26.ルビンの壺 - 物語にも色を感じる

 小説といえば、文字に色を感じる話はしたじゃない? 他にも、文章に単位でも物語全体でも色を感じるのよ。

 何か有名な例を引っ張ってきた方が説明しやすいかな。

 そうね、例えば。

「吾輩は猫である」

 文字単位で言えば「吾」は青みがかった黄緑色、「輩」は深緑、「は」は赤と黄色、「猫」はよく見えないけど緑と白かな? 「で」はオレンジ、「あ」が赤、「る」は赤紫になるね。

 で、文章単位、「吾輩は猫である」全体は黄緑に見える。わりと明るい黄緑ね。レタスみたいな色かな。わりと透明感も高い。

 そしてこの物語は焦げ茶色をしているわ。しめっぽい茶と乾いた茶が混在してる。左側の方が乾いた色なのかな。切れ目はどこだか分からないや。

 とまぁ、こんな感じ。

 混乱しないかって? うーん。しないかなぁ。

 絵を鑑賞するときに、全体的な印象と部分の印象を分けて考えることは可能でしょう? 白肌の少女が海を見ている絵だったら、きっと全体的に青い絵とも言えるし、白い少女の絵とも言える。それとあまり変わらないんじゃないかな。

 聞いている方は若干混乱するだろうけど。

 あ、でも、タイトルの色から期待した雰囲気と、物語の色があまりにかけ離れている時は、ちょっと不服に思ったりするかな。もちろん口には出さないけどね。そんな感想言われても作者困っちゃうだろうから。


 自分で小説を書くときは、できるだけ文や物語が綺麗な色になるよう調整しているのよ。

 私にしか見えてない色だから、ほとんど意味のない作業なんだけれどね。楽しいからいいんだ。

 最近、文学金魚新人賞の一次選考を通ってね。『殺して曼珠沙華』ってタイトルなんだけど、すべてが綺麗な赤になるよう頑張って整えた作品だったの。だから通過はすごく嬉しいわ。どこまで行けるかな。楽しみにしてる。


 あれ? 上の階で物音した? 

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