恋の始まり

第1話 新たな出会い

 藤村浩平が彼女の姿を見たのは、ほんの偶然からだった。

 いつも通り、高校時代からの腐れ縁である真下真琴と街に繰り出した帰りのことだ。昨夜は、うまいこと女をひっかけたので、二人とも朝帰りだった。浩平は、すでに酒も抜けていて、真下と二人で仕事の話などをしながら、真下の家に停めておいた自分の車を取りに行っていた。

「この朝顔、閉じてる。珍しいな」

「ほんとだ。まだ時期じゃないからじゃないか?」

 二人で、ある家の垣根に這っている花を見て話していると、その奥からクスッと笑う声がした。

「それは、夕顔というんですよ」

 どうやら花に水を遣っていた女性に聞かれていたらしい。

「へぇ。これが夕顔かぁ」

「真琴、お前興味あんの?」

 浩平が冗談半分で聞くと、どうやら母親が最近育てているらしい。しかし、なかなか蕾が出ないと言っていたことを思い出したようだ。

「夕顔は、朝顔と違って栽培が少し難しいですから。奥さまがそう言われるのも当然ですわ」

「でも、あなたは見事に育てていますね」

「えぇ、奇跡的に育ってくれました」

 浩平は、その女性に好感をもった。花のように笑う表情と、優しげな声に惹かれた。

(母さんを思い出すなぁ)

「では、俺たちはこれで」

 真下がそう言うと、浩平は彼に引っ張られるようにして歩き出した。


「お前、あののこと、気になってんだろ」

 バレていたかと思いつつ、浩平は正直に答えた。どうせそのうち、協力してもらうこともあるかもしれないと思ったのだ。

「うん。いい女だったよなぁ」

「でもお前、今女いなかったっけ?」

「だよなぁ」

「それにあの子は、おれのだからなぁ」

「まじか!」

 どうやら、あの女性は真下真琴と良い仲らしい。


 しかし浩平は、夕顔の彼女のことを、自分は忘れられなくなるということもなんとなく分かっていた。


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