巻込まれるは波乱事
"天災"さんがわざわざ「敵」と称した。
まぁ、"天災"さんにしてみれば、普通にそう認識した事を口にしただけだとは思うが、直観でそう認識する対象となる。
つまりは「強い相手」という意味である。
そう認識された相手は、先ほど"天災"さんが一言も「敵」と呼称はしなかったドラゴン種に対し、その目の前で起きた信じたくもない光景、ドラゴンの首が一刀の元に胴から切り落とされるという、とんでもな状況が行われれば、それを行った人物に対して納得もしてしまった。
ドラゴン種すらも単騎で倒す者・・・
そんな者がこの世界に存在していると耳にはしていたが、まさか目の前で繰り広げられた人がその人物だとは思いもよらない。
思いたくもなかったが、その姿をはっきりと見てしまった後には、納得という言葉しか思い浮かばない。
なにせ、こちらに歩いてくる人物からは、初老を通り越して老人といってもいいぐらいの見た目のはずなのに、その長く伸びた鬚と長い眉毛の下からは、何物をも見透かす様な鋭い眼光をしていた。
そう、まるでこちらをそのするどい眼光でその場から動けなくするほどに
そんな中、"天災"さんは自分たちの前に、その手に持った大剣を構えることもなく
「そんな嬢ちゃんが相手とはな、ワシも耄碌扱いされたもんだ」
見た目老齢、今にも倒れそうという見た目にも関わらず、その発せられた言の葉にはしっかりとした芯と、するどい眼光からはさらなる殺気とも思われる雰囲気を出していた。
殺気といわれる雰囲気といったが、その人物から放たれるという物でもなく、あくまでも眼光からという物であり、それ以外がまるで「存在がそこにいる」のが「普通」という雰囲気の方が正しいのかもしれない。
そんな人物が、こちらをにらみをつけている状態である、動こうに動けない・・・視線も外す事すら許されない。そう感覚が危険を発し続けていた。
一体どれほどの人物なのか・・・
「おい、あいつは剣才様じゃないか・・・」
「間違いない・・・剣聖様だ・・・」
と、偉い二人が何か震える声で、お互いがお互いその存在を確認しあっていた。
剣才?剣聖?聞いたことはあることはあるが・・・生きていたらもう隠居するレベル以上の年齢ではなかったのでは?
ただ、その人物に剣を扱わせれば、誰も相手にならないとかいう存在だとか何とかいう話があったりし・・・
いやいやいや、一番厄介なことは、なぜそういう人物がこのダンジョンに来ているかだ。
単純に考えてみれば、救援に来た。
一番可能性が高いのはその線だろう。
だが、その相手が醸し出す雰囲気はそうでは無いという事を語っており、二人ともその点は理解はしたのか、脂汗を流し始めていた。
つまり、真逆の意味。
消しに来たという。
ダンジョン内部において、遺体はすぐに魔物たちによって綺麗になくなってしまう。
そういうダンジョンの使い方があるというのも、仕事柄知ってはいる。知ってはいるが・・・現状では納得したくはない。
一方、視界に入っている"天災"さんは・・・ えっ?
なにトコトコと相手に歩いて行っているんですか!?
と思えば、その相手を手に持った得物で壁方向へと吹っ飛ばしていた。
「えっ?」
「はぁ?」
「へっ?」
初撃ともいえる一撃が、あまりにもゆっくりと相手の胴体へとあたり、まるで「よいしょ」という感じで横に吹き飛ばしている"天災"さんの行動に、三者三様に変な声が漏れざるを得なかった。
相手は"剣聖"とも呼ばれている剣の神様的な相手。
そんな剣の腕では大陸一や今世一ともいえる相手に、まるで剣を習い始めたといえる児戯以下にしか見えない速度の剣が、相手の胴体にあたり吹き飛ばしていたのだから。
そんな"天災"さんが行った行為によって、驚き以上に何が起こったのか、何をしたのか、いろいろな感情が少しは状況を見まわせる事にはなった。
が、それでも"天災"さんは、またトコトコと歩いて行っては、こんどはゆっくりと上から下へとその大剣を振り下ろ・・・ふりおろすというか、重力に引かれるのを阻止しながら徐々に下げているという感じというか・・・
あんなゆっくりなのが当たる訳が・・・
って、え?気付いていない?
そんな行動にしか見えなかったが、それが当たるぎりぎりまで、相手は何もしていなかった。
まるで、当たる事を受け入れたみたいな・・・?
しかし、当たるという間際、天災が振り下ろしてきた大剣を自身の剣で、まるで咄嗟という言葉が当てはまる動作で受け流して距離をとっていた。
ギリギリの間で受け流す事に成功した風に見えたが、その免れた"天災"さんの一撃はゆっくりと床に当たったと思えば、大きな衝撃音とともに石床が凹んだ
あ、石床って凹む物なんだ・・・
・・・いやいやいやいや、普通は無いな。うん、無い。
そんな状況ののち、お互いが一定の距離に離れて、また同じようにトコトコと歩いて行っては、ゆっくりと得物を振り下ろし、再びギリギリで躱しては、凹みを作り上げていた。
その後、ようやく一合、二合と剣檄として対応している、一般的な受け対応をする様にもなったが、相手の剣は受けるたびに見るからに変な風に曲がっていったりする。
というか、縦方向に曲がるって・・・どうやるの・・・?
「なんじゃ!?おぬし!一体なにモンじゃ!?」
「天才!」
「はぁ?」
「天才!!」
「どこがじゃ!!そんなものは出鱈目というモノじゃ!!」
「じゃぁ、デタラメの天才!」
「はぁ?!お主は馬鹿か?」
「馬鹿じゃない!天才!」
その打ち合いの最中には、掛け合いみたいな話し声が聞こえてくるが、何かもうどうでもよい雰囲気になってるし・・・
たぶん、"天災"さんは意味わかってないと思うな・・・うん
「すげぇ・・・」
「剣才様を相手に押してる・・・」
一方では、そんな状況をて緊張がほぐれたのか、二人ともようやく平静を保てれる状況には回復してもらったみたいだが・・・
というか、どうなってるのかだんだん自分じゃ目でおえませんし、当たりの石床や石壁に凹みが多発しているという・・・
「とりあえず、彼女にここは任せておくとして・・・邪魔にならないように、私たちは出口通路の方に少しづつ移動しておきませんか・・・ね?」
そう説明したら、二人はまったく同じ動作で首を縦に振ってくれた。
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