15:延期の理由

 ネガティブな内容になるので一応メーカーやタイトルなどはぼかすが、この話の投稿日からつい数日前、とある作品が発売日を5ヶ月延期することを発表した。

 公式HPに掲載された謝罪文によると、原因は外注会社の納品が遅れているためだそうだ。

 ギリギリのスケジュールで制作を進めていた場合、延期の決断もやはりギリギリになってしまうのだが、5ヶ月というのはエロゲ業界でもかなり異常な期間で、納品が遅れたことが真実であるのならば、かなり早い段階から発売日に間に合わないことはわかっていただろう。

 では、なぜ本来の発売日の2週間前というタイミングで延期を発表したのか。

 予約のためではないか、と俺は考えている。


 エロゲ業界ではたまにあることで、もしかしたらコンシューマーでもあるのかもしれないが、予約数が想定よりも伸びなかった場合、延期をして広報にさらに力を入れて、予約数の増加を狙う場合がある。

 予約が一番入る時期は作品発表直後と発売日直前であるから、できる限り多くのユーザーが予約するまで延期の発表を控えるわけだ。

 割と参考になるとある店舗のランキングの低さと、謝罪文に「広報面で十分な告知を行えない」とあることから、予約数の増加を期待しているからこその5ヶ月である可能性はかなり高い。

 延期ごめんなさいイベント開催もそう推測した根拠のひとつとなっていて、ごめんなさいイラストを配布することでさらに予約者を増やそうという戦略なわけだ。

 既に開催店舗がしっかりと決まっている時点でそれなりに前から準備していたことは明らかで、ユーザーが頭金を払ってしまって後戻りできなくなる前に告知しようと思えばできたはずだ。

 あえてそれをしなかったのだから、ああ戦略的な延期だな、と俺は思ってしまったわけだ。


 延期で予約を増やす戦略をとる場合、実は既に完成している場合もあるのだが、わざわざ「外注会社が」と原因を謝罪文に記載したのだから本当に制作は遅れているのだろう。

 外注会社に依頼したのは一部の主要制作物とのことだが、クレジットによるとシナリオは所属スタッフ1名が担当しているようなので、実はゴーストを使っているなんて裏事情がない限り主要制作物の候補からは外れる。

 原画も所属イラストレーターと(おそらく)フリーランス数名で担当しているようだから、外注会社という表現は適さない。

 となると遅れたのは、CG着色、背景、BGM、OPやENDなどの各種ムービーのどれかだろう。

 ここで、ひとつの大きな疑問が生まれる。

 外注会社からの納品が遅れた影響でその他の進行も遅れたと謝罪文にあるのだが、CG着色が遅れた場合、シナリオが完成しているのならば線画を仮データとしてプログラムに組み込むことで、スクリプトは進められる。着色が済んだものから差し替えていけばいい。

 背景も同様に、ラフでもただ真っ黒な画像でもなんでもいい。仮データを入れておいて、完成次第差し替えるだけでいい。

 BGMは少々厄介だが、ひとまず全シーン無音で立ち絵とCGの演出だけしておいて、あとでテストプレイをしながら挿入していくという手もある。

 ムービーは挿入箇所が決まっているから、これも完成次第組み込めばいい。


 なにが言いたいかと言うと、“5ヶ月も延期しなければならないほど全体に影響を与える主要制作物が見えてこない”ということだ。

 外注会社との連絡がうまくいかなかったことは疑っていないが、それとは関係なく全体的に遅れていたんじゃないか、と。


 ただの戦略ではなく純粋に5ヶ月も必要ならば、シナリオか原画、あるいは両方共が遅れている。

 この中でもっとも全体に影響を与えるのがシナリオで、シナリオがあがらないからCG指定もあがらない。CG指定がこないから原画家が動けない。原画が届かないから着色も進まない。台本が作れず収録もできない。このように、シナリオが遅れれば遅れるほどすべてが遅れていく。


 となると俺の前提が間違っていて、外注会社に委託していたのはシナリオだったのだろうか。公式HPには載せずゲーム中のエンドクレジットにだけ載せるケースもあるから、もしかしたらそうかもしれない。

 しかし延期の長さを考えると相当な量のシナリオを委託していたことになり、そうなると単独ライターとして告知するのはおかしくないだろうか。


 じゃあ原画が遅れているのだろうか。おそらくイラストレーター1人1人に担当キャラがいるだろうから、誰かの作業が遅れたからといって他のイラストレーターに仕事を振ることも難しいだろう。

 でも外注“会社”と書いてあるからなぁ……。


 などなど、どうにも謝罪文の内容が腑に落ちないのだ。

 ただ「制作の遅れで延期します」とだけあったら俺も「大変だな」で終わったのだが、「外注会社の納品が遅れた影響で他の制作物もすべて遅れた」と書かれてしまうと、首を傾げざるをえない。


 もっとも、こんなのは外野にいるなにも知らない人間のゲスの勘ぐりであるから、責任は誰にあれ現場はそれはもう修羅場っていることだろう。


 ただ思うのは、「外注会社のせいである」と明かす必要はあったのかということだ。

 その外注会社はおそらくENDクレジットに載るはずだ。その結果名が知れ渡り仕事を失うかもしれないが、それはどうでもいい。納期をぶっちぎったその会社が絶対的に悪い。


 しかしユーザーにとっては「誰のせいで延期したか」はどうでもよく、そんな情報は同業者の間で共有すればいいことだ。

 ユーザーにとっては「ただ気持ちよく楽しく遊びたい」、たったそれだけだろう。


 あえて穿った意見を述べるならば、数ヶ月前に延期がわかっていながら予約締め切りのギリギリまで告知を粘り、その裏でごめんなさいイベントをしっかりと企画し、外注会社を生け贄に捧げることでユーザーの怒りの矛先をメーカーから逸らした。そんな風に見えてしまう。


 俺自身捻くれた見方だとは思うのだが、そうなってしまうくらい、疑問を感じる謝罪文であった。

 

 売り上げ不振が続く昨今、買い続けてくれるユーザーの信頼を裏切らぬよう、メーカーには誠実な対応を求めたいものである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます