次から次へと問題事

 二人のお偉い様から質問受けという苦を覚悟を決めて受けようとした時、急にあたりに静けさが広がった。

 それならばまだしも、静かになったと共に急に薄暗くなり・・・



 えっ?何がおこって・・・?



 周囲を見渡すも薄暗く光る石壁、冷たい感触を伝えてくる石床、そして少し湿った空気と独特な臭いが鼻を突く・・・

 この雰囲気で思い当たるのは・・・まさか・・・ダンジョン?



 なんで?



 その周囲の変化を察したのか、先ほどまでこちらに詰め寄ろうとしていたお偉い方の二人ともが詰め寄るのもやめ、あたりへと視線を巡らせていた。


 ただ、近くにいたとある人物は、満面の笑顔で「ご飯ある~ご飯ある~」と呑気にも独特なフレーズで口ずさんでいたりしていたが、そこは聞かなかったことにしておこうかな・・・



「おい、ここは一体どこだ?」

「先ほどの場所とは違うぞ?」



 周囲の変化を理解したお偉い様であるお二人は、さっそくこちらへ問いただしてきたのだが、こちらも現在の状況と内容がさっぱりわかっていない…とりあえずは



「たぶん・・・どこかのダンジョンじゃないかなぁと・・・」



 そう、この薄暗いくも不自然な鈍く光る明るさを壁や天井から照らし出されている存在があり、そして、独特なにおいと湿度がある場所。


 自分もとある依頼でそういった場所に向かう事もあったのだが、この場所とはまったく別の物な場所でもあったが雰囲気こそ似てはいたのだ。


 根本的な雰囲気というのはやはりどのダンジョンでも変わらないものなのか、肌で感じる内容から、直感的にそういう場所であると感じてしまった。



「ダ、ダンジョンだと!」

「ふざけるな!貴様!なぜここへ連れ出した!!」

「なに?貴様が俺様をここに連れ出したのか?!」

「違います!知りません!!自分も一緒に連れてこられた状況ですよ!」

「じゃぁいったい誰が?!」


 と、いきなり犯人扱いされるのは思いもよらなかったが、断固として違うことを伝える、今度は二人そろって"天災"さんへにらみつかるかの様な視線を向けるのだが、その"天災"さんは「ん?」という呑気な回答その2を返してきてくれた為に、



「ないな」

「ああ、アレはないな」



 二人とも意見が一致したりしています。


 ああ、うん、もちろんその意見には自分も賛同致しますよ?

 と、周囲を確認していたら、ふと足元には小さめの真っ白な石が二つ転がっていた。その二つの白い石を拾い上げ



「たぶん、これでしょう・・・かね?」

「なんだそれは?」

「転移系の魔晶石という所じゃないかと」

「それを貴様が準備していたんだろ!?」

「ふん、それはないな。転送系の魔晶石を、貧相なこいつが買える訳ないだろ。」

「なんだと・・・?・・・確かに、見るからに貧相な貴様がそれを手に入れる事はないな」



 そういいながら、こちらを上から下へ、下から上へと下賤なモノを見る視線でこちらを見定め、そう結論を出していた。


 ・・・このお二人とも、何かしらディスってきてませんかね・・・もうほっときたくなってくるんですけど・・・




********

 準備がおろそかになっている状態でダンジョン内部にいる、このままでは野垂れ死にの未来しかない状況である。

 これをどうかしなければならないと思い、まずは出口を探そうと提案し了承を得てから移動してはみたのだが・・・



「おい、貴様、腹が減ったぞ、食い物をよこせ」

「私が先だ、食い物をよこせ」

「持ってませんよ」

「なんだと?私に逆らう気か?」

「そうだ、逆らうならば考えがあるぞ!」


「普通に調べてもらっても構いませんが、その様な準備もなく突然ダンジョンに飛ばされている状況で、持っていると思いますか?」



「私は、腹が減ったといっている。」

「私もだ、聞こえなかったのか?」

「ならば、用意するのが平民の仕事だろうが!」

「早くしろ!!」



 これである。

 無視したいのだが、無視すると今度は無視した事が罪になるとか何とか言ってこられて無視すらできない。



 ほんとこれ、どうしたらいいんですかね・・・



 一方の"天災"さんは、こちらを襲おうとしてくる魔物を何食わぬ顔で素手で仕留めていってます。


 しかも一撃で。



 こういうときの"天災"さんはすごく頼りになる・・・のだが、



「なんだ、ダンジョンといっても弱い魔物しか出てこないではないか、教わった内容とは全く異なるな」

「これならば、俺様ひとりでも十分じゃないか?」



 と、何か"勘違い"されたお偉いお二方が、そういう感想を述べたあとに先ほどの腹が減ったである。

 とりあえず、勝手な行動だけは避けてほしいので釘をさしてはみるが


「彼女が特別なだけで、普通の人なら2,3人でうまく立ち回らないと対処できない相手ですよ?」

「そんなはずはなかろう、見てみろ、魔物が数体いるにもかかわらず、一撃で2体以上は仕留めているではないか」

「それほどに弱い魔物しかいないのがダンジョンなのだろ?」

「いや、ここと他のダンジョンを比べては」


「ふむ、そこは貧民の言うとおりだな。このダンジョンだけが特別なのかもしれんな」

「たしかにな」


 まぁ、"天災"さんが頼りになるのは良いのだが、二人には彼女の実力が計り知れていない為に、だんだんと増長的な言動があると不安になってくる材料が増えてくる。


 とりあえず、不安材料を少なくするための説得をしなければ、こちらのおなかが痛い・・・



「そ、それに、お手を煩わせる訳にもいかないかと」


 と、"天災"さんの姿を見せてみると


「ん?どうした?飯屋」



 にっこにこな笑顔なんですが、その姿はいろんな青や赤や緑に黄と、魔物の返り血でカラフリティな色合いをしているんですけどね・・・



「あんな風になられたいのならば、お止めはしませんが・・・」

「う、うむ・・・こういうのは平民の仕事だったな」

「そ、そうだな、平民の仕事を奪うのはよくないな」


 手持無沙汰から戦ってやろうとか言われかけたが、返り血まみれの"天災"さんを指さして、汚れ役は私たちにと言っておいたから、一応は納得してはもらったが・・・


 とりあえず前に出ることをやめてもらう説得は成功した・・・はず。

 はぁ・・・物分かりがいいのか、バカなのかはっきりしてほしい・・・




 とりあえず、このお荷物の空腹問題に対しては少しおとなしくなってもらおうかと、"天災"さんが処理した魔物の一つを捌いて火の魔法でとりあえず熱した石で焼いた簡易的な魔物肉のステーキを作っては見たが、香辛料も何もない、ただ「焼いただけ」というお粗末な代物である。


 ただ、それだけじゃ何ともと思い、火だねとしていた樹木系魔物の香りがよかった所を利用して軽く燻してみたりする。


 香辛料の変わりなのだが、うまくいけば・・・


 煙たい事この上ないし、臭いつられてやってくる魔物もいたりしたが、近寄ると天災さんが屠るので特に問題が発生する事にはならないだろう。たぶん。


 そろそろかと、端を切りとってみて、試食してみるも、まぁ、ないよりはマシ程度といったところで、串刺しのまま二人へと差し出す。



「今はこれぐらいしか用意できません。これ以上の物は出せれないと思ってください。」



 そうして出来上がった、魔物肉のステーキの燻製もどきという物だった。

 二人は手に取って恐る恐る口にすると・・・



「まずい」

「そして、臭い」



 だよねぇ・・・日ごろ美味しい物を食してるなら、この独特の臭みがとり切れていない魔物肉なんて絶対に無理だと思うよ


 だが、こちらのもう一つ別の予想した通りの行動をしている人が一人



「うまっ、うまっ」



 と、数本の串焼き状態のをほおばっている"天災"さんがいたりする。

 食べながら、食べ終わった串焼きの串としていた木材を投げ飛ばしては、近づいてくる魔物を仕留めていたりするのも・・・うん、もう慣れてきた。



「お前、これがうまいというのか・・・」

「ん?うまいぞ!飯屋が作ってくれる肉料理は格別だぞ!」

「これが・・・か・・・?」



 二人して、ステーキ肉が刺さっている串焼きを見ながら、眉をしかめていたいたりする。


 そんな二人とは裏腹に、自分の分を食べ終わった"天災"さんは、何か物足りないという雰囲気を醸し出しながら、二人のステーキ肉に視線を固定していたりする。

 しかも涎が少し垂れかかっていたりするとか・・・いやいや、それはちょっとまずいでしょ・・・

 二人はその視線に気づいたのか・・・



「お・・・女、これを施してやるから、しっかり俺様のために働けよ。俺様は腹が減っていないからな」

「そ、そうだ、俺様もだ。貴様にくれてやろう。しっかり働け」

「本当か!」



 と、二人から渡されたステーキ肉の串刺しを奪うようにして頬張っていた。




*********

 それからしばらくは通路と思われる場所を歩き続ける。


 分岐やらなんやらと繰り返しながらも歩を進める。道中、出てくる魔物は"天災"さんが一撃で屠っていき、とりあえずは順調という恰好かなぁと思われた時、少し広い広間へと出てきた。



 今迄、休憩という恰好としていた小部屋とは異なり、大広間というべきだろうか。

 その広さといえば、大きな建物という物以上といったところだが、その中央には人の倍以上ともいえる何かが存在している。



 その恰好は、翼をもち、鋭い牙と爪をもち、なおかつ鱗に覆われてもいた。



 その存在を自分は知っている。

 魔物の中でも、最低でも一個中隊がうまく立ち回らなければ対処できないといわれる存在。



 そう、ドラゴン種といわれる存在である。



 ダンジョン内で、こういう存在が現れることは起こりうる事でもあるのだが、問題は連れ立っている二人の存在になる。


 ドラゴン種の攻撃というのは、範囲的な攻撃というものが往々にして行われるものである。

 つまり、周囲被害が一番の厄介なものであり、自分ひとりだけならば何とかなるかもしれないが、お荷物となるものが二つ存在する。


 戦術的なお話をいうならば、現状の状況から言ってしまえばドラゴン種と正面向かっての戦闘はやめるべきである。


 そう判断し、気づかれる前に退こうと思った矢先に、相手ドラゴンはこちらを確認したのか、ひと吠えし威嚇してくる。



 そんな咆哮を聞きながら、自分の耳に聞こえてい来たものは・・・



「ほぅ、ドラゴンというものを始めてみるが、なかなかに面白そうだな」

「そうだな、ドラゴンを倒したとなれば、俺様の方が格上となるのは自明の理だな」



 と、二者二様の態度で、あぁ、何かすんごく勘違いしてくれるお偉い様二人が暴走しかけてる・・・



 ええ、あの咆哮聞いてそれなんですか・・・



 まさか、今迄の敵が弱かったと思われたのか、それとも自分が強いと思ったのか、なんか倒すこと前提となっていますけれど・・・どうしよう・・・


 そう考えを巡らせていると、"天災"さんは今迄使わなかった背中の得物を持ち出した。


 "天災"さんでもドラゴン種が相手になると、得物を抜かなければならない存在なんだろうと思い、その視線先を・・・あれ?ドラゴン種に対して視線・・・あれ?視線の先がちょっと違う?


 と、その視線の先をたどったとき、「邪魔じゃ」という声が微かに聞こえたとともに、ドラゴンの首だけがゆっくりと地面へと落ちていった。



 信じられないという光景が目の前で繰り広げられている中、





「敵・・・かな?」





 "天災"さんだけは、そう一言を発しては、背中の大剣を持ち出していた。




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