23:業界内でのライターの評判

 なんと質問を2つもいただきました。

 順に答えさせていただきますので、しばしお待ちくださいませ。


 さて、今回はこちらの質問。


■業界側のいう人気ライターとはどのような人のことを指すのでしょうか?


 クレジットに名前を載せるだけで話題になるようなライターがもちろん人気ではあるのだが、そういったライターは質問者があげてくれた田中ロミオ氏や虚淵玄氏だったり、奈須きのこ氏というようなレジェンドクラスになるため、そうそういるものではない。

 なのでメーカー側も「ライターで売り上げが伸びるかどうか」はそこまで重要視していないように感じている。

 じゃあライターはないがしろにされているのかといえば決してそういうことはなく、業界内ではかなり大事にされているポジションだと思う。

 もちろんメインだけ大事にして外注の扱いは雑、なんてメーカーはいくらでもあるし、俺みたいな無名はそういった扱いを受けることは多いのだが、しっかりとしたメーカーほどメインやサブ問わず、ライターを大事にしているという実感はある。


 以前『17:どんでん返し』で少し触れたが、シナリオの善し悪しは(よほど悪ければ別だが)あまり初動に影響しない。

 しかしながらシナリオというのは、作品とメーカーの評判に大きな影響を与える。

 絵はいいのにシナリオがやばいなんてことになれば、次回作の購入を避ける人がでてきてしまう。逆にシナリオもよければこのメーカーはマストバイだな! となる。

 イラストレーターが発売前の広報展開を支える存在とすれば、シナリオライターは発売後の評判を支える役割を担っている。

 だからしっかりとしたメーカーほどライターを大事にして、気持ちよく書ける環境を作ってくれる。


 ではどういうライターが大事にされるかと言えば、もちろんいいシナリオを書いてくれることが第一ではあるが、


・一定以上のクオリティが保証されており、

・締め切りをしっかり守り、

・メールなどのレスポンスもはやい。


 このような人が特に重宝されているように感じる。特に目立った代表作はないけれど依頼が途切れず1年に何本も出しているような人は、社会人としてしっかりとした人物であることが多い。

 逆にどれだけいいシナリオを書く人でも、数ヶ月連絡が取れなくなったり、締め切りを平気で破るような人は業界内で話が伝わっていき、評判はガタ落ちとなる。(それでも確かな実績がある人は仕事が途切れないのだが)


 人気萌えゲーのシナリオを手がけているのにあまり名前が挙がらない人がいるのはなぜか、と質問者は疑問に思っているようだが、それは単純に広報の仕方でそうなっているのかな、と個人的には推測している。

 実はスタッフの名前まで把握しているのはエロゲ歴の長いコアユーザーがほとんどで、“誰が作っているのか”をあまり気にしていないライトユーザーは結構多い。

 だからパッと見てわかるイラストに食いつくし、「シナリオはあの○○で有名な△△が――」と大々的に宣伝しない限り、誰が書いているのかなんて最後まで知らなかったりする。

 また、萌えシナリオがユーザーに評価されにくいのは、はっきりとしたことは俺にはわからないが、とても可愛いキャラクターがいたとして、「このイラストレーターの描くキャラは最高だな」となっても「このライターの書くキャラはすばらしいな」とあまりならなかったりするからなのかもしれない。

 しかしながらそういった可愛いキャラを書けるライターはとても貴重だし、そもそも高度な萌えシナリオを書けるライターは喉から手が出るほど欲しい人材であるから、たとえユーザーからイマイチ評価されていなかったとしても、業界内での評価は非常に高い。


 ……とまぁ偉そうに語っているわけだが、俺は経営側のことなどわからないので、すべて俺の実感や推測だったり、実際に人気のライターさんの仕事ぶりを見て、という非常に曖昧な話になってしまう。

 なのでてんで的外れなことを言っているかもしれないが、先ほどあげた三つの条件を守る人ほど大事にされるのは間違いないと思う。

 業界内にはライターに限らないが結構めちゃくちゃな人がいて、「自分の名前よりあの人の名前が先に紹介されていた。もうおりる」なんてヘソを曲げて本当に仕事をおりちゃった、なんてこともあるのだ。

 そういう苦労をしてきたクライアントと仕事をしていると、普通のやりとりをしているだけで「今回ほんとやりやすいっす……」なんて言われてこっちがびっくりすることもある。

 シナリオが重要視される流れになればライターのネームバリューも無視できなくなってくるのだろうが、やはりゲーム制作はチームで動くことになるから、「仕事しやすい人かどうか」も重要なファクターになってくるわけだ。もちろん、クライアントを満足させるだけの力があることが最低条件にはなるが。


 なので、たとえユーザー間で名前が挙がりにくい人でも、キャラクターを可愛く仕上げる技量があり、しっかりと締め切りを守って仕上げてくれて、なおかつ付き合いやすい人が業界内での人気ライター、となるだろうか。

 ヒットした萌えゲーに関わっている人は続々とラノベに進出しているし、エロゲ業界問わずラノベ業界でも、「可愛いキャラを描ける人」は注目されているのだろう。


 次回はそのラノベ市場についてどう思うか、という質問に答えさせていただきます。

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