骨仕事の後日

 その後、自分たちは地響きを調査しにきたという部隊に救助される事となった。


 事と次第の内容が内容だったのだが、首謀者と思われる人物たちがまるで解っていたかの様に一斉に検挙される形となり、一部の貴族はお家取り潰しに、関わった平民に関してもひどいものでは労働奴隷としての罰を受ける形となっていた。



「泳がせていた甲斐があったというものだ」

「しかり、しかり」


 とは、ライン侯の言。


 どうやら、ここまでライン侯の作戦であったみたいであり、両陣営の不穏分子をあぶりだす為に一芝居をうつ事にしたらしい。


 そういった場に、情報を集めるべく草も放ってもいたそうだ。

 となりにいる飄々爺みたいな人らしい。



 あと、ついでの公爵のご子息に、痛いお灸をすえるという目的もあったそうで、剣才さんがその役目という形だったそうだ。

 それにしても、剣才さん、本気で殺しに来てたんじゃないんですかね・・・


「殺すつもりでやらんと、お灸にはならんじゃろ。邪魔者は排除・・・しても良いともいわれとったしのぅ。ま、ワシも途中からちぃとばかし本気で相手しておったがな!」



 と続けて豪快に笑っているのは剣才さん談。

 聞いちゃいけない事を聞いてしまった気分です・・・



 にしても、そういった情報が一切こちらには流れて来ていない状況はどうなんだと思ったが、知られてしまって下手な芝居を打たれるよりはという事らしかった。


 その内容に関しては、納得はしたくないが、理解はした。


 "天災"さんにそんな芸当ができるかと問われれば、"天災"を知っている人物はみな口をそろえて「無理」と答えるだろうし。



「まぁ、お前の防御魔法に関しては、融通が利きやすいかったからな、あと"天災"がいれば何とかなる?・・・・・と副長とも共にそう判断したしな」


 とは、団長のお言葉


 そんなさわやかな笑顔で言われても、こちらとしてはもうあんな体験はコリゴリです・・・





 そうして、この事件の幕は、一応の結果を残して閉じる形にはなった。




 のだが・・・



**********



 あれから、自分は休暇願を出した。


 報酬と慰労を兼ねてという事で、前回の騒動を盾に長期休暇として提出してみたのだが、それが慰安地を聞かれただけで、あっさりと受諾された事に拍子抜けした。



 いつもなら、何かしらの理由を付けて、長期休暇など取らせてはくれないのだが・・・



 まぁ、そこはいい。

 ただ、この休暇願というのは建前で、実際には次の職場を探す旅というものである。


 これ以上この傭兵団に居たら、体がいくらあっても足りない、足りなさすぎる、もういやだ!常識カムバックしてほしい!


 そう、こうなれば未知なる食材を使った屋台など・・・そうだ、新たに交易がはじまったという東へ向かうに限る!!そうだ!東へいこう!



 と、意気揚々と大門から出た途端、自分にかかってきた声で、気分が一気に消え失せた。



「飯屋!おそかったな!いくぞ!」

「天災・・・さん?なんで、あなたがいるんですか?それに、ナニしれっとついてこようとしてるんですか?」


 うん、何でいるんですかね?しかも旅支度まで終わらせた格好で


「休みもらった!」



 ああ、そうなのね・・・って、いやいやいやいや、なんで?

 そんな困惑をしていた最中に




「そうじゃそうじゃ、まっとったんじゃぞ?はよせんか!」



 まるで追撃してくるかの様に、こんどは背後から声がしてくる



「えっ?なんで、剣才さんまでいるんですか!?」

「はっ?ワシがおったらいかんのか?」



 と、その剣才さんも、シレッっと旅荷物を持っていたりする



「って、剣才さんも来るんですか!?」

「あ?こんな面白そうなモノ(大娘)がおるのに、ついていかんでどうする?」

「いやいやいや、面白そうだからでこられなくて結構ですよ!?ほんとに!!」



 剣才さんは、そんな自分とのやり取りを無視するかの様に、今度は天災さんへと向き直り



「どうじゃ大娘、次の宿場街まで先にどちらが付くか勝負しないか?」

「めんどい」

「なら、晩飯に肉おごったるわい(飯屋がな)」

「のった!!」

「ちょっとまって!最後の方小さい声で自分が入ってるんですけど!?」


 というか、人の話きいて?ねぇ、聞いて?って、



「あと、大娘はワシに勝ったんじゃ、飯屋を抱えるハンデがあってもよいじゃろ?」

「わかった!!」



 急にフワッと体が浮いたかたと思うと、いつのまにやら天災さんにかかえこまれて・・・



「ってぇ、へぇっ!?」

「しゅっぱーつ!」

「おおー!」

「おおー!じゃないよぉぉ、って、はやっはや・・・たす・・・たすけ・・・だれか助けてぇぇぇ」




 澄んだ青空の下、入場する人たちの視線を浴びながら、大柄な女性に担がれた人と初老の老人が、砂煙をあげながら、"南に向かって"駆け去っていった。





「だから、ひぃがぁしぃだぁぁぁってぇぇぇぇ!!ひがしぃ!!!!あとぉぉぉ、降ろしてくれぇぇぇぇぇ!!!!」





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