そのろく.彼女を知り己を知れば青春危からず
俺は、いつになく静かに個室のドアを閉じた。
股間が角になったわけじゃない。何かに絶望したってわけじゃない。
それなのに、校舎の片隅で忘れられた男子トイレに来ている。
息を殺してじっとドアの裏側を見つめていた。
一途も、多千夏も、真純も、素直になって本音を教えてくれた。
全部じゃなくたっていい。通じ合うには十分なだけ、俺はあいつらを知った。
次は俺の番だ。ちゃんと真純と話さなくちゃいけない。じゃなきゃ前に進めない。
分かってるのに手が震えた。はじめて血の力が目覚めた小学校の時を思い出す。
それまで普通だった俺の人生が変わった。狂い出したといってもいい。
徒競走。ありえないタイムで駆け抜けた俺にかけられたのは賞賛ではなく、拒絶。
中学生の頃、はじめて角に変化したときを思い出す。
初恋のあの子の前で、俺はよろけた拍子に教育実習生の女子大生にぶつかった。
裂けるズボン。阿鼻叫喚の地獄絵図。この血がもたらした思い出はこんなもん。
伝えるなんて考えたこともない。あの二人はバカだから、信じてるかも疑わしい。
そんくらい気楽に受け止めてもらえる自信がなかった。真純とは出会ってまだ一ヶ月足らず。
でも惹きつけられている。多分、お互いに。恋だの愛だのは関係ないんだ。
一緒にいたいと思っているのに、一緒にいるのが怖い。近づけないことが苦しい。
ただありのままを伝えるだけがこんなに難しいなんて気づかなかったよ。
「今日はえらく静かだな」
「……やっぱいたか」
どこかで期待していたクソ番長の声にほっと胸を撫で下ろす。
待てよ。喋ってもないのになんで俺がいるって気づいたんだ?
ドアが閉まるかすかな音や足音で入ったのは分かっても、俺とは限らないだろ。
はっ、まさか誰彼かまわず声をかけていたのか!? 掛け値なしの変態だろそれじゃ。
「こんなとこにくんのは俺か、お前くらいしかいねーんだよ」
俺、口に出してないよ? もしかしてテレパシーが使える番長なのか。
いや。今はそれでいい。実際、俺は彼に用があって用も足さないのにここに来たんだ。
友達って言えば一途と多千夏の二人だけ。あいつらりゃ口が裂けても相談したくないし。
クラスメイトとは会話こそするが仲がいいわけでもない。他に相手が思い浮かばなかった。
クソ番長は個室で隣になった同士なだけ。それ以上でも、それ以下でもない。
だから気兼ねなくなんでも言える。クソ番長からしたら迷惑だろうけど。
「あのさ、ひとつ訊いてもいいかな」
「んだよ」
「気になる子がいて、その子と仲良くなりたいんだけど、本当の自分を話すのが怖くてビビっちまってる……友達がいるんだけど」
恥ずかしくてついたわかりやすすぎるウソをクソ番長は黙って聞き流してくれた。
「その友達は、亜人間っていう、人間に近い別の存在なんだ。ユニコーンの血が流れていて、非処女に触れてしまうと股間が角になってしまう。そんな、バカな話を信じてもらえるのか、受け入れてくれるのか、怖くてしかたがないんだ。どうしたら、いいんだろうな」
「くだらねえ」
一刀両断。頭のてっぺんから息子の先までずばっとね。これもう即死だなー。
まあ当たり前っちゃ当たり前なんだが、打ちひしがれて肩も落ちるよ。
「やっぱそうか」
「ああ。つまらねえことを気にしてんな、そいつは」
「だって実は俺人間じゃありませんなんて、言えるかよ」
「そこじゃないだろ」
え、そこじゃないならどこ? ブラジルあたり? 頭が混乱してきた。
促さなくてもしっかりクソ番長は教えてくれた。俺の愚かさを。
「その気になる子は、そのダチをどう思ってんだ?」
「どう……多分、これからも仲良くしたいとは、思ってくれてる。自分の本音を話してくれたから。そう、信じてる」
「だったら簡単じゃねえか。バカだろお前」
「お、俺じゃねえし、俺の友達だし」
クソより大きな溜息が流れていった。見ず知らずの男まで飽きられる俺の甲斐性って。
「言わないまま過ごすのは、言って玉砕するより、気になる子を裏切ってんだぞ。自分を信じて腹割ってくれた奴を、お前はちっとも信じてねえ。それで仲良くなるとか、フかすなよ」
俺が、真純を裏切ってる。俺は、真純を信じていない。
この前もクソ番長に説教されたんだよな。核心を突かれたっけ。
りりさの血を否定しておきながら、今でも俺は血に縛られて真純を裏切り続けている。
本当に真純と一緒にいたいなら。本当にりりさの行為を否定するなら。
誰よりも俺が血を乗り越えないでどうすんだ。ビビって何もしないままでどうすんだよ。
普通の青春を、人間の青春を送るんだって決めたのは俺だろ?
だったら変わるんだよ今。みんなで素直になって近づいている、今だからこそ!!
頭を振りかぶってドアにシュゥート! 鈍い痛みに目が覚めた。
「ありがとう、吹っ切れた」
「伝えるんならさっさと伝えろってダチに言っておけ。グズグズしてると手遅れになるぞ」
「……だな。世話になった」
「二度と来んな」
きっとここがクソ番長にとっての居場所、パラダイスなんだろう。
ずかずかと土足で踏み込んだ奴のことまで気にかけてくれるなんていいやつだ。
番長は包容力があるってはっきりわかんだね。サンキュー、グッバイ、心の友よ。
こんな清々しい気分でトイレから出るのは生まれたはじめてだ。
言うべきことも、やるべきことも最初から決まっていた。足りなかったのは、覚悟。
ビビって動けなかった体をクソ番長が蹴り飛ばしてくれたんだ、もう迷わない。
そう、彼の言うことは『すべて』正しかった。
☆ ☆ ☆
決戦の日まで残りわずか。クサい言い方をすれば絆が深まった俺らは、順調そのもの。
あれから真純はよく笑うようになった。多千夏が悪ふざけで抱きつけば仕返しとばかりに揉み返す。目を丸くして女の子声を出したあいつ、面白かったな。
大胆な格好は変わらなかったが何かにつけて見せつけるのもやめたみたいだ。
あんなこと言われちゃったから俺は勝手にドキドキしてたけど、特に変わりなし。
俺はクソ番長の言葉を胸に、この戦いが終わったら全てを告げようと決意していた。
せっかく良い感じなのに余計なことして台無しにするのは避けたい。
戦いが終わっちまえば結果がどうであれ、気にすることはなんもないからな。
結局さ、それが『グズグズ』するってことだったんだよ。
迷いを振り切ったつもりでいて最後の最後、爪先ひとつ分の勇気を、俺は持てなかった。
いよいよ対決を明日に控えた前日、俺らの青春はここから動き出す。
「うぃーす」
調理室に入ると真純が窓際でひとり、佇んでいた。
一途と多千夏は宣伝活動に精を出している。明日の準備は俺らの役目。
「……由仁」
「どうしたの、たそがれちゃって」
明日でケリがつくってんだからしんみりしちゃう気持ちも分かるけどね。
何気なく近づくと、『テーブルひとつ分』の距離で、拒絶された。
「近づかないでっ」
「お、おい」
手にしていた雑巾を投げつけられた。ワケがわからずもう一歩踏み出すと、真純は全速力で反対側に駆け抜ける。なんだ、どうしたんだよ。なんで戻っちまったんだ?
俺の顔を見て真純ははっとなったようだ。どんな顔してんだろ、知りたくない。
「ごめん。ちょっと、風邪っぽいからさ、移したくなくて」
その苦笑いがウソだって物語ってんだよ。勘弁してくれよ、いよいよって時にさ。
やっと伝えられると思ったのに、そんな態度見せられちゃ言いたいことも言えなくなる。
「なんかあった? 俺でよけりゃ話を――」
「ダメ、いいの、気にしないで……また、明日」
「ちょっと!」
逃がしちゃダメだ。確信めいた予感がある。手を伸ばしたが、捕まえられるはずがない。
空気を握り潰した時にはもう出て行ってしまった後。もう少し、もう少しだろ!?
入れ違いで一途と多千夏が帰ってきた。あいつの目が怒りに燃え上がっている。
「お前、真純に何しやがった? 泣いてたぞ」
「知るかよ。俺が聞きたいくらいだ」
「何が、あったの?」
おどおどしている多千夏が緩衝材になってくれた。一途も前ほど手は出さない。
ほんの数分の出来事を話すと二人とも首を捻った。心当たりはないらしいな。
「昨日、衣装の直しをしたときは普通だったよね、真純ちゃん」
「そうだな。由仁が手を出したんじゃないなら、わかんね」
「ここまで来てんなことするわけないだろ!」
冗談を冗談として受け入れる余裕がなかった。一途の手を振り払って距離を置く。
二人の言う通り、昨日までは一緒になって笑い合っていた。おかしなことはなかったはず。
考えても考えても答えはでない。俺は手遅れにしちまったのか?
そっと背中をさする手が二つ。男の手と女の手。
「取り乱すなよ、部長だろ。あいつにだって、変な気分の日くらいある」
「うんうん、女の子だからね! 明日になればきっといつも通りだよ」
「……そうだよな」
こいつらの明るさには救われる。考えなしともいうが良し悪しだから良し。
でもせっかく近づいていった距離を突き放された俺の心中は穏やかじゃない。
短いかもしれない付き合いでも、ワケもなくあんなことをする子じゃないって思えるから。
「ま、準備だけはしとこうぜ。俺らも手伝うからさ、な、多千夏」
「もっちろん! 私はケーキをクーラーボックスに入れる役~」
「お前簡単ほう選んだだろ」
「だって女の子ですもーん。力仕事は男の子~」
「そういうの男女差別っていうんだぜ。なにやってんだよ、由仁。まずお前がやれ」
はは。すっかり変わっちまったなこいつら。あんだけ部活に興味なかったのにさ。
率先して手伝ってくれるなんて嬉しくて泣いちまうぞ。まだ早いから我慢我慢。
一途の言う通り準備はしておかなきゃいけない。対決は待ってくれないからな。
「ありがとな、二人とも」
「気持ち悪いこぞ」
「もー二人は仲良しだなぁ。あ、準備は私に任せて、そのテーブルで痴態を見せていただいてもよろしいですよ?」
「よろしくねえ」
ぱーんと多千夏の頭を叩くと少しだけ気分が晴れた。ほんと、ありがとよ。
ひょんなことから決まった対決だったけど振り返ってみれば良い経験になった。
ってまだしんみりするにゃ早いな。終わっちゃいないんだからさ。
片がついたらそんときはみんなで笑い合おう。
☆ ☆ ☆
そして、当日。予感は現実に変わる。開始三十分前の調理室。
顔を見合わせているのは園芸部のメンバーだけだった。
テーブルに置かれた一枚のメモ。積み上げてきたものが壊れて崩れていく。
『今まで楽しかった、ありがと。それと、ごめん 真純』
「どういうことだよ、これ。なあ!?」
やっぱり何かがあったんだ。あの顔が物語っていたじゃないか!
俺がビビらないで引き止めていたら変わっていたかもしれない。どうして、俺はッ。
苛立つ俺の肩を一途が強引に掴めてイスに押しつけた。
「スマホもつながらないな。こんなことするやつじゃないんだが」
「してるだろ!? なんだよっ、一緒にやっていきたいって思ってたのは俺だけか!?」
「由仁くん……」
「クソッ」
苛立ちまぎれに前のイスを蹴り飛ばしたら、かわりに拳が横から飛んできた。
思いっきりぶっ飛ばされて床を滑る俺。一途が、冷たい目で見下ろしている。なんだよ。
「真純を信じられないのか」
うっ……同じようなこと言いやがって。信じるもなにも、いないじゃないか。
裏切られたのは――そうだ、真純のほうだよ。
グズグズして伝えなかった結果の責任を、彼女に押しつけるのはやめろ。
「……悪い。その、俺」
「わざわざメモを残したってことは、探してくれってことだろ。気づけよ、バカ」
イヤに冷静だなこいつ。それだけ真純を信じているってことなのか?
確かに何が理由でも本当に知られたくないなら黙って消えちまえばいいんだ。
自分の気持ちを残していったってことは、未練があるって裏返し。
素直になりきれない証明なんだ。一途が真っ直ぐ俺を見つめている。すげえ真剣な顔。
「お前さ、真純が好きなんだろ?」
「なっ」
「由仁くんってばわっかりやすいんだからな~も~。このこのぉ」
きひひと笑った多千夏が尖った爪先で立ち上がった俺の頬をぐりぐりする。痛いってば。
俺は、肯定も否定もできないまま不服そうな一途と楽しそうな多千夏の顔を見比べる。
「女の子とあんなに楽しそうにしている由仁くん見るの初めてだよ? 誰がどー見ても、ありゃ惚れてますわぁ~。ねー一途くん」
「お前は女の子じゃないんだな」
「うぐ、痛いところを突きますな……。わ、私は特別枠だからね!? 由仁くんが愛を語らう相手は一途くんだけだと思ってたんだけどなー。正直、嫉妬してるでしょ? 俺の由仁を取りやがってあの泥棒猫め! ってな感じ? きゃはー」
「せーよ」
一途は真顔のまま左手で多千夏を叩き、右手でスタホを弄っている。
好きなんだろと突きつけられて俺の思考回路は機能停止。
そりゃ好きは好きだよ。一緒にいて楽しいし、可愛いとも思うし。あんなエロい格好しといて気遣いできるしさ。けどそれが恋なのか愛なのか、友情なのか、区別できねぇ。
これは素直な気持ちだ。偽ってるわけじゃない……と思う。
自分のことを自分が100%理解していると思ったら大間違いだからな。
目まぐるしく頭ん中で恋と愛と友情って言葉が回転している。なんも言えずに俯いていると、多千夏の肘が脇腹を突いてきた。やめい、いたきもちいから。
「バレバレなんだからー。好きだから取り乱しちゃうんだもんね?」
「真純を見なかったか今ビッチどもに確認している。時間ねえからお前は探してこい」
すっかり主導権を一途に握られてしまった。これじゃどっちが部長なのやら。
探しに飛び出したいのは山々だが対決はどーすんだよ。
ただでさえ一人足りないのに、二人だけじゃ絶対に回らないのは分かってんだろ?
俺が口を開こうとすると素早く背後を取った多千夏の手が口を塞いだ。もががががっ。
「私たち頑張るからさ。由仁くんは行くのです! 愛を求めて!」
「俺は認めたわけじゃないし、許しもしないぞ。でもわかんだよ。真純が待ってんのはお前だ。行って連れ戻してこい。いいか、あいつを泣かせてみろ。ぶっ殺す」
「おばえば……」
なんだろう。クサいけど青春してる。俺今、猛烈に青春してる。
ここまでお膳立てされたら遠慮はいらない。手遅れになってでも全てを伝えるんだ。
俺は頷きながら多千夏を振り払って廊下に飛び出した。まずは家庭部の部室だ!
アホみたく校舎が広いから家庭部の部室にたどり着くまでに結構な時間を取られた、クソッ。
人目があったら全力疾走もできやしない。思いっきり拳を叩きつけるが反応はなし。
こじあけてもよかったんだが中には誰もいなさそうだ。どこに隠れてんだよっ。
ふざけんな。このまま終わらせないぞ。見つけ出してはっきりさせてやる。
あっちこっち駆け回りながら家庭科の生徒っぽい奴らに真純のことを訊いていく。
外見が分かりやすいから知ってる奴らは多いのに、名前も聞いたことがない奴ばっか。
あいつ、やっぱり居場所なんてなかったんだ。素直に俺らんとこに来いよな!
ずるずると時間だけが過ぎていく。探すアテがどこにもない。もう、開始時間の五分前だ。
そもそも校内にいるかも確実じゃないんだ。外に出られてたら見つけようがない。
とにかく、一旦戻ろうと思ったところに一途からの連絡が入る。
「見つかったか!?」
『いや、今はどこにいるか分からない』
「クソッ、どうすりゃいいんだ」
『手がかりならあった。マジ胸糞悪い』
後ろで黄色い声援が湧き上がっているが一途は気にしていない。
群がる女子にビッチと吐き捨てる時の万倍は不機嫌で怒りに満ち溢れた冷えた声が言う。
『昨日普通科の四階に行く真純を見たって奴がいる』
「それって」
『あのど腐れビッチ会長の仕業ってことだろ。こっちに来てないから生徒会室にいるはずだ』
「……分かった。俺が行く。あとは、任せた」
『俺が許す。あのビッチを外に放り投げろ』
んなことできるわけないだろ! 時間が惜しくて通話を切り走り出す。
リリスは男をたぶらかす淫魔だから女相手にゃ手を出さないと考えたのが甘かった。
俺のせいで真純に何かあったら一途に顔向けできない。何より俺が俺を許せない。
普通科の生徒はみんなイベント会場に向かったのか、校舎はがらんとしていた。
今なら全力を出せる。階段を七段、八段飛ばして駆け上がった。馬の脚力なめんなよ。
専用キーが必要なドアに手間取っている時間はない。なるようになれ、だ!
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」
天井すれすれの跳躍からの飛び蹴りがドアの表面をへこませ、金具を引き千切ってぶっ飛ぶ。
自分でもこんな力があるとは知らなかった。火事場の馬鹿力ってやつだな。
廊下を滑るドアを尻目に生徒会室へ。このドアは蹴破るまでない。殴り飛ばしてやった。
「騒々しいですね。イベント会場に行かなくてよろしいのですか?」
「……真純をどうした」
りりさは振り返ろうともしなかった。素早く部屋を見渡すが、真純はいない。
返事もせずに彼女は窓から遠くを眺めていた。黙るってんなら強硬手段!
細い肩を掴んで無理やりこちらを向かせたる艶やかな笑みは弱々しく、儚い。
「私はどうもしていませんよ」
ラチが明かない。もしもりりさが女であろうと関係なく真純を襲ったというのなら。
俺はきっと我を忘れるだろう。男女差別はよくねーからなぁ。
「なあ、なんでこんなことするんだよ。俺の体が欲しいっていうならくれてやる。好きなだけヤっていい。だから真純には手を出すな。彼女は関係ないだろ!」
「手は、出していませんよ。女の方に興味はありません」
「だったら!」
「私は提案しただけです。手を引けば、園芸部は存続させてもいいと」
この女はどうしてそこまでするんだ!? 俺らが何をしたっていうんだよ!
一途の言葉が脳裏に過ぎったが唇を噛み破る勢いで押さえ込む。
外にぶん投げたても解決なんかしない。大人になれ、俺。
それにりりさの次の言葉を聞いたら全身から力が抜けて立ってられなくなっちまった。
「あとは、あなたの真実を教えてあげただけです」
「まさか――」
「ええ、あなたが処女しか愛せないユニコーンの亜人間だと言いました。一緒にいればお互いに傷つくだけでしょう? 二人のため、いや、由仁さんのことを思えばこそですよ」
どうやらクソ番長は未来予知もできたらしいな。遅すぎたんだ。
さっさと自分の口から伝えない自分が悪い。理由をつけて先延ばしにするから、どんどんどん転がり落ちていく。真純はきっと、裏切られたと思ったんだ。
実際俺は無意識に裏切っていたんだからな。言い訳もできねえよ。
「由仁さんは私のことを、一途さんに話しましたよね。ですからこれで引き分けです。もうやめましょう。私たち亜人間は普通の人間とは馴染めません。受け入れてください、自分の血を」
受け入れる? 馴染めない? ふざけるなよ。俺らの帰りを待ってる奴らがいるんだ。
もうこれ以上、遅れようはない。言わないで諦めるなら、言って終わらせるのが筋だろ。
差し出されたりりさの手を払って立ち上がった。憎しみも怨みもない、あるのは、哀れみ。
ほんの少し道をずれていたら、俺もりりさと同じ考え方になっていたと思う。
一途や多千夏と出会えたから。真純と一緒に過ごせたから。抗う気にもなれる。
彼女にはそんな相手がいなかった。そんな相手が必要なんだ。
「りりさ。俺は前に、血に身を任せるなって言ったよな」
「それが何か?」
「えらそうなこといって、俺は血に身を任せていたんだ。あんたの言う通りだよ。黙ったままお互い一緒にいれば、絶対に傷つくときがくる。俺はそれに気づくのが、それを伝えるのが遅すぎた。でも、今からだって間に合うかもしれない」
「どうにもできませんよ。あなたのこれは非処女に触れれれば角になってしまうのでしょう」
懲りずにりりさの白い手が俺の股間をまさぐった。悪いが、ぴくりとも反応しないね。
あえて俺は彼女の肩を抱いて目と目を合わせた。柄にもなくりりさが頬を染める。
「だからって好きになっちゃいけないわけじゃない。ありのままの俺を受け入れてくれるなら、処女だ非処女だなんて関係ないんだ。問題だったのは、俺の気持ち。みんなのおかげで、やっと決まったんだ。俺はこれから、血を越える」
「そんなこと、無理に決まっているでしょう」
「無理でもやるんだ。自分ってのは、変えようと思えばいくらでも変えられることも、教えてもらったからな。りりさ、俺は変わる。血と戦ってでも、自分の人生を手に入れる。それができたとき、またあんたに言うよ。血に身を任せるなって」
りりさが自分から体を離した。窓際に寄り添って視線を外す。戸惑いが目に見えた。
「どうして? 私がしたことを怒っていいはずなのに、なぜ優しくするのです」
「同じ亜人間だから気持ちが分かるんだ。りりさはただ、友達が欲しかったんじゃないのか?」
彼女は俺を襲ったときに、俺を選んだ理由を言った。嫉妬だと。
体を求めるだけならいくらでもやりようがある。意地悪ならもっとえげつなくできる。
それをしなかったのは心が揺れていたからじゃないのか。都合のいい解釈かもしれないけど。
亜人間である辛さは、亜人間にしか分からないと思う。血は違えど、悩みは同じだ。
素直になれないから間違った行動を取る。俺だって周りに教えてもらうまで気づかなかった。
ならさ、俺が教えてやってもいいんじゃないか?
「私は……分かりません」
「俺はりりさにも教えられたよ。大事なのは気持ちだってね」
皮肉なもんだ。襲われてはじめて、体のつながりなんて二の次だって知るんだから。
おっといけない。お喋りが過ぎた。対決はもう始まっている。早く真純を探さなきゃ。
どこにいるか検討もつかないからがむしゃらに走り回るしかないな。体力には自信あんだ。
「真純さんは、旧体育科グラウンドの倉庫にいます。対決が終わるまで隠れていてもらうように、私がお願いしました」
言葉を背中で受け止めて俺は走る。走って、走って、走り続ける。
土埃を巻き上げる走りっぷりに体育科の連中が腰を抜かしていた。んなの知るか。
遅くなったけど伝えるんだ。気持ちの全てを。俺の、全てを。
結果がどうなったっていい。半端なまま終わらせるより何百倍も。
りりさに宣言したように、俺は俺を変えるんだ。
自分が望む青春を、自分が望む恋愛を、この手に掴むために。
待ってろよ、真純。思春期の男の子はしつこんだぜ?
☆ ☆ ☆
旧体育科のグラウンドの隅にある古ぼけた倉庫の前。錆びついた鉄扉に手をかけた。
内側からカギをかけているらしくて開かない。これが今の二人の距離、か。
「真純、いるんだろ」
「……近づかないでよ」
震えた小さな声に胸がえぐられる。拒絶の気持ちがダイレクトに伝わってきた。
昨日までの俺なら大人しく帰ってしまったのかもしれない。何もできないって飽きらめて。
今日の俺は違う。真正面から向き合うんだ。
「俺が、亜人間だからか?」
返事はない。聞いてくれれば十分。
「黙っていてごめん。会長の言ったことは本当なんだ。俺は、みんなと同じ人間じゃない」
一途も真純もお互いのことを俺に話そうとはしなかった。
それは本人から聞かなきゃ、本人が言わなきゃ伝わらないことだから。
俺は出遅れちまった。悪いのはりりさじゃなくて、臆病な自分なんだよ。
「口でいっても信じられないだろうから、証明する」
本当に伝えたいことは顔を見て言いたい。こんなボロボロな扉に阻まれてたまるか。
わずかにできた隙間に指を捻じ込んだ。ふんぬぅぅぅぅぅっ!
ぎぎ、ぎぎぎぎ。錆がこぼれて髪にかかった。南京錠でも使っているのか中々開かない。
「だらっしゃぁぁぁぁっ!」
でもな。本気を出した俺の敵じゃあない。両腕を左右に突き出すと南京錠が弾け飛んだ。
どんな筋肉自慢でも捻じ曲げられないモノを引き千切ってみせれば、誰だって分かるだろ?
埃が積もったマットの上に体育座りをしている真純がいた。意外と驚いてない。
また二人の距離が縮まる。後一歩、それだけで抱き合える距離に。
「真純が触れようとしなかったように、俺も触れようとしてなかった。見た目で非処女だって決めつけてたからなんだよ。怖くてできなかった。真純を傷つけるのが……っていうのは建前。ほんとは、誰より自分を傷つけたくなかった」
「近づか、ないでよ」
俺を見るのが耐えられないのか膝の間に顔を埋めてしまった。
言えば言うほど彼女を傷つけているんだろう。処女じゃないからお断りなんて言われて、嬉しいやつがどこにいるんだ。
それでも伝えるのをやめないぞ。最後のチャンスなんだから。
曝け出すんだ、素直に、全部を。
「気づくのが遅すぎたよな。素直になった気で、全然なれてなかった。嫌われることにビビって、真純を裏切っていたんだ。ごめん。でも俺は――俺は、真純が好きになったんだ」
勘違いするなよ。これは愛の告白じゃない。自分に言い聞かせる。
ビビってるわけでもないんだ。素直に、俺は自分の気持ちが分からない。
楽しい毎日を過ごせる友達として好きなのか。添い遂げたい異性として好きなのか。
分からないってことが分かってる。
顔をあげた真純の目は濡れていた。涙が頬を伝っていく。
「正直、どんな『好き』なのか自分でも分かってない。ただ、もっと一緒にいたいと思う。こんな形で終わるのはイヤだ。身勝手だって分かってる。それでも、伝えたかったんだ。……傷つけて、ごめん」
自分の気持ちを吐き出すことがようやくできた。体が軽くなった気がする。
あとは真純の気持ち次第だ。黙って見つめ合っていると、彼女の結ばれた口が解ける。
「由仁が何であっても、そんなの、関係ない」
ゆっくりと立ち上がった。半歩の距離で気持ちと気持ちが混ざり合う。
「私は、私のせいで由仁が苦しむのを見たくなかった。一緒にいても傷つくだけだって言われて、気づいたよ。私を避けていたんだって」
それに、とあの心惹かれる微笑みを浮かべながら目元を拭った。
「一途と多千夏ちゃんとふざけてるときの由仁、すごく楽しそうだった。自分が邪魔者に思えてきて……嫉妬していたのかも。会長に私が協力するのをやめれば、園芸部は助けるって言われたとき都合よく考えたの。私が犠牲になればみんな苦しまずに済むんだってさ」
「バカなこと言うなよ。これが、楽しそうに見えるか?」
「ううん。みんなを言い訳にして、逃げていただけなんだよね。私も自分を傷つけるのが怖かった。由仁のことが好きだから、拒絶されるのが、怖い」
結局、二人とも最後まで素直になれきれなかったんだな。
んで同じくらい自分の気持ちに素直になっちまってた。
相手を思えばこそ、自分を思う。自分を思えばこそ、相手を思う。
そうやってこんがらがってどっちも傷ついて苦しむ方法が一番だと勘違いしちまう。
恋って、きっと、ここから始まるんだ。
「俺らと――俺と、一緒にいるのはイヤ?」
「そんなわけないじゃん。私だってもっと一緒に、一緒にいたいよ」
だったら乗り越えるだけだ。自分の顔は見えないけど、生まれてから一番良い笑顔をしている自信がある。勇気をくれたのは真純だ。
「俺は自分の血から逃げるのをやめるよ。クソみたいなユニコーンの血なんかに負けない。真純が自分を変えたように、俺も変えてみせる。だから真純にも、ちょっとだけ力を貸して欲しい。これからも一緒に楽しくやってくために。今だけでいいんだ」
右手を差し出す。俺も真純も、理由は違っても相手に触れることを恐れ、避けてきた。
相手を傷つけたくない。自分が傷つきたくない。
でもさ、『お互いに』そう思ってるんなら一緒になれるはずだろ?
真純が小さく震える手を俺の手に重ねてくれた。
瞬間、体中に電流が走る。血が騒いだ。股間が疼く。そいつに触れるんじゃねえって。
うるさいんだよ! お前の言うことなんか聞いてたまるか!
「きゃっ――」
「五分だけ我慢してくれ」
有無を言わさず彼女の体を抱き寄せて『おんぶ』した。背中で味わう胸の感触が。
ほんとはカッコよくお姫様だっこしたかったんだけどね。
どうにもこうにも前はまずい。スラックスを突き破らんと股間がむくむく。
正直に言えばかなり危ういところだ。頭に血が昇ってぼんやりとする。獣の凶暴さがのたうちまわって苦しくて吐きそうだ。
それでも俺は真純を離さない。
彼女の手が俺の胸の前で繋がる。すげえ震えてる。恐怖が全身通して伝わるよ。
それでも真純は俺を離さない。
いいか、思春期の男女諸君。好きって気持ちは、なんだって越えられるんだよ!!
「行くぞ!」
「う、うんっ」
ぎゅっと重なり合う体と体。これが二人の距離。
血は沸騰寸前。頭は爆発寸前。長くは続きそうにない。
この一時の幸せを全身に刻んで走れ、長角由仁ッ。
☆ ☆ ☆
俺と真純は、間に合わなかった。
会場に着いたのは集計が終わったころ。
俺たちのブースは凄惨たる有様だった。あっちこっちに飛び散ってるカレーのルーに踏み潰されたキャロットケーキ。カウンターの後ろで背中合わせに崩れ落ちている二人。
「一途ッ、多千夏!」
びくんと跳ね起きた多千夏が、俺らの顔を見るなり泣き出した。
うわああんうわああんと大粒の涙を飛ばしている。そっと背中を撫でる一途。
「うぅぅ……私たち、できなかった。ごめんね、由仁くん、真純ちゃん……うわぁんっ」
「ちゃんと見つけたんだな、由仁。泣かしてねえだろうな」
強がりだった。鬼の目にも涙ならぬ一途の目にも涙だ。見せまいと気丈に振舞っている。
「ごめんなさい。私が、勝手なことをしたから」
つられて真純も泣き出してしまう。結果発表の声は上の空だった。圧倒的大差の敗北。
一回目の勝利が無駄になっちまったな。総合ポイントで料理部の勝利、廃部が決定した。
いっそう大きく泣き崩れる多千夏。今にも責任取って首を吊りそうな顔をする真純。
変な話、俺は嬉しかった。ここまで自分を見せ合いながら、戦えたことが。
生の感情に触れられたことが、嬉しかった。それだけでも価値がある。
「よく笑えるな、お前」
「いいんだよ。俺たちよくやっただろ? なーんもしない幽霊部員二人がこんなに成長しちゃってよ。このおかげで真純と知り合うこともできたんだし、悪くないじゃん」
「でもっ、でもぉ~、私たちの居場所……なくなっちゃったぁっ」
「部活がなくなったって死ぬわけじゃないんだ。いつでも俺の部屋に集まればいい。もちろん、真純もな? もう勝手にいなくなるなよ」
「……由仁」
笑っていられるのには理由がある。俺が文字通り身を捧げれば問題なし。
こんなこと話したら一途にはぶん殴られるだろうし、真純には嫌われちまいそうだ。
だから教えてやんない。素直になるのと全部話すのは別だぜ。
こいつらはすごく頑張ってくれた。一途はビッチにもみくちゃにされたのか、オールバックは崩れ、タキシードのボタンは全滅。多千夏のメイド服もあっちこっち綻んでるのが分かる。
余ったカレーを一口。やっぱうまい。料理を一人でやってくれたのは真純。
こっからは部長の仕事だ。部を、部員を守るために体張って何が悪い?
「片づけは俺がやっておくから、お前らは着替えて休め。真純、頼む」
「でも……」
「大丈夫。俺らは一緒にいられるよ。これからもな。さ、いったいった」
彼女の温もりがまだ俺を包み込んでいる。俺の温もりは残っているのだろうか?
震えが収まってないところを見るとまだ感じているのかもしれない。
もう真純もバカな真似はしないだろう。落ち込みっぱなしの二人を連れて遠ざかっていった。さてと、腕まくりをして散らばった皿を拾っていく。
あーあ、もったいねえ。こんなにこぼしちまって。ケーキは踏むもんじゃないぞ。
「残念、だったね、由仁くぅん」
「能木先輩、どうして?」
遠くまで転がっていたらしいケーキの残骸を集めながら能木先輩が近づいてきた。
この対決に関わるのは普通科生徒だけ。となると生徒会の役員としているのか。
「会長からの伝言だよ。明日の放課後、生徒会に来て欲しい」
なんならこの場で死刑宣告してもらってもよかったんだけどな。
ま、生徒会室のほうが何かと都合がいいか。
「ありがとうございます。先輩」
「やはり納得がいかないなぁ。直訴するしか」
「大丈夫です。最後まで自分で責任を取りますよ」
ガッツポーズを見せると能木先輩は優しく頷いてくれた。
代わりにとばかりに手を叩くとどこからともなく農業科の生徒たちが現れた。手にはゴミ袋やほうきを持っている。
「後片付けを手伝うな、とは言わないよなぁ、由仁くぅん」
「すいません。じゃあお願いできますか?」
「当たり前だぁろぅ。お前らぁ、気合入れてやれぇい!」
「「「おぅ!」」」
おかげで片付けはあっという間に終わった。
一途にも、多千夏にも、そして真純にも。俺の全てを伝えた以上怖いもんはない。
ヤってやるぜ。
☆ ☆ ☆
翌日の放課後。生徒会室の前で俺はスラックスの中身を確認した。
慌てて買った一枚のトランクス。勝負パンツは男の子にだってあるんだぜ?
こんこん、とノックをするが反応がない。ドアにカギはかかってなかった。
「長角由仁です。失礼します」
誰がいるとも限らないのでちゃんと挨拶をしてから入る。
りりさは窓際に立ってざあざあぶりの黒い空を眺めていた。俺の心模様が映ったみたいだ。
襟元を正し受け入れる準備を整える。男になれ由仁。今がその時だ。
「あの――」
「家庭部の廃部が決定しました。部長が辞めてしまっては、仕方ありませんね」
「へ?」
「それと一途さんが交際を申し出てきましたよ。代わりに園芸部を残して欲しいと」
「はあ!?」
「多千夏さんは入部届けを持ってきました。恐らく部員を捏造したのでしょう」
次から次と知らない事実を突きつけられてぽかーんとマヌケ面。
あいつら、俺がネットで床上手になる方法を検索している間になにやってんだ。
りりさは雨から俺に視線を移した。妙にすっきりした顔をしている。色気が、なかった。
「あなたは、自分を捧げることで廃部を止めようというのですね」
「バレてたか。まだ約束が続いているなら、どうかな?」
「お断りします」
「よしじゃあさっそく――ダメなの!?」
「ダメです。絶対にイヤです。死んでもヤりません」
豹変だった。あらゆる妨害工作をしてまで俺を手に入れようとしていた彼女が拒否?
となるとどうあがいても廃部になるのか!? 困るんだけど!
それにいざ拒まれるとすこーしだけ、ほんのすこーしだけ傷つくもんだね、はは……はぁ。
「生徒会の決定をお伝えします」
「ちょま」
「家庭部は部員0で廃部が決定。園芸部は今回の功績が認められ存続。以上です」
「俺はどうなってもいいから廃部だけは……え、存続? でも完璧に負けはずじゃ」
「負けたのは私のほうです。あなたは宣言した通り、血に抗いました。あんなにおっきくして、張り裂けそうなのを堪えて、彼女と触れ合った。正直、羨ましい」
み、見られてたのかよ。この人のネットワークは一途を遥かに上回ってんな。
なんとも素直には喜べない展開に頭をポリポリ。どうしよう。
「度重なる無礼、申し訳ありませんでした。許せないというのなら、あなたの気が済むまで私を好きにしてください」
わざとらしく笑ってみせているがその気がないのはビンビン伝わってきた。
せっかく用意した勝負パンツを使うのは先のことになりそうだ。
今のりりさは本当に清楚が形になったような雰囲気がある。こっちのほうが俺は好きだな。
「今回は遠慮しておくよ」
「ふふ、また振られてしまいましたね。けれど――いいえ、何でもありません」
話は終わりとばかりにりりさはまた窓の外を眺めだした。何も言うことはない。
黙って出て行く。去り際に彼女の素直な気持ちが落ちる音を聞いた。
「私もいつか、普通の恋ができるのでしょうか」
何も言わずに、俺は俺らの居場所に帰る。
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