2018年自転車の旅

 こんばんは。新たな脂肪燃焼スープを仕込みながら失礼します。


 オフィシャル・レシピというかフォーマル・レシピというか、人口に膾炙してる・レシピだとだいたい4日持つことが分かった。後述するが昼は縮小したりしてるので、真剣に取り組むと成人男性(デブ)ひとりで3日かなあ。


 5/23のことである。朝ミーティングがあって、昼から9 km先に移動してそこに存在したのち帰ってくるということが予定されていたため、俺は用意周到にもおべんとを用意していった。


 いきなり余談だが、こないだ豁然大悟したことがあって、「おべんと付いてるよ」という表現を君達は知っているか? 俺は知っていた。よく言われるからである。


 ところが、俺にとってこの言葉は、単に「o-be-n-to-tsu-i-te-ru-yo」という音の連なりに過ぎず、というとちょっと違うなぁ、なんていうか、「がじま」という音には本来なんの意味もないでしょう。けんども、俺ももう「がじま」と名乗って2年半とかになるので、そうすっと、「がじま」という音列にはちょっとなんていうか、意味が乗る。名前だね。俺のことだね。ラヴ。アンド、ピース。

 ところが、もともとの「がじま」という音、そのもの、には大した意味がなくって、だから命名とはそもそういうことである。世の中の一定の範囲を、意味のなかった音で切り分けることで、範囲は寸断され、音には意味が乗る。ってな感じで、だから「おべんとついてるよ」は、「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」とか、なんかそんなに近い言葉だった。

 意味は分かる。それが「人生はブラジャーの上を流れる」という意味ではないことも知っている。えっとつまり、「おべんとついてるよ」は、「服とかに米粒がついてるぞ、いい大人が、恥を知れ、死ね」という意味であるが、これはおまじない的な文言で、元々は大した意味がないもの、だと思っていた。

 思っていたというか、まじめに考えたことがなかった。ただ言われるがままに付着した米などを撤去して、だいたいは涙を飲んで捨てる。その夜には七人? 八人? 88人? とにかく沢山の神が枕元に立ち、ねちねちと(米だけに)恨み言を述べていく。とても眠れたものではない。次こそはと反省するもののまたどこからか米粒が飛来する。また「おべんとついてるよ」と言われる。意味もわからず取り外す。そうやって暮らしていた。「やれと言われれば今の俺には イッツ・マイ・オンリー・ウェイ・トゥ・リヴ オウオーオー」ってなもんである。日大の話は今してない。あと歌詞の引用はダメなんだよ。


 この「おべんと」は「お弁当」のことなのである。いや「なのである」って、知ってるわって思うかもしんないけど、俺は気付いた時、アー! って思ったのよ。

 そっかそっか。おべんととは、すなわち「輸送するための食べ物」である。で、米粒がついてる時、というのは、食い残した食べ物が付着されて移動している状態であって、食べ物を輸送してる状態だから「おべんと」と称しても良い! ハァーー! なんてオシャレな言い回し! おい! お前! やるな! オイ! 京都府民かよオイ!!



 だいたい今皆さんがしてるような顔をされました。そうか、常識だったか……。まあまた一つ常識を身につけられたので寿いでいただければと思う。頼む。どうかひとつ。


 で、昼前に出る。豊平川を遡行する。行きはよいよい帰りはこわい、の逆で、行きは豊平川の上流に向かうので、つまりゆるい上り坂である。ところが帰りはずーっと下り。ということで、今苦労すれば帰りはラクだと思いながら出先に向かい、到達して弁当を食べる。ひとくちの脂肪燃焼スープ、で野菜と果物がOKの日なので、キュウリとアボカド、それからグレープフルーツ。ちなみに調理も何もなく、切っただけ。作成に要した時間は7分だ。まあさ、不味くはないけども、なんかこう、味気ないような気持ちにはなった。


 それでどこか空虚を抱えながら、ちょっとばかしそこに居て、居るべき時間が過ぎたので帰る。帰り道は下り坂、ラクチンなものである。ラクチンなものであるはずだった。ところが、途中。


 モーーーーーレツな空腹感に襲われる。すごい腹が減る。ちょっと気持ち悪い感じになるくらいぺっこぺこである。ウォって思うが、何しろ今俺は川下りをしている。川原にはコンビニがないので、ちょっとフラフラになりながら、どうにか川原から一般道に戻って(また、川原は一段下がったところにあるので、戻るのに多大な体力が必要になる)、近くのコンビニを探して、でもさあ、コンビニで何を食えばいいんだ俺は。いやもうおにぎりとか食いたい感じよ。低血糖みたいな。一瞬よぎったよね。

「ホイコーローは、反り返るまで炒めた豚肉と、野菜を炒めたものである」

「米はアメリカなどでは『野菜』として扱われる」

「従って、野菜である米と、豚肉を炒めたものはホイコーローである!」

 って五行導師だっけか、とにかく鉄鍋のジャン! Rラストバトルのことがよぎった。


 でもな~~ダメだろうな~~~~~。

 この理屈で「だから米は野菜でしょ? 今日は野菜OKの日でしょ?」って言い張るのはちょっとムリがあるよな~~さすがに~~~~~~~~~


 それでしょうがないんで、野菜スティック買って。フルーツジュースとお茶買って。また川原に下って、適当な石段に腰掛けて、食べたよ。なんだかちょっとだけ悲しい気持ちになった。


 いややはり運動というのは体内の栄養素を消費していくものなのだなァ、と思った。そんで一旦帰宅し、もう過熱もまだるっこしいわ! と思いながら脂肪燃焼スープを食べた。そのあと20時からまたちょっと在席が必要なできごとがあったので、そこに移動して、済ませて、22時くらいに、さあ買い物して帰ろうと思った。割高だがいつでも空いてるディナーベルに行き、まずはバナナを買う。4日目はバナナとスキムミルクを食べなければいけないからだ。それがさあ、バナナはあった。もちろんあった。

 スキムミルクがない! ないんだよスキムミルク。牛乳のところかな、って思ったらない。じゃあ小麦粉とかのところかな、って思ったけどない。あっチーズとかのところかな? って思ったけどそこにもない! どこにもない!!

 一応店員に聞いてみるが、「ないんじゃないすかネー」みたいなやる気のない返答。まあなあ。「米どこですか」とかね、そういう話だったらともかく、スキムミルクだもんなあ……。わかんないよな。


 で、俺は悩んだ。4日目にはバナナ3本とスキムミルクを摂取しなければならないことになっているからだ。しかも、4日目の夜には既に戒律違反(飲み会)が予定されている。事前に打ち消しというか、とにかく他のところはなるたけ教義は守っておきたい。まあ多分、脂肪分の少ない牛乳を飲めばいいんだろうなあ、と思わなくはなかったが、それでもさ、やっぱさ、なんでスキムミルクなのかが分からないから、スキムミルクにしか含まれて居ない何か有効成分とかがあるのかもしれないじゃあないですか。


 しょうがなく、自転車に又跨また、またがってダッシュで一駅となりのイオンに行って。23時閉店だからもう大慌てだったが、さすがイオン。ある。スキムミルクがある!

 夜中、閉店間際、あー今日の仕事も終わりだ疲れたなあ、というところにスーツで汗をかきかきやってきたデブがスキムミルク一缶買って帰っていくの、どのように受け取られたかは謎である。ホラーではなく、エンタメの方向で処理されていれば良いなあと思いながら家に帰って、もうダルいのでシャワーを浴びて寝た。


 2018年05月24日 07時10分の測定結果

 体重:88.00kg

 体脂肪率:27.70%

 筋肉量:60.30kg

 体内年齢:41歳


 350 g減った。誤差だろ。あんなに空腹を抱えてチャリに乗ったというのに……。

 少しくじけそうになった。第三日目のことである。

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