第56話 魅惑の御宿・竹ふえ露天風呂に魅入られた旦那編
全裸でにじり口から出ていってから約5分後、旦那は股間をフェイスタオルで隠しつつ大窓の前をそそくさと横切り、部屋へと帰ってきた。
「あ~いいお風呂だった!ご飯の前にもう一回入るから!」
お風呂で火照った顔のまま旦那は私に宣言する。
というか先程まで疲れてぐったりしていただろうが。それなのに部屋に豪華な露天風呂がついていると知った途端に目の色が変わり、ガッツリ堪能しなければ損だと言い出したのだ。でも流石に次の一回、またはプラス食後にもう一回くらいで満足するだろう、と私が思ったその時である。
「今夜は5、6回位にしておいて、明日の朝もう一回入るから♪」
「へ?」
1、2回の入浴ならまだしも5、6回とは・・・信じられない一言に、私は思わず二度聞きしてしまった。確かに素晴らしい泉質だしお風呂自体も豪華だが、幾ら何でも入り過ぎだろう。
「ちょっと大丈夫?流石にそれは入りすぎでしょう」
一応形だけは窘めるが、一度これと決めたら頑なに自分の意見を通す旦那である。ほぼ間違いなく5,6回は部屋付き露天風呂に入るだろう。仕方ないので取り敢えず明日熊本駅まで車で移動できる体力を残しておいてもらえば良しとする。
「あまり無理はしないでね。明日また新幹線で家に帰るんだから」
そう、明日は熊本城を見学した後、新幹線を乗り継ぎ6時間かけて神奈川まで帰らなければならないのだ。それなのに風呂に5,6回も入りたがる気が知れないが旦那は全く人の忠告を聞いていない。
尤も新幹線に6時間乗り続ける、というのは鉄ヲタの旦那にとってむしろご褒美かもしれない。だが40過ぎのオッサンが無理をしすぎても後々に響くだろう。特に『竹ふえ』のような豪華な宿に泊まって理性が吹っ飛んでいる時は特に要注意だ。間違いなく自宅に帰ってから倒れるだろう。
再び露天風呂に入るために服を脱ぎだした旦那を死んだ魚のような目で見つめつつ『後で脱衣場の確認だけして、室内で全裸になるのだけは止めさせよう』と私は誓う。だが私のささやかな野望はものの見事に潰され、テンションが上りまくった旦那は更にとんでもない行動に出ることとなる。
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