第153話 涼羽ちゃんって、本当に褒めるところしかないじゃない!

「えへへ~♪」


「ふふ…かなちゃん、お料理楽しい?」


「うん!たのしい!」


「そう…かなちゃんが楽しいって言ってくれたら、お…お姉ちゃん、嬉しい」


「わ~い!りょうおねえちゃんとおりょうり、す~っごくたのしくて、うれしい!」




現在四歳の幼い子供である香奈。


その香奈が、大好きで大好きでたまらないお姉ちゃんである涼羽に教えてもらいながら、今までさせてもらえなかった料理に取り組むその姿。




涼羽のそばで、涼羽に教えてもらいながら、仲良く料理することが本当に楽しくて、嬉しくて、香奈の幼くも整っていて愛らしい顔からは、天真爛漫で純粋な笑顔が絶えることなく浮かんでいる。




そんな光景を、二人のそばで見守る永蓮も、その顔に穏やかで慈愛に満ち溢れた笑顔が絶えることなく浮かんでいる。


涼羽が決して香奈に危ないことをさせることなく、その手があればできる簡単なことからさせてくれているのはもちろん、自分の作業を進めながらでも、決して目を離すことなく、見守ってくれているのも非常に安心感がある。


そして、香奈が分からなくて聞いてきた時には、本当に優しく教えてあげてくれている。


そのおかげで、香奈は生まれて初めての料理を、本当に本当に楽しく取り組むことができている。




その上で、涼羽自身も永蓮からアドバイスをもらいながら、それを即実践で自分にどんどん落とし込んでいっている。


幼い香奈に料理を教えながら、自身も永蓮に教わり、自分の料理スキルを向上させていっている。




そんな良循環を繰り返しながら料理に取り組むことが、涼羽にとっても本当に本当に楽しいようで、涼羽の童顔な美少女顔にも、純粋に嬉しそうで楽しそうな笑顔が絶えず浮かび続けている。




自分にとって可愛い妹のような存在の香奈と、一緒に料理することが楽しい。


自分にとって祖母のような存在の永蓮に、いろいろなことを教わりながら料理するのが楽しい。




この三人の間には、常に笑顔に満ち溢れており、そんな笑顔の中でそれぞれが、楽しく料理に取り組むことができている。




「りょうおねえちゃん、これでいい?」


「うん、よくできたね、かなちゃん」




きちんと、涼羽の言いつけを守って、見ているだけで楽しいということが分かってしまう程の笑顔を浮かべながら、するべきことをこなしていく香奈。




そして、ひとつひとつやることが終わる度に、涼羽に声をかけて、自分のやったことを確認してもらう。




永蓮の教育が行き届いているのか、やるべきことをしっかりと確実にこなしていく香奈。


その香奈の、幼く、拙い手つきながらもちゃんとできているところを見て、涼羽の顔もふんわりと優しい笑顔になってしまう。




そして、ちゃんとできた香奈を褒め、その頭を優しく撫でる。


保育園のアルバイトでずっと香奈のような幼い子供達を相手にしているため、まるで本当のお姉さんであり、本当のお母さんのような対応に、自然となってしまっている。




「わ〜い!りょうおねえちゃんがほめてくれた〜!」


「ふふ、かなちゃん本当に可愛くていい子いい子」


「!ほんと?かな、いいこ?」


「うん、こんな風にお手伝いしてくれるかなちゃん、本当にいい子だよ」


「えへへ〜♪かな、りょうおねえちゃんだあいすき〜!」




大好きで大好きでたまらない涼羽に褒めてもらえて、なでなでしてもらえて、非常にご機嫌な様子の香奈。




涼羽も、香奈のことが可愛くて可愛くてたまらないのか、優しい笑顔を香奈に向けて、じっと見つめている。




「ああ~…もう…涼羽ちゃんも香奈もなんて可愛いのかしら~…」




そんな仲睦まじい二人を見て、永蓮も頬が緩んでしまう。


料理の手伝いを本当に嬉しそうにしている香奈が本当に可愛い。


そんな香奈に料理を優しく教えてくれる涼羽が本当に可愛い。




もう、見ているだけで幸せな気分に浸れてしまうのだ。




やっぱり涼羽には、この水神家の子供になって欲しい。


ずっと、自分のそばにいてほしい。




まるで本当の姉妹のように、仲睦まじく、楽しく嬉しそうな笑顔で料理という共同作業をこなしていく涼羽と香奈の二人の安心感ある手つきを眺めながら、永蓮はその想いをどんどん強くしていくのであった。






――――








「わ~い!できた~!」




そうして、祖母である永蓮、もはや自分にとっては本当の姉のような存在である涼羽に見守られ、導かれながら、つたない手つきではあったものの、言われたことをしっかりとこなしていった香奈。


そんな自分の作業が終わって、できあがった料理を見て、幼く可愛らしい笑顔がこぼれてくる。




「ふふ、かなちゃんがい~っぱいお手伝いしてくれたから、お…お姉ちゃんすっごく助かったよ」


「!ほんと?かな、りょうおねえちゃんのおてつだい、ちゃあんとできた?」


「うん、かなちゃん本当にいい子だね。大好きだよ」


「わ~い!りょうおねえちゃんがいいこっていってくれた~!」




そして、つたない手つきながらもしっかりとお手伝いをしてくれた香奈に、涼羽が本当に嬉しそうに賞賛の言葉を贈る。


涼羽自身、裏表などなく、本当に純粋にそう思っているからこそ、自然に出せる言葉を。




こんなにも幼いのに、こんなにもしっかりとお手伝いしてくれる香奈が本当に可愛くて、その頭を優しく撫でてあげる。




そんな涼羽の言葉となでなでが本当に嬉しくて、香奈の顔に一層の喜び溢れる笑顔が浮かんでくる。


そして、涼羽の腰にべったりと抱きついて、甘えるように顔を埋めてくる。




「かなちゃん、お料理は楽しかった?」


「うん!すっごくたのしかった!」


「そう、よかった。これから、もっとい~っぱいお料理していこうね」


「うん!りょうおねえちゃんといっしょにするおりょうり、す~っごくたのしい!」


「ふふ、ありがとう。今度からは、お婆ちゃんも一緒にお料理してくれるから」


「!ほんと?おばあちゃんも、かなといっしょにおりょうりしてくれるの?」


「ええ、香奈がこんなにもお料理ちゃ~んとできる子って分かったんだもの。お婆ちゃんも、これからは香奈にちゃ~んとお料理、教えてあげるわね」


「わ~い!おばあちゃんも、かなといっしょにおりょうりしてくれる~!」




自分に嬉しそうに抱きついてくる香奈を、身体の向きを変えて膝を床に下ろして目線を合わせるようにし、その胸にぎゅうっと抱きしめながら、香奈に問いかける涼羽。


自分の問いかけに天真爛漫で純真無垢な笑顔を浮かべて肯定の意を表す香奈がますます可愛くてたまらず、さらにぎゅうっとその小さな身体を抱きしめてあげる。




そして、香奈が作業に没頭している間に、涼羽が永蓮に提案していたこと…


これからは、香奈にも積極的に料理に取り組ませていく、ということ。




涼羽がこんなにも香奈に優しく、そしてしっかりと教えてくれて、さらには他でもない香奈自身がその工程を本当に楽しんで、嬉しそうにこなしていく姿を見せられて、永蓮がそんな涼羽の提案に首を横に振れるはずなどなく。


むしろ、自分が今まで、いかに心配性で考えすぎていたのかを、振り返ることとなった。




涼羽のように、こうしてその手があればできることから始めさせればよかったのに。


涼羽のように、こうしてそこから少しずつ、できることを増やしていったらよかったのに。




まさに、そう思わされることとなった永蓮。




そして、香奈がこんなにも喜んでお手伝いをできる子だったということを、涼羽のおかげで見せてもらうことができたのだ。




もはや、涼羽の提案がなくても、自分からそう言い出すつもりだったのだ。




そんな永蓮の言葉に、ますます喜ぶ香奈。




大好きで大好きでたまらない涼羽とこうして料理ができて、そして今後も一緒にできると思うだけで嬉しいのに、次からは同じように大好きで大好きでたまらない祖母である永蓮も一緒に料理を教えてくれる、ということになって、無邪気に喜びと幸せに満ち溢れた笑顔を見せる。




「涼羽ちゃん、本当にありがとうね」


「え?」


「お婆ちゃんね、香奈が小さいからって、慎重になりすぎてたわ」


「……」


「香奈がこんなにも喜んでお手伝いをしてくれる子だって…こんなにも嬉しそうに料理してくれる子だって…本当は分かってたはずなのにね…」


「お婆ちゃん…」


「涼羽ちゃんみたいに、その手があればできることから少しずつさせていったら、って…本当に今日の涼羽ちゃんを見てて、思わされたの」


「……」


「本当にありがとうね、涼羽ちゃん。香奈にこんなにも楽しくお料理を教えてくれて…香奈がこんなにもいい子だっていうのを見せてくれて…」


「…お婆ちゃんが、どんなにかなちゃんのことが大好きで、どんなにかなちゃんのことを大切に思っているのか、っていうことの表れだと、思うんです」


「!涼羽ちゃん…」


「だから、かなちゃん、お婆ちゃんのことが大好きでお婆ちゃんにべったりなんじゃ、ないかなあって思って…」


「………」


「…僕は、もともとかなちゃんはこんなにもできる子なんだよって、それを見せるきっかけを作っただけだと思ってますから…だから、かなちゃんは普通にこのくらいはできる子だと、思ってました」


「涼羽ちゃん…」


「…これから、僕よりもお料理が上手なお婆ちゃんに、お料理を教わることができたら、かなちゃんあっと言う間にお料理大好きで、お料理上手な子になると、僕は思います」


「…涼羽ちゃん…」


「だから、これからかなちゃんに、楽しくお料理を教えてあげてくださいね」




涼羽のおかげでこんなにも香奈がいい子だということ、そしてこんなにも料理が大好きだということも見ることが出来て…


さらには、最初の最初の第一歩を踏み出させることまでしてくれて、本当に心の底からお礼を言う永蓮。




そして、自分が香奈に対して過保護すぎたのだという想いもぽつりと漏れ出てしまう。




だからこそ、こんな機会を作って、しかも自分にちゃんと見せてくれた涼羽に対しては、本当に感謝の思いしかない。


どこまでもいい子な涼羽のことが、ますます大好きになっていく永蓮。




そんな永蓮の自分を卑下するかのような言葉に対して、むしろそれがどれだけ香奈のことが大好きで、どれほど香奈のことを大切に想っているのか、それの表れだと言ってくる涼羽。




そして、涼羽自身はもともと香奈はこのくらいはできる子であり、自分はそれを見せるきっかけを作っただけだと。




これから、自分よりも料理上手な永蓮に教われば、香奈はすぐに料理上手になれる、とまで言い切ってくれる涼羽。




「~~~~~~~~~涼羽ちゃん!」




そんな涼羽が本当に可愛くて可愛くてたまらず、思わずぎゅうっと抱きしめてしまう永蓮。


その両腕に感じる、涼羽を抱きしめているという感触。


それが、永蓮の幸福感を際限なく膨れ上がらせていく。




「お、お婆ちゃん…」


「涼羽ちゃんったら、いつも思ってるけど、本当になんていい子なの~」


「べ、別にそんなこと…」


「いいえ!このお婆ちゃんが断言するわ!涼羽ちゃんはどこに出しても恥ずかしくない、本当に本当にいい子なの!」


「そ、そんな風に言われたら…恥ずかしいです…」


「もお~…なんでこんなに可愛くて、こんなにいい子なの~…涼羽ちゃんったら~…」




突然の永蓮の抱擁と賞賛に、思わずその顔を赤らめてしまう涼羽。


女子学生の格好に、髪型も幼い感じのツインテールということもあって、本当に可愛らしさ満点の女子中学生にしか見えない。




そんな涼羽が本当に本当に可愛すぎるからこそ、永蓮もこんな風に涼羽のことを愛してあげたくてたまらなくなってしまうのだろう。




「えへへ~♪りょうおねえちゃん、す~っごくかわいい~♪」




涼羽のそんな恥じらう表情を、涼羽の胸の中からじっと見つめている香奈も、そんな涼羽が可愛くて頬を綻ばせてしまう。


そして、そんな涼羽が大好きだ、と言わんばかりに涼羽の華奢な身体をよりぎゅっと抱きしめてしまう。




「か、かなちゃんまで…」


「涼羽ちゃん、大好きよ~」


「りょうおねえちゃん、だあ~いすき~」




本当に仲睦まじい、実の親子にしか見えないそんな触れ合い。


永蓮も香奈も、涼羽のことが大好きで大好きでたまらない、というアピールをするかのように、ひたすらに涼羽のことを抱きしめて離さない。




「もお!二人ばっかり涼羽ちゃんのこと可愛がって~!」




そんなやりとりをずっと見せ付けられて、とうとう我慢ができなくなってしまったのか…


リビングにいたはずの水蓮まで、キッチンにその姿を現してくる。




「ああ~もお!涼羽ちゃん本当に可愛い!」




そして、永蓮と香奈の二人に目一杯可愛がられて、すでに顔が真っ赤になっている涼羽の身体をぎゅうっと抱きしめる水蓮。


そして、露になっている涼羽の左頬に優しく、親愛の情を表す口付けをする。




「ひゃ!…す…水蓮…お姉ちゃんまで…」


「もお!涼羽ちゃんはどこまでお姉ちゃんの心を奪っていったら気が済むのよ!ほんとに!」




いきなり不意打ちで頬に唇を落とされて、思わずびくりとしてしまう涼羽のことなどお構いなしに、さらに二度、三度と、その唇を涼羽のすべすべで極上の絹のような肌の頬に、落としていく。




もはや涼羽のことを微塵も男子だと思っていないようで、自分の身体を押し付けるように涼羽のことを抱きしめたり、今のように無遠慮にキスまでしたり…


といった感じで、本当にやりたい放題の水蓮となっている。




「涼羽ちゃんはね、あたしの可愛い可愛い弟兼妹なの!だから、この家の子だから、他所のお家に帰る、だなんて言ったら、お姉ちゃん許さないからね!」


「そ、そんな…何言って…」


「もお!こんなにも可愛すぎるくらい可愛いし、お料理も家事も上手だし、お勉強もできるし、とにかくすっごくいい子だし!涼羽ちゃんって、本当に褒めるところしかないじゃない!」


「そ、そんなことないです…」


「いいえ!あるの!だから、涼羽ちゃんのことが大好きで大好きでたまらないこの水蓮お姉ちゃんに、う~んと可愛がられなきゃいけないの!うん!お姉ちゃんが決めた!」


「き、決めないでください…そんなこと…」




もう完全に涼羽に首っ丈になってしまっている水蓮。


自らが職場としている学校の生徒である、ということなど、もうとっくに頭の中から飛んでしまっているようで、その愛情攻撃が緩むどころか、ますますその激しさを増していく。




もう、水蓮から見れば、涼羽は本当に褒めるところしかない、と断言できるほどにいい子なのだ。




自分の娘である香奈のことを、まるで本当の母で、本当の姉のように可愛がって、大切にしてくれたり。


自分の母である永蓮に対しても、本当に心温まる、まるで本当の親子のように触れ合ってくれたり。


そして、下の兄弟姉妹が欲しかった自分に対しても、こんな風に自分が理想としていたやりとりをしてくれたり。




もう絶対に離したくない、とまで断言できてしまうほどに、涼羽のことが大好きで大好きでたまらない水蓮。


その水蓮と同じように、涼羽のことが大好きで大好きでたまらない永蓮、そして香奈。




そんな三人が寄ってたかって、涼羽のことを抱きしめ、可愛がってしまう。




そんなやりとりは、涼羽の『ご飯が冷めちゃうから!』の一言が飛び出すまで、続くこととなった。

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