55:収録台本の作り方

 いくつか質問をいただいておりますが、そろそろそれ以外のことも書いておこうと思い立ちまして、次回以降にしっかり返答いたしますので少々お待ちください。


 愚痴であったりネガティブな話ばかりしている俺だが、たまにはためになる話もしてみたい。

 以前シナリオライティングのノウハウ的なことを話してみたりもしたが、売れない俺がそんな話をしたところであまり参考にならない。ただの自己満足だ。

 というわけで、今回は俺の実力に関係なく話せる、「台本の作り方」について話していこう。


 知り合いのグラフィッカーやイラストレーターから、「同人で声優に収録を頼みたいのだが台本の作り方がわからない、教えてくれないか」なんて相談をたまに受けることがある。

 ふと思い返してみると、ちゃんとしたメーカーでも台本を雑に作っていたりするので、もしかしたらノウハウがあまり知られていないのでは? と思ったわけだ。

 以前軽く触れはしたが、もっと詳しく説明していこう。


 極論、シナリオテキストを印刷するだけで、台本として機能はする。しかし、当然ながらそれではあまりにも読みにくい。

 台本チェック時に自分のキャラのセリフを探すという無駄な作業を強いることになってしまうし、収録当日もエンジニアがセリフを追えなくなってしまったり、飛ばしてしまったのに誰も気がつかなかったりと、大混乱になるだろう。


 なので、台本チェックと収録の負担を少しでも減らすために、事前に担当してもらうキャラのセリフを太字にしたり色を変えたりして、見やすくしておく必要がある。

 これだけやっておけば、台本として最低限の出来にはなる。


 メーカーによっては、印刷費を節約するために地の文もすべて省いてセリフのみをピックアップしてページ数を圧縮する場合もあるが、それをやるとキャラクターの心情やシーンの雰囲気などがわかりづらくなるため、声優さんから苦情が出ることもある。苦情はなくとも、内心(わかりづらいなぁ……)と思っていて、飲みの席で愚痴がこぼれたりする。

 できる限り地の文は残しつつ台本は作った方がいいだろう。

 もちろん、担当キャラが登場しないシーンはバッサリ切ってしまってもいい。


 ただし、これは「声優が一人で収録する」場合のみで、たとえばボイスドラマなどで複数人同時に録る場合は、各キャラクターのセリフをピックアップしたりはせず、全員に同じ台本を渡すことになる。


 次にやっておきたいことは、セリフに番号を振っておくことだ。

 ゲームの場合はスクリプトで音声データを指定するだろうから、事前にその指定を打ち込んだ上で台本化することが望ましい。

 ゲームではなくボイスドラマなどの音声作品でも、A001、A002、などの通し番号を振っておくといい。

 番号を振ってなくても収録自体はなんら問題ないのだが、リテイクのときにちょっとめんどくさくなる。

 気になるセリフがあったとき、番号がないと「何ページの真ん中あたりのセリフの二行目の部分」と、説明が長たらしくなってしまう。番号があれば「何ページの音声番号何番」とスムーズにわかりやすく伝えられる。

 些細なことであるが、番号があるかないかで収録の快適さが全然違うから、ぜひ振っておくことをおすすめする。


 あともう一つ、見落とされがちだがもっとも大事なことがある。

 ページまたぎをしないことだ。


 ページまたぎとは、ページの最後のセリフが次のページまでまたいで続いてしまうことを指す。

 実例を出すと、


ヒロイン

「おはよう。ちゃんと宿題はやってきた? 忘れても写させて


(ここで改ページ)


あげないからねっ」


こんな感じになる。

 なぜセリフがページをまたいではいけないのか。

 理由は、「セリフを喋っている間にページをめくれないから」である。

 その理由はもちろん、「喋っている間にページをめくるとその音が入ってしまうから」である。

 だからページまたぎをしているセリフがあったら、事前にめくらなくてもいい状態にした上でそのセリフを収録しなくてはいけない。

 読んでいる間にページまたぎをしていることに気がついた場合、最悪一旦止めることになってしまう。どうあっても声優さんに無用な負担をかけてしまうわけだ。

 意外とページまたぎをしてしまっているメーカーは多くて、そこそこ有名なメーカーでもやらかしていたりする。


 先ほど「複数人同時に収録するときは同じ台本を渡す」と述べたが、ページをめくるタイミングを揃えるため、という理由も含んでいて、それくらい収録中は雑音に敏感になる。


 もちろんページまたぎをしていたら収録ができない、なんてことは決してないのだが、これができているだけで台本が一気に読みやすくなるし、収録も間違いなくスムーズに進むから、これからの台本作りにぜひ役立てて欲しい。


 台本を作る上で最低限守るべき項目は、以上三つだ。

 改めてまとめてみよう。


・収録するキャラクターのセリフを強調表示するなど見やすくしておく。

・セリフに番号を振っておく。

・ページまたぎをしない。


 たったこれだけ。非常に簡単だ。

 メーカーは台本化ツールでさっくりと終わるが、このどれかが抜けている場合はツールのアップデートをおすすめする。

 台本化ツールがない場合はすべて手動になるので特に番号を振るのがめんどくさくなるが、細かな配慮が快適な収録に繋がるので、ぜひ参考にしてみて欲しい。


 最後に、三点を盛り込んだ台本例を紹介して、今回は終わりとしよう。

 ――と思ったのだが、どうやらカクヨムには太字にしたり文字の色を変える機能はないようだ。

 なので、別サイトを引用させてもらう。


 めちゃくちゃ古い記事だが、こちらの記事を見てもらいたい。


【4Gamer.net】 - キャラクターゲーム考現学

番外編:キャラクターボイスとプログラミングとギャル

(https://www.4gamer.net/weekly/charagame/bangai/charagame_bangai03.shtml)


 この記事に台本の写真があって、


・収録キャラのフォントを大きくする。

・収録キャラの名前を上枠に。その他のキャラ、補足説明は下枠にまとめる。

・セリフの右隣に音声番号が振られている。

・(モノローグがないゲームなので)キャラの動きや感情の補足説明をいれる。


などなどが確認できる。

 ページまたぎについては確認できないが、おそらくしっかりと配慮されていることだろう。

 モノローグがあるアドベンチャーの台本を探してみたのだが、駄目な例は出てくるのだが完璧な例が見つからなかった。

 もし見つけたら、追記しておくことにする。

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