第34話 お得なニュースの結果

良いニュースが発表されたのに値上がりしなかった具体例がある。


携帯電話会社としても有名なソフトバンクという会社がある。売上高も数兆円という知らない人はほとんどいない大企業だ。

そこの社長が自社株買いをすると発表した。7ヶ月程の間に1200億円を使って自社の株を買うという。


自社株買いとは文字通り自分の会社の株を買うことだ。

なんでそんなことをするのかといえば、買い戻す形になって市場に出回っている株数が減る。

その為一株当たりの価値が高まり株主が恩恵を受ける。

会社側にとっても配当金を渡す相手が減る。

株主にとっても会社側にとっても様々なメリットがあるので、利益の使い道として自社株買いが行われるのだ。


この情報をニュースで知った時「1200億円使って株を買うって、株価がすごい値上がるじゃん」と思ってみた。

どんな高値になっても買うってことでしょと。


もちろんそのような値を釣り上げることを防止するためのルールがあって、安易に値上がるわけではなかった。

例えば『その日の高値を超える価格での指値注文ができない』などがある。

他にもあるらしいのだが、なんだか難しくてよく分からなかった。


とりあえず一株あたりの価値が上がるわけだから当然値上がるでしょ。

必ず買われることが分かっているのだから値下がりは起きにくいでしょ。

これだけ分かれば十分と思ってしまう安直な私である。

経営が怪しい会社であれば違うだろうが、ソフトバンクのような大企業で予想外のことはまず起こらないだろう。

99%儲かる株だ。


早速購入してみようと思ってソフトバンクの株価を調べてみた。

ニュース発表当時の株価は7140円であった。単元株数が100株なので71万4千円かかることになる。

庶民にはなかなかの高価な買い物である。

10年分のチャートを見てみると、2千円~3千円の間を上下している期間が長い。一株の価値を示すBPSも2400円程であり、企業経営が好調という理由はあるが7140円は相場以上の高値に思われた。

さてどうするか迷う。

確実に儲かるだろうが、相場以上の高い買い物をするかだ。


株取引で稼ぐような人は、高値だろうが安値だろうが関係なく、現在の株価より高くなるかどうかが判断材料なのだろう。

そして今回のソフトバンクはまさにドル箱のような存在なのだ。

ただ私のような安くなっている物を買うというタイプからすると、手を出しにくい案件となる。

すごく悩んだ結果買うのを止めておいた。

値段が高いというのもあるし、もし値下がってしまったときに儲けたいという欲だけで買ってしまったことを後悔しそうだからだ。


買いはしなかったが気になるので株価をチェックした結果、予想通り前日7140円だった株価が1日で7400円と260円上がった。

更に翌日には7608円と208円上がった。

買っていれば二日で4万6千円儲かった。

きっとこの後も値上がることだろう。

それは分かっていても、乗り遅れた感があり、少し高くなったものを今更買うのもちょっと悔しい。

今後も買わずに株価だけをチェックして悔しがることにしようと思った。


ところが数週間後は6400円に値下がり、1ヶ月後には5370円までになった。

ちょうど発生した世界同時株安の影響を受けた理由もある。それ以上に子会社の経営が悪いと見られたようで、そこの経営が改善するまでは価値が薄いと市場が判断したようだ。


良いニュースの期待感から一時は値上がったが結局は下がってしまった。

飛びつくのが危険だと改めて思い知らされた。

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