14:シナリオとイラストと広報戦略

 シナリオゲーは売れない。今は原画家がすべて。という話を何度かしているわけだが、ではなぜそうなってしまうのかを、少しばかり掘り下げて話してみよう。


 正確には「シナリオゲーは“初動では”売れにくい」であって、実はこれはエロゲ黎明期からそうだったようだ。

 なぜかと言えば、シナリオはやってみないとわからないから。これに尽きる。


 かの有名な田中ロミオ(山田一)氏の『家族計画』も、インタビューでの氏の回答(確かゲームの同梱物かなにかでここでそのソースは出せないのだが)によれば、初動は散々なものだったようだ。

 しかしシナリオが素晴らしいとユーザーに知れ渡り、徐々に売り上げを伸ばし大ヒットし、エロゲ史に残る名作となった。


 つまりシナリオとは発売後に作品を支える要素であり、昔から初動の売り上げにおいてはイラストの方が重要であった。

 しかしシナリオのブースト力が凄まじかったがために、当時はイラストよりもシナリオに比重を置き、二次出荷三次出荷を狙う戦略をとっているメーカーが多かったわけだ。

 だが現在はいくらシナリオがよくても、評判になりはしても売り上げは伸びない。リピートが来ないのだ。二次出荷できたとしてもせいぜい数百本くらいで、リピートのおかげで何万本まで売り上げが伸びました! なんてことは起こらない。

 だから今度はシナリオではなくイラストに比重を置き、初動でいくら伸ばせるかの勝負になった。


 なぜそうなったのかはっきりとした理由など俺にはわからないが、やはり不景気で中古に手が伸びがちであることや、ネットの発達によってエロコンテンツが気軽になりユーザー自体が減少傾向にあること、つまりエロゲブームが去ったことが大きな要因であるように思える。


 企画とシナリオがよければ売れる! というのはもう通用しないセオリーとなっていて、今ではいかにユーザーに好まれる絵柄の原画家を連れてくるか、そしていかに広報に金をかけるかが重要になっている。


 新規メーカーがデビュー作で妙に話題になっていて、予約も伸びているようだ。下手ではないし可愛いけど、特に個性のある絵柄でもないし、シナリオもなんだか普通そうだし不思議だな。と思った経験はないだろうか。

 例外もあるが、それは流通がメーカーに出資しているなどの理由で、広報展開に他のメーカーよりも力を入れた結果であることが多い。つまり、流通が是が非でも売りたい作品である。


 店舗のスペースは流通が確保している場合が多く、メーカーの広報が店舗に直接交渉しても「いやここは○○さんのスペースなので」と断られてしまう。

 そういった流通が確保しているスペースの中でも、特に目立つ場所――エスカレーターから下りてすぐの場所だったり、大型モニターを囲うポップであったり、予約コーナーの壁や床であったり――などを、流通が今一番売りたいメーカーの作品に優先的に割り当てるわけだ。

 その結果、各店舗がその作品で埋め尽くされ、否が応でも人目につき、予約が伸びるという仕組みだ。


 そんなことで本当に予約が伸びるの? と思うかもしれないが、キャッチーな作品が作れず平均売り上げ2000から3000本だったチームの作品が、ふとしたきっかけで流通に気に入られ店舗に優先的に展開された結果、初動が2倍に伸びた。

 スタッフも作品内容も特に代わり映えしないのに、前作の評判も散々だったのに、店舗展開に力を入れただけで2倍である。(ちなみに次作では流通にそっぽを向かれて売り上げが戻ってしまっている)

 それが超有名原画家の作品だったらどうか。売り上げ6000本程度で済むはずがない。

 このように有名原画家と強気な広報戦略は、強力な相乗効果を生みだすのだ。

 ネタバレを避けなければならず広報展開に生かせないシリアスなシナリオよりも、単純明快で広報しやすい萌えゲーの方が持て囃される理由も、わかってもらえるだろう。


 裏を返せば、流通は売りたい作品しか積極的に広報展開しない、ともとれる。

 それは事実で、業界最大手の某流通は、売れそうな作品のみを大プッシュして、他の作品はなんだかんだと理由をつけて一切営業しない。

 大手メーカーの話題作しかユーザーにアピールしないのだから、余計に「原画家もライターも無名だけど素晴らしい作品」が日の目を見るはずがない。


 作品を全国に卸す流通会社が特定の作品しか売ろうとしないのだから、メーカーもチャレンジは避け売れ線の作品のみ作るようになる。

 18禁だからこそできるエロゲの多様性を業界人自らが潰してしまっているのだから、エロゲが衰退してしまうのも当然なのかもしれない。

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