第208話 えへへ♪涼羽ちゃんとお揃い♪

「う…うう…」


「わあ~♪やっぱり涼羽ちゃん、女の子の服ほんとに似合ってる~♪」




休日となる土曜日の昼下がり。


柊家にお邪魔することとなった涼羽は、美鈴の部屋にある姿見に映る自分の姿から、思わず目を逸らして、その顔を真っ赤に染めて恥ずかしがっている。




というのも、今の涼羽は、今美鈴が着ているコーデと全く同じものをそのまま着せられているから。




ブラウン系のニットのセーターは、当然だが膨らみなど全くない涼羽の胸に対してすとんとした絶壁となってしまっているのだが、それでも胸のない女子で通ってしまう違和感のなさが、そこにある。


美鈴よりも脚が長いため、本来なら膝丈のはずが、それよりも上の丈になってしまっている明るめの青のデニムのスカート。


ソックスは、涼羽が元から履いてきた黒のハイソックスそのままだが、本当の女子でもそうはいないだろうと言えるほどの、涼羽の綺麗な脚、そして少し小ぶりながら理想的な曲線を描いているヒップラインは、美鈴から見ても素晴らしいの一言に尽きるほど。




今となっては腰の下ほどまで伸びている、長く艶のいい黒髪も、飾り気なくシンプルにそれを束ねていたヘアゴムが取り去られて、重力に従って真っ直ぐに下に伸びている。


幼げで活発な印象の美鈴と比べると、涼羽の方はまさに深窓の令嬢と言える儚さと清楚さ、そして健気さがある。


しかし、その顔立ちは美鈴と比べても遜色ないほどに幼げで可愛らしい美少女顔であるため、その身にまとっている雰囲気とのギャップが、言いようのない魅力を生んでしまっている。




特にメイクをすることもなく、そのままの状態であるにも関わらず、涼羽の顔立ちはどこからどう見ても生粋の美少女にしか見えないこともあり、胸がないだけでは、男だと思われることはまずないだろうという、そんな状態となっている。




「えへへ♪涼羽ちゃんとお揃い♪」


「み…美鈴ちゃん…やっぱり…恥ずかしいよ…」


「涼羽ちゃんってほんとすご~い。私の服なのに、全然窮屈な感じもなく着れてるなんて」


「そ…それは…」


「それに、こんなに可愛い顔して…私、涼羽ちゃんのことめっちゃくちゃに可愛がってあげたくなっちゃうもん」


「や…やめてよ…」


「やだ♪涼羽ちゃんが可愛すぎるから、やめてなんてあげられないもん♪」




涼羽とお揃いのファッションで、涼羽にべったりと寄り添いながら一緒に姿見に映る自分と涼羽の姿を見つめる美鈴。


仲良しな双子の姉妹が、同じ服を共有しているかのようなその光景。


それも、誰もがその目を惹かれてしまうような美少女達の戯れにしか見えない涼羽と美鈴のやりとりは、ひたすら恥ずかしがってそっぽを向いてしまう涼羽に、美鈴が嬉しそうに幸せそうにべったりとくっついて、より可愛がろうとしている。




涼羽に美しく見られたいという思いから、普段からそのボディライン作りに余念のない美鈴から見ても、涼羽のボディラインはほっそりとしていて、それでいて無理のないものとなっている。


そんな涼羽の腰の細さを堪能するかのように、その手で触れてしまう。




「!ひゃ!…み、美鈴ちゃん…やめて…」


「も~…涼羽ちゃんってなんでこんなに綺麗でほっそりした腰なの~?」


「そ、そんなの…知らない…!ひっ!…」


「太ももも、すっごく綺麗…涼羽ちゃんやっぱりスカートすっごく似合ってるし~」




いきなり自分の腰に触れられて、思わず甲高い声をあげてしまう涼羽。


もともと、非常に敏感な身体であることもあって、とにかく人に触れられることが苦手であるため、こんな風に触れられると、びくりと反応してしまう。




下手をすると自分よりも細いんじゃないの、とか思えてしまうほどにほっそりとした涼羽の腰を堪能しながら、羨ましそうな声を涼羽に向けてしまう美鈴。


同時に、いきなり腰に触れられてびくりとしながら、儚い抵抗をする涼羽の姿が可愛すぎて、もっともっといじめたくなってしまう。




腰の位置が高いため、美鈴が履くよりも丈が短くなっている涼羽のスカートの裾を少しめくり上げると、その下から見える、見ているだけで溜息が出てしまいそうなほどの綺麗な太ももに、美鈴の手が触れてしまう。




まるで手に吸い付いてくるかのようなその手触りに、今この時初めて触れたというわけでもないのに驚きを隠せない美鈴。


そして、太ももにまで触れられて、びくびくと怯えてしまっているかのような涼羽を見て、ますます涼羽のことが可愛らしく思えてしまう。




まるで、涼羽が美鈴に痴漢されているかのような、非常にゆりゆりしく犯罪的な香りのする光景となってしまっており、もし誰かがこの光景を目にしてしまっていたならば、遠慮なくその一部始終を除き見てしまっていたことだろう。




「涼羽ちゃん…やっぱり『SUZUHA』ちゃんみたいな超絶美少女モデルになれちゃうんだから、ほんとの女の子よりもず~~~~っと可愛くて女の子らしいんだよ♪」


「!ち、ちが…そんなこと…ないよ…」


「違わないもん。涼羽ちゃんはほんとに可愛くて可愛くて、綺麗でたまんないんだもん。涼羽ちゃんは、誰からも愛されて、可愛がられる天使みたいな男の子だもん」


「そ…そんなに言われたら…恥ずかしいよ…」


「涼羽ちゃんだあい好き♪涼羽ちゃんは、私だけの涼羽ちゃんなんだもん。誰にも、涼羽ちゃんのことは渡さないんだから、ね?」


「う…うう…」




ひたすらに涼羽が可愛くて綺麗でたまらない、という思いをそのまま伝えてくる美鈴の言葉に、涼羽はもうただただ恥ずかしがってしまっている。


そんな涼羽があまりにも可愛すぎて、ますます可愛がって、いじめたくなってしまう美鈴。


自分と同じファッションに身を包みながら、ひたすら恥ずかしがる涼羽の身体をぎゅうっと抱きしめ、その言葉通り自分だけのものにしようとせんがごとくに、美鈴は自分からふいと視線を逸らし続ける涼羽の頬に、自分の頬をすりすりとしてしまっている。




「涼羽ちゃん♪ん~…」


「!ん、んんっ!…」




そして、そんな至近距離で涼羽の顔をじっと見つめていてたまらなくなってしまったのか、美鈴はまたしても、涼羽の顔を強引に自分の方に向けさせると、涼羽のそのつやつやでぷるぷるとした唇を、自分の唇で奪ってしまう。




まるで自分の唇に吸い付いてくるかのような、涼羽の唇の感触に言いようのない心地よさを感じながら、美鈴は自分の舌を、涼羽のその唇の中にまで侵入させていく。


姿見には、どこからどう見てもとびっきりの美少女にしか見えない二人の女の子が、禁断の愛を育もうとしている、そんな光景が映し出されている。


言葉では儚い抵抗を繰り返すくせに、実際にこんな風にされると途端に抵抗らしい抵抗ができなくなってしまう涼羽が本当に可愛くてたまらず、美鈴はますます涼羽のことをとことんまで愛してあげようと思ってしまう。


それに、涼羽とこうして唇を重ねることがとても心地よくて、とても幸せでたまらなくて、これからも何度でもしたいとまで、思ってしまう。




その反面、こんな風に愛されてしまうと、誰に対してもこんな風になってしまうであろう涼羽の性質が本当に危なっかしく思えてしまい、何が何でも涼羽のことを自分だけのものにしようと、その独占欲は膨れ上がっていくばかりになってしまっている美鈴。




心ではいやいやをして、どうにか離れようと思ってはいるものの、実際にはその身体は全く動いてくれなくて、美鈴に唇を奪われているということに対する恥ずかしさだけがどんどん膨れ上がっていってしまう涼羽。


妹の羽月にこんな風にされる時でも、どうしようもないほどの恥ずかしさが心の中から膨れ上がっていってしまうのをこれでもかというほどに感じさせられてしまうのに、それをクラスメイトの女の子である美鈴にされてしまうと、その恥ずかしさもより一層となってしまっている。




涼羽は、この後もしばらくの間、美鈴の気が済むまでひたすら、唇を奪われながら愛され続けることと、なってしまうのであった。








――――








「や…やだ…恥ずかしい…」


「ん~ん♪ぜんっぜんおかしくないよ?涼羽ちゃん、誰が見てもめっちゃくちゃ可愛いもん」


「そ、そんなこと…」


「だって、どこからどう見たって羨ましくなっちゃうくらい可愛いんだもん♪だから私、涼羽ちゃんのこと大好きなんだから♪」




美鈴とお揃いの服を着せられて、ひたすら恥ずかしがっている涼羽は、その美鈴に連れられて、美鈴の部屋のある二階から、再び一階のリビングに移動しているところだ。


どこからどう見ても、とびっきりの美少女にしか見えない涼羽が、女の子の服に身を包んでいるのだから、なおさら女の子にしか見えない状態となってしまっている。


そんな自分を、美鈴に見られているだけでも恥ずかしくて恥ずかしくてたまらないのに、それをさらに美里や正志にまで見られてしまうと思うと、ますます涼羽の心の中から、恥ずかしいという思いが泉のごとくに湧き上がってきてしまう。




そんな涼羽が可愛くて可愛くてたまらず、美鈴はその美少女顔をゆるゆるにしてしまっており、涼羽は自分だけのものだと自己主張せんがばかりにべったりと、涼羽の身体に抱きついたまま、涼羽を自分の両親がいるリビングへと、無理やり連れて行ってしまっている。




まるで仲のいい姉妹のようにお揃いのファッションに身を包んで、べったりと抱きついて…


涼羽にそんなことをしているだけでも、美鈴は今、最高に幸せだといい切れるほどの幸福感を感じており、それがそのまま、表情にまでとびっきりの笑顔として表れている。




今日この日は、涼羽が自分の自宅である柊家に来てくれているからこそ、涼羽のことを自分が思いっきり独り占めすることができており、美鈴はもうこのまま涼羽をこの家の子にしたくなってしまうほどに、涼羽のことをこの家から帰したくなくなってしまっている。




そして、リビングのドアのノブに手をかけ、今の自分とお揃いの服を着ている涼羽を早く見て欲しいという気持ちが現れているかのようにせかせかとドアを開けると、美鈴はその勢いそのままに、リビングに足を踏み入れる。




そして、強烈な恥ずかしさと抵抗感に、リビングの外で足を止めてしまっている涼羽の手を引っ張り、そのままリビングの中へと入れてしまう。




「あら美鈴、降りてきたの……ってまあ!」


「おや美鈴、降りてきたのかい……っておお!」




リビングのソファにもたれかかりながら、夫婦揃って休日の昼下がりをのんびりと過ごしていた美里と正志の二人が、リビングに入ってきた涼羽と美鈴の二人に気づき、二人の方へと視線を向ける。


そして、視線を向けた瞬間、いまの美鈴とまるで同じ服装に身を包んでいる涼羽の姿が目に入ることとなり、驚きの表情を浮かべ、声をあげてしまう。




「えへへ~♪どお?お揃いだよ~」


「うう…は、恥ずかしい…」




服装のシェアをするくらい仲のいい姉妹がそこにいるのかと思ってしまうほどに、べったりと涼羽に抱きついて嬉しそうな表情を浮かべている美鈴と、美鈴と同じ服装に身を包んでいるところを美里と正志の二人に見られてしまい、恥ずかしさにひたすら、その顔を染めてふいと逸らしている涼羽があまりにも可愛すぎて、美里も正志もついつい立ち上がって、二人のそばまで寄ってきてしまう。




「まあ~!涼羽ちゃんったら、女の子の服装絶対似合うって思ってたけど…全然違和感ないわ~!」


「ほお~…涼羽君なら似合うとは思ってはいたけど…これは誰が見たって、とびっきりの美少女にしか見えないだろうね」




もともとの素材だけで、とびっきりの美少女と言えるほどのものである涼羽が、実際に女の子の服装に身を包んでいるだけで、似合っているなんてものを飛び越えて、まるで違和感がない、とまで言い切れる状態に、美里は頬を緩めながら涼羽のことをぎゅうっと抱きしめてしまう。


正志は、まるで可愛い娘がもう一人できたかのような錯覚を覚えてしまうほどに、女装した涼羽の姿をまじまじと見つめて、その頬を緩めながら、涼羽の頭を優しくなでている。




「は…恥ずかしいです…み…見ないで…ください…」




クラスメイトである美鈴が今着ているものと同じ服装に身を包んで、どこからどう見ても胸が残念な清楚系美少女にしか見えない涼羽は、その姿をまじまじと見られていることにその身が溶けてなくなってしまいそうなほどの恥ずかしさを覚えてしまい、儚い抵抗の言葉を、声にして響かせてしまう。


しかし、それも抵抗と言えるほどのものとはなっておらず、ただただ恥ずかしがっている涼羽の姿が、美里と正志に目にはあまりにも可愛らしく映ってしまい、涼羽の願いに反して、二人はますます涼羽のことをじろじろと無遠慮に見つめ、可愛がろうとしてしまう。




「えへへ~♪涼羽ちゃんと双子ファッション~♪」


「いいわ~!美鈴も涼羽ちゃんも本当に可愛いわ~!」


「あ~…僕はなんて幸せ者なんだろう…こんなにも可愛い娘が二人もいて…」


「!ちょ…ま、正志さん…」


「涼羽君、言っただろう?僕のことは『お父さん』と呼びなさい、って」


「!で、でも…」


「ほら、涼羽君」


「…お、お父…さん…」


「!ああ~!涼羽君はほんとに可愛いなあ~!」


「ねえ?涼羽ちゃん?私のことも、『お母さん』って呼んで?」


「え?え?」


「ほら?呼んで?」


「…お、お母…さん…」


「!ああ~もお!なんて可愛らしくて、いい子なの~!涼羽ちゃんは!」




涼羽とお揃いの服装に身を包んでいることを本当に嬉しく、楽しく思っている美鈴の美少女顔に、まさにその思いを表すかのような天真爛漫な笑顔が浮かんでいる。


そんな美鈴と、美鈴にべったりと抱きつかれて困り果てた表情を浮かべている涼羽がますます可愛らしく思えて、美里はそんな二人をまとめてぎゅうっと抱きしめてしまっている。


正志は、本当にこの家にもう一人、娘ができたかのような感覚に、その顔をだらしなく緩めながら、妻である美里と挟み込むかのように、涼羽と美鈴の二人をぎゅうっと抱きしめている。




自分のことを娘だといわれたことに、思わず抗議の言葉を声にしようとした涼羽なのだが、そこで正志のことを名前で呼んでしまったことで、逆に正志の方から抗議の声をかけられてしまう。


あくまで自分のことを『お父さん』と呼んで欲しいという正志の声に、戸惑いながらも、たどたどしく正志のことを『お父さん』と、涼羽は律儀に呼びかける。


そんな涼羽があまりにも可愛くて、またそんな可愛い子から『お父さん』と呼ばれて、正志はまるでこの世の幸せがいっぺんに来たかのような幸福感に満ち溢れた表情を浮かべてしまう。




そんな正志を見て羨ましくなったのか、美里まで涼羽に『お母さん』呼びをねだってしまう始末。


いきなりな自分の言葉に戸惑う涼羽に対し、畳み掛けるかのようにおねだりを繰り返す美里。


そんな美里の言葉にも、涼羽は戸惑いながらたどたどしく、『お母さん』と呼んであげる。


美里も、そんな涼羽が可愛くて可愛くてたまらず、ますます涼羽のことをぎゅうっと抱きしめてしまう。




美里も正志も、まるで可愛いできた息子と娘がいっぺんにできたかのような、そんな幸福感でいっぱいの錯覚に浸りながら、しばらくの間涼羽と美鈴のことをめいっぱい、可愛がり続けるのであった。

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