63:表紙詐欺で悲しみを背負う者たち

 前回、原画家やメーカーへの呪詛を吐き散らしたが、今回は原画家が被る被害の話をしていきたい。

 もっとも俺は原画家としてゲーム制作に関わったことはないから、あくまでもライター目線での話になってしまうことをご了承いただきたい。


 質問もいくつかいただいております、ありがとうございます。

 必ず回答いたしますのでしばしお待ちください。


 さて。

 みなさんは、こんな経験をしたことがないだろうか。


 表紙の絵がドチャシコで(これは期待できるぞ……!)とワクワクしながらエロ漫画を買ったら、作画がガタガタでまったく抜けなかった。――なんて経験を。


 いわゆる表紙詐欺という奴だが、なぜこんなことが起こるのか。

 わざわざ大仰に語るまでもないが、塗りの技術が高ければちょっとアレな線画でも、めちゃくちゃ魅力的な絵に仕上がるのだ。


 エロ漫画の表紙は、作者ではなく外注に頼んで塗ってもらうケースも少なくない。

 外注が存分に腕を振るった結果、表紙の魅力が爆発してしまい、本来の著者の絵との乖離が発生してしまった。というわけだ。


 これはエロゲでもたびたび起こっていて、なんかパッとしない絵だなぁと原画家を見てみたら、えっこれあの人だったの!? なんてびっくりしたことがある人も、それなりにいるんじゃないだろうか。


 つまり、塗りによって自分の絵の魅力を引き出してもらえることもあれば、逆に台無しにされることもありうるわけだ。


 だいたいのメーカーは自分たちの色を残しつつも「その原画家にあう塗り」を模索し、原画家自身の意見を取り入れながら仕上げていく。

 しかし技術的に未熟であったり、外注費をケチッているようなメーカーだと、そもそも模索できるほどの幅がないし、原画家の希望を実現できる腕もない。そして、メリハリの乏しいべたっとした塗りになる。


 名の売れた原画家なら、塗りの技術が低いメーカーとは仕事をしないだろう。

 名の売れた原画家でも仕事を選ばない人はいるが、既に確かな実績があるので、ひどい仕上がりになったとしても「塗りが悪いよこれは……」と、ほとんどの人がそう思うだろう。


 一番被害を被るのは、まだまだ実績の乏しい駆け出しの原画家だろう。

 線画段階だとめちゃくちゃ可愛いのに塗りで台無しにされてしまうと、「いまいちな原画家」というイメージをもたれかねない。

 そうなってしまうと、次の仕事に繋がらない。


 ユーザーに限らずクライアント側にどういう印象をもたれるかもかなり大事で、ライターでも「特に目立った実績はない以前に評判はぶっちゃけ悪い方なのに、大手と仕事した(以前大手に勤めていた)から、できる人なんだろうというイメージをもたれて依頼が途切れない人」というのがいる。

 これはパッと見で判断しづらい文章を扱うライターだからこそ起こる現象ではあり、原画家・イラストレーターはツイッターやPixivなどに自分の本来の絵を公開することで正当な評価を受けることはできる。

 しかし、第一印象を覆さない頑固な人は少なからずいるから、誰かのせいでクオリティを落とされた絵なんて公開しない方がいいに決まっている。


 もし「エロゲで仕事したいなー」と思っているイラストレーターがいて、どこかのメーカーから依頼が来たのならば、承諾する前に「どれくらい塗れるメーカーなのか」を確認しておいた方がいい。

 やばいなと思ったら、断った方がいい。


 あとメーカーによっては、線画を勝手にいじることがある。

 原画家がやめてね、と言っても、勝手に手を加える奴がいる。


 以前、メーカーからチェック用に受け取った線画に違和感を覚え、原画家と親しい間柄だったので直接確認を取ってみたところ、妙な修正が入れられていることが発覚した。

 身体の一部分の線が不自然に太くて、「あの人らしくないな……」と思って気づいたわけだが、そんなものは序の口で、目の位置が微妙にずらされていたり、頭のサイズが変わっていたり、こだわって描いた箇所――たとえばむっちりとした太ももとかを細めに修正されていたり、などなど、がっつりとした修正を原画家の許可無く、ほぼ全線画に入れていた。

 当然揉めに揉めた。

 以前、テキストを勝手にいじられることがあると話したが、イラストでもそういったことは起こりうるのだ。


 釘を刺してもやる奴はやるので防ぎようがないが、仕上がった自分の絵を見て「あれ?」と思ったときは、我慢せずに言った方がいい。

 メーカーの言い分としては「パース/デッサンが狂っていたからなおした」というのが常套句だが、そういった狂いが個性としてファンに認識されていることもあるし、実際に味わい深くなっていたりするから、「良い感じに直してくれたうれし~」なんて思わない限りは、絶対に苦情をいれた方がいい。


 前回話したとおり、替えがききやすいライターと違って原画家に仕事を降りられると非常に厄介なことになるから、だいたいはメーカー側が折れる。

 たとえ新人でも、原画家は強気にいける。


 とはいえ、先述したとおり原画家は優遇されているというのは底辺ライター目線の印象であるから、実際は原画家ならではの苦労も多いことだろう。

 なにか理不尽な目にあったときは、「お前、俺の絵で売れてんのわかってんのか?」くらいに強気に出てもいいんじゃないだろうか。

 自分の絵が望まぬ形で世に出てしまったら、その作品が売れようが不本意な結果になるだろうから、原画家が絵の出来にこだわるのは当然だし、ときには多少わがままになってしまうのも仕方がないのかもしれない。


 でも自分の絵のクオリティのためにシナリオを犠牲にしていいというわけではないから、できたらライターの都合も考えてねっ!

 仲良く仕事しようねっ!

 ねっ!

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