもしれないとも思ったのだ。




 それから数日後。浩平は夕顔の彼女改め、皆藤早智の家の前にいた。彼女にもう一度会いたいと思ったのだ。

 垣根に這っている夕顔を眺めているふりをしていると「あら?この間の……?」と彼女の声がした。どうやら大学帰りのようだ。

「あぁ、こないだはどうも。この花をもう一度見たくて」

(本当はあなたですけど)

「そうですか。ありがとうございます」

 皆藤は笑ってそう言うと、家の中に入ろうとした。

「あの!俺とメールしてくれないかな?君ともっと話したくてさ」

 浩平はそう言うと、自分の名刺を取り出した。裏には個人的な連絡先を書き込む。ほとんどの女性は彼の名刺や容姿を見て、メールをしてくる。大企業の跡取りだ。人間としてのブランドがかなり高い。

「ごめんなさい。携帯、持っていないので」

 そう言うなり皆藤は、そそくさと家に入っていってしまった。

(全くもって予想外だ。さて、どう攻めよう)

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