第69話 油田、天然ガス、地熱発電、巨大ダム、水圧破砕法、地下核実験など「人災地震」の歴史を辿る、やはり「人工地震」の最有力は「水圧破砕法」である

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 日本でも例がある。前に話した長野県の松代町では、群発地震が終わったあと、1800メートルの深い井戸を掘って、群発地震とはなんであったのかを研究しようとした。その井戸で各種の地球物理学的な計測をしたときに、水を注入してみたことがある。 


 このときも、水を入れたことによって小さな地震が起きたことが確認されている。しかもこのときは、米国の例よりもずっと弱い14気圧という水圧だったのに、地震が起きた。    


(中略)  


 1967年にインド西部でマグニチュード6.3の地震が起きた。177人、一説には200人が犠牲になったほか、2300余人が負傷した。この地震は近くにコイナダムという高さ103メートルのダムを造ったことによって引き起こされたものだというのが地震学者の定説になっている。  


 ダムで貯水が始まったのは1962年だったが、それ以後、それまでは地震がほとんどなかったところなのに、小さな地震が起き始めた。これらの地震はせいぜいマグニチュード四クラスだったが、ダムとそのすぐ近くの25キロメートル四方の限られた場所だけに起きた。ダムの周囲はもともと地震活動がごく低いところで、100キロメートルで地震が起きているのはここだけだったから、目立った。震源の深さは6キロから8キロメートルだったが、ダムの高さは103メートルだから、ダムの底よりはずっと深いところで地震が起きていたことになる。   


 そして貯水が始まってから5年目の1967年になって、まず9月にマグニチュード5を超える地震が2回起き、ついに12月にマグニチュード6.3の地震が起きて大きな被害を生んでしまったのであった。  


(中略)  


 しかし、これには異説もある。米国カリフォルニアで起きたコアリンガ地震(1983年、マグニチュード6.5)は大油田の下で起きたかなりの地震で、その余震域は油田の広がりとほとんど一致している。原油の汲み出しによって地殻にかかる力が減った分とちょうど同じだけ地震のエネルギーが解放されて地震が起きたという報告もあり、この地震も人造地震ではなかったかと考えている地震学者もいる。   


 英国とノルウェーが石油を採掘している北海油田は海底にあり、いまのところ目立った地震は起きていないが、もし大きな地震が起きて原油の流出でも起きたら、大きな環境問題になりかねない。このため、ノルウェー政府は、北海油田の近くで起きるごく小さな地震の監視を始めている 


(中略) 


 地震は自然にも起きるものだから、起きた地震がダムのせいであったかどうか、議論が分かれている地震もある。たとえば、1993年にインド南部でマグニチュード6.2の地震が起きて、1万人もの死者と3万人もの負傷者を生んだことがある。約10キロ離れたところに出来たダムからしみこんでいった水が起こした地震ではなかったかと考えている地震学者もいる。  


 また、死者29名を生んだ1984年の長野県西部地震(マグニチュード6.8)も3年前から貯水を始めていた近くの牧尾ダムが起こしたダム地震ではなかったかという学説もある。また北美濃地震(マグニチュード7.0。死者8名を生んだ)も1年前に貯水を始めた近くの御母衣(みほろ)ダムとの関連を疑っている学者もいる。しかし、議論の決着はついていない。  


(中略) 


 2004年に起きた新潟中越地震の震央から約20kmしか離れていないところに天然ガス田(南長岡ガス田)があり、地下4,500mのところに高圧の水を注入して岩を破砕していた。  


 坑井を「刺激」するために、深い井戸を通じて油ガス層に人為的な刺激を与え、坑井近傍の浸透性を改善することにより生産性を高めるために行われているものだ。 地下4,500m付近に分布する浸透性が低い緑色凝灰岩層に対して「水圧破砕法」を使って岩にひび割れを入れ、生産性を8倍も増加することに成功したと言われている。  


 新潟中越地震の震源の分布図(東京大学地震研究所)によれば、余震分布の上限は4,000m程度、本震(ここでいう本震は地震断層の「壊れはじめ」で、本震そのものは余震域全体に拡がっていたと地震学では考えられている)の深さは13kmだから、震源に極めて近いところで「作業」をしていたことになる。  


 南長岡ガス田は1984年に生産を開始していたが、21世紀になってから 「水圧破砕法」を使い始めていた。  


 それだけではない。ここでは、経済産業省の外郭団体である地球環境産業技術研究機構が主体となって、2003年から、新潟県長岡市の地下約1100mに二酸化炭素を圧入する実証実験をやっていた。大量の二酸化炭素を地中に圧入する「実験」が行われていたのである。  


(中略) 


 この実験期日からいえば、実験開始から1年後に新潟中越地震が発生したことになる。この圧入井戸は震源(壊れはじめの地点)から20kmしか離れておらず、地震学的には、ほとんど震源の拡がりの中にある。  


  さて、そうなると冒頭の小田実さんの怒りも「邪推」として退けていいか心配になってくる。阪神淡路大震災の少し前に工事をしていた明石海峡大橋では、主橋脚のひとつを海中で作っていた。海底に穴を開け、岩盤をさらに掘り進んで橋脚の基礎を作っていたはずだからである。 橋脚は兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)を起こした野島断層から決して遠いところではなかった。  


【追記の追記】:そして2007年に起きて、柏崎刈羽原発に甚大な被害を引きおこした中越沖地震も、この井戸から、(中越地震とは反対向きに)やはり20kmしか離れていないところに震源があった。  


追記2:(島村英紀『地震は妖怪 騙された学者たち』から)

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 日本の学会では不思議なことがある。世界的にはこういった「人造地震」の研究が重要とされていて、国際的な地震学会が開かれるときには、この人造地震(英語では誘発地震 induced seismicity という)が特別なセッションになっていることが多いが、日本では研究者がほとんどいないのである。  


 科学技術庁の研究所に属するある地震学者がこのテーマで学会発表しようとしたら、事前に内容を役所に見せるように言われたうえ、役人が学会まで発表を見に来たことがある。政府や電力会社のような大企業の意に添わない研究はしにくいのである。  


たとえば政府の公式見解はこちら

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追記3:四川大地震(2008年)の原因もダム?  


 四川大地震(2008年5月、10万人以上が犠牲になったといわれる)が、四川省に作られていた紫坪鋪(ジビンプ)ダムによるものではないか、と中国政府の一部の関係者や科学者が主張し、自然災害だとする人々と対立している(雑誌『Days Japan』 2009年3月号,、9頁)。このダムは震源からわずか5kmのところにあり、最大11億立米の水を蓄えることができるダムだ。  


追記4:かつて世界一の高さを誇ったダムは、(地震と)地滑りで大事故を起こし、廃棄されました  


 イタリアにあるヴァイオントダム(バイオントダム)はイタリアのヴェネト州ピアーヴェ(Piave)川の支川ヴァイオント(Vajont)川の深い渓谷に作られた、アーチ型のダム。1960年11月に完成した。当時、堤高262mと当時の世界最高だったダムである。  


 しかし、このダムでは貯水開始後、ダムに起因すると思われる地震が頻発するようになり、そのために地盤が弱くなっていたのだろう、水深が130mとなった時点で最初の地滑りが発生した。この地滑りで貯水池が二分されてしまった。このため、二つの貯水池を結ぶバイパス水路が作られて、ダムとしての機能を維持した。  


 しかし、その後の1963年、記録的な豪雨に見舞われ、9月には貯水量を下げるため放水が行われたが、10月9日夜、ダムの南岸の山が2km以上に渡って地滑りを起こして崩壊してしまった。  


 このため、 2.5億立米以上という大量の土砂がダム湖に流れ込み、ダム地点で最大100mを超す津波を引き起こし、5000万立米の水が溢れた。  


 この濁流はダムの北岸と下流の村々を押し流し、ダムの工事関係者と下流に住む人2125人が死亡し、594戸の家屋が全壊するという大惨事となった。しかしダム自体は、最上部が津波により損傷した以外はほとんどダメージは無く、現在も水が溜まっていないダムの本体だけが残っている。しかし、ダムとしては放棄されて、水は溜まっていない。  


 2008年にユネスコは国際惑星地球年の一環としてバイオントダムの事故を技術者と地質学者の失敗による「世界最悪の人災による悲劇」のワースト5の一つに認定した。  


 追記5:米国では水圧破砕法で地震が起きたために、2012年に井戸を閉鎖しました(AFPの記事)   


米オハイオの連続地震、天然ガス採掘が原因か 2012年01月06日 10:48 発信地:ワシントンD.C./米国  


【1月6日 AFP】米オハイオ(Ohio)州で最近起こっている小規模な連続地震の原因は、「水圧破砕法」と呼ばれる天然ガス採掘の方法に原因がある可能性が浮上し、同州では関連が疑われる注入井を一時閉鎖している。

 

(中略)  


追記7:(古い情報ですが)かつて日本で注水実験は2回行われて、2回とも地震の発生が確認されています。  


1)長野県松代(群発地震が起きたあと)の注水実験  


  報告では「岩の中に注水すると地震が生じやすくなるという、いくつかの事例を検証するた めにわが国ではじめての試錐が1969年から国民宿舎松代荘ではじまり、1933m掘って(実際の(深 さは1800m)、1970年 1月15日~18日、 1月31日~ 2月13日の 2回にわたり計 2883立方メートルの水を注入した。  


 その結果注入地点の 3km北で、 1月25日02時ころから急に地震がふえ、この 1日 で54回に達した。地震活動は注水中続き、注水後徐々におさまった。この地点で の地震活動は注水前は 1日 2回くらいだった。」とあります。  


2)(阪神淡路大震災を起こした)野島断層で、「注水実験」  


 1995年1月に阪神淡路大震災が起き、その後、1997年、2000年の二回にわたって行われました。  


(中略)  


 追記8:米国では将来のエネルギー資源の掘削として行われている「水圧破砕」で地震が起きています。(ロイターwebの記事。2012年4月19日)  


米内陸部での地震増加、「ほぼ確実に人為的」=USGS 2012年 04月 19日 10:52 JST  


[ワシントン 17日 ロイター] 米地質調査所(USGS)の研究者らは、米内陸部にある石油やガスの掘削で利用した廃水を処理する場所の近くで、地震の回数が「飛躍的に」増えたとする報告書をまとめた。  


報告書は、アーカンソー州、コロラド州、オクラホマ州、ニューメキシコ州、テキサス州の米内陸部で昨年、マグニチュード(M)3以上の地震が20世紀の平均の6倍に増えたと指摘。  


化学処理された水や砂を地下に注入して石油やガスを採掘する「水圧破砕」と地震の増加をはっきりとは関連付けていないが、水圧破砕で出る廃水などが断層をずらす原因になっている可能性を示唆している。    


(中略)    


追記9:米国では将来のエネルギー資源として脚光を浴びているシェールガスの採掘でも地震が起きています。


(朝日新聞デジタルの記事。2012年4月26日)    


シェールガス採掘、地震誘発? 米中部、M3以上6倍      


 米中部で起きるマグニチュード(M)3以上の地震が、10年前に比べ6倍以上に急増していることが米地質調査所(USGS)の調べでわかった。もともと地震があまり起きない地域で、研究チームは、日本でも輸入に向けた動きがあるシェールガスなどの採掘活動などに伴う「人為的な地震」が関係しているとみている。   


(中略)  


追記10:スペインで起きた地震も「人間が起こした」地震でした。(共同通信の記事。2012年10月22日。東京新聞から)  


地下水くみ上げがスペイン地震に 英科学誌、地盤沈下でゆがみ  


東京2012年10月22日 朝刊  


【ワシントン=共同】昨年五月にスペイン南東部の地方都市ロルカを中心に大きな被害が出たマグニチュード(M)5・1の地震は、長年の地下水くみ上げに伴う地盤沈下が引き起こした可能性が高いとする研究結果を、カナダやスペインのチームが二十二日付の英科学誌に発表した。  


 この地震は深さ二~四キロと非常に浅い場所で断層が動いて被害が拡大した。チームはコンピューター解析で、局地的な地盤沈下によって地殻に異常なゆがみが生じていたことを確かめた。  


 高圧の水を地中に送り込む新型天然ガス「シェールガス」の採掘や二酸化炭素(CO2)を地中に貯留する手法など、新たな技術にも警鐘を鳴らす内容。チームは「地震が発生しやすい場所で地中に人為的な変化を与えると予想外の影響が出る」と指摘している。


「人間が起こした地震  人間でも地震の引き金を引けるときがあるのです」より

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 引用が長過ぎますが、人災、人工地震の情報を整理していきます。


 欧米の油田、天然ガスの採掘などで人災地震が起こってる可能性も高いですが、人災地震のエースは何といっても「巨大ダム」です。


 四川大地震(2008年5月、10万人以上が犠牲になったといわれる)は、四川省に作られていた紫坪鋪(ジビンプ)ダム説もあるようです。


 他にもM5~6.8クラスの地震を起こしていると思われます。



 日本で疑わしいのは 2004年に起きた「新潟中越地震」、2007年に起きた柏崎刈原発に甚大な被害を引きおこした「中越沖地震」で、震央から20kmのところの天然ガス田(南長岡ガス田)での「水圧破砕法」の使用、経済産業省の外郭団体である地球環境産業技術研究機構が主体の2003年から行われていた、新潟県長岡市の地下約1100m二酸化炭素を圧入する実証実験の影響も考えられます。


 阪神淡路大震災を起こした野島断層近くの明石海峡大橋では海底に穴を開け、岩盤掘り進んで橋脚の基礎を作っていたようです。


 その後の野島断層注水実験、群発地震が起きた後の長野県松代の注水実験でも地震の発生が確認されてるので、岩盤を掘った後に海水が大量に地盤に入っていって巨大地震が発生した可能性は否定できません。



 最近は油田、天然ガス、巨大ダムの水圧から、シェールガス採掘に用いられている「水圧破砕法」にエースが交代していますが、米国での地震が頻発しています。


 いずれにしろ、これらは「人工地震」というより「人災地震」に近いのですが、日本ではこの分野の研究は政府や大企業に配慮してほとんど行われてないようです。



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 日本の学会では不思議なことがある。世界的にはこういった「人造地震」の研究が重要とされていて、国際的な地震学会が開かれるときには、この人造地震(英語では誘発地震 induced seismicity という)が特別なセッションになっていることが多いが、日本では研究者がほとんどいないのである。  


 科学技術庁の研究所に属するある地震学者がこのテーマで学会発表しようとしたら、事前に内容を役所に見せるように言われたうえ、役人が学会まで発表を見に来たことがある。政府や電力会社のような大企業の意に添わない研究はしにくいのである。   


追記2:〔島村英紀『地震は妖怪 騙された学者たち』から

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 ということで、ついつい地震学会のタブーに踏み込み、人工地震の最有力候補は「水圧破砕法」ではないか?という結論にたどり着きました。


 熊本地震の自衛隊基地内のボーリング井戸で小型水爆を爆発させるというネット陰謀論を訂正して、「水圧破砕法」でも可能かなということですね。

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 島村英紀 (しまむら ひでき)氏(ノーベル賞も近い?世界的な業績の地球物理学者。日本文藝家協会)のHPから大量引用してしまってるので、著書を買って読んでみます。

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 この方、良心的な地震学者であるために、国策に反対して2006年2月に逮捕、171日間拘留されたことがあるらしい。


私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。 (講談社文庫) 文庫 – 2007/10/16 島村 英紀 (著)



人はなぜ御用学者になるのか―地震と原発 単行本 – 2013/7 

島村 英紀 (著)



地震は妖怪 騙された学者たち (講談社プラスアルファ新書) 単行本 – 2000/8島村 英紀 (著)



「地震予知」はウソだらけ (講談社文庫) 文庫 – 2008/11/14

島村 英紀 (著)



火山入門―日本誕生から破局噴火まで (NHK出版新書 461) 新書 – 2015/5/8 

島村 英紀 (著)



日本人が知りたい巨大地震の疑問50 東北地方太平洋沖地震の原因から首都圏大地震の予測まで (サイエンス・アイ新書) 新書 – 2011/6/1

島村 英紀 (著)




 このあたりを押さえておけばいいかも。

 比較的評価も高い、面白そうな著作のセレクトです。

 

 電力会社の水力発電のための「巨大ダム」、欧米の石油メジャーの石油、天然ガス、シェールガスの採掘に貢献している「水圧破砕法」は、僕らの生活を豊かにしている一方、「人災地震」を引き起こしたりしています。


 新潟中越地震などは天然ガス田(南長岡ガス田)、政府の地下への二酸化炭素を圧入する実証実験が遠因であり、阪神淡路大震災も明石海峡大橋の主橋脚の海底工事が原因のひとつと思われます。


 現状、「人工地震」を起こす最有力候補は井戸を掘って「水圧破砕法」を使えば、M6クラスの地震を起こすのは比較的簡単ということですね。

 水爆を使う必要もない。


 ということで、アメリカはこれから地震大国になるようですが、シェールガス革命の「水圧破砕法」の威力は凄いということです。

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