08:ゲーム制作のおおまかな流れ

 収録の流れを説明したり、特典物がどう決められるかを明かしたりエロゲ制作の一部分について今まで語ってきたわけだが、今回はゲームが完成するまでの流れを話していこうと思う。

 真っ先にするべき話をなぜ後回しにしていたのか自分でもよくわからないが、ほぼ思いつきの気まぐれで書き殴っているのが実情であるから、どうか順序がめちゃくちゃなのはご容赦いただきたい。


 ゲーム制作の出発点は、もちろん企画の立ち上げである。

 あくまでも俺の場合は、であるが、まず「なにがしたいか」を考える。ここでは仮に「SF百合バトルコメディ」としよう。

 おそらく多くの読者は「そんなジャンルじゃ絶対売れねぇな」と思ったことだろう。俺もそう思う。しかしやりたいのだ。

 だから(自分にとって都合のいい)客観的なデータをできる限り用意する。

 最近は百合アニメが流行っている。一般向けの作品ではあるが「○○」という作品は大ブームだ。他社のSFエロゲ「△△」はX万本の売り上げだ。以上のデータから、少なくともY本は売り上げを見込め、百合界の有名原画家であるあの人を起用できれば1万本突破も可能。実際にその原画家の過去作品は数万本の売り上げを記録している――などなど、上をその気にさせる材料を徹底的に揃え、資料を作るわけだ。

 そして、うまくノせることができれば「よし、やってみよう!」となる。

 しっかりしたメーカーであれば予算、スケジュール、ターゲット層などなど、さらに細かな部分を企画書に盛り込み、時間をかけて練っていくのだろうが、あまりそういった企画書は見たことはない。大手メーカーですら、あらすじと人物設定だけを書いた資料が『企画書』だったりする。そこらへんは結構適当なのだ。だからこそ希に、「なんでこれが企画会議通ったの?」という作品も生まれてしまうわけだが……。

 もちろん、『SF百合バトルコメディ』がそのまま通るようなメーカーもかなりやばいので、「バトルにする必要ある?」「百合なんてうちのユーザー求めてないよ?」「SFとか設定作るの大変だし背景描くのもめんどうだしやめてよ」などなど、様々なツッコミが入り、最終的に『男の娘学園潜入モノ』とかになったりするわけだ。

 企画会議については、またいつか詳しく触れてみたいと思う。


 企画が決まれば、制作もスタートとなる。

 企画会議で発売日、シナリオボリューム、CG及び背景の枚数などはだいたい決められるので(決めないメーカーもありグダグダになることもあるが)、それに沿って細かなスケジュールも決定する。

 ここからディレクターによって大きく進行方法が異なってくるのだが、よくあるパターンの『ライターに設定、プロットの制作を投げる場合』について触れる。


 設定とプロットがないとなにもできないため、まずはそこから取りかかることになる。

 作品の方向性を決める重要な作業であるが、結構外注にポンと投げたりする。「好きなようにやってよ」と。

 だが、重要な作業であるがゆえに本当に好きなようにできるわけではなく、苦心して作った設定はだいたい「最初にそれ言えよ」というような物言いがつく。

 あと最近多いのが「原画家先生の好みに合わせてください」という注文。

 もちろんそんな風に直接的に言われることはないが、「ロリ系のキャラは先生が嫌いなので……」「男キャラは出さないでください」などなどのリテイクが来るわけだ。

 こちらもできる限り抵抗するが、俺如きが人気原画家の意向に逆らえるはずがなく、最終的にはやはり従わざるを得なくなってしまう。

 ただタチの悪いディレクターもいて、原画家はまったく文句を言っていないのに、「原画家が嫌がっているから」と自分の要求を通そうとしたりする。

 そういうのはあとでだいたいバレてこちらのモチベーションを著しく削いでくれるから、やめてほしいものである。


 ライターがストレスを溜めながら作成した設定とプロットが通ると、いよいよ執筆となる。

 原画家もキャラデザに取りかかるのだが、その他のスタッフは現在進行中の別のプロジェクトの作業に入っていることが普通だろう。

 グラフィッカーは原画がなければなにもできないから、別進行のプロジェクトの終了後、原画がある程度揃ってからこちらの作業に入る。

 常に1作しか作っていない(それで回る大手の)メーカーは、その間カードゲームだったり他社のCGの着色だったりを請け負って間を埋めているそうだ。


 あとはとにかく執筆し、数ヶ月から半年、長ければ一年後に執筆完了となる。

 一年!? と驚くかもしれないが、超大作の作品に関わると本当に一年間か、それ以上の期間その作品にかかりきりになる。もっとも、そんな作品に関わるのは希ではあるが。


 完成後は校正をしてもらい、校正が終了したら台本化、そして収録、収録後にスクリプトに入る、というのがライターのお決まりのパターンだろうか。外注の場合は、納品したらそこで終了である。

 たまにスクリプトまで頼まれたりするので、スケジュールに余裕があれば引き受ける。やはり自分で演出した方がイメージ通りのシーンになるので、できる限りライター自身でやった方がいい、と俺は考えている。

 人に任せると、怒っているシーンなのになぜか笑っていたり、その上頬を赤く染めていたりするというこちらの意図とはまったく真逆の演出をされたりする。

 収録も同様で、照れているシーンなのになぜかガチ切れしていたりとかもあるわけだが……その辺は長くなるのでまぁいいだろう。いつか語ろう。

 原画家はとにかく原画をあげて、途中雑誌の描き下ろしだったり、その他販促の作業を進め、すべて描き終わったら終了である。拘る原画家は着色の監修もするが、外注だとそこまですることは希であろう。

 背景やBGMの制作、ゲームのUI制作なども並行して進められていき、マスターアップ直前には睡眠時間を削りながら無心で制作を進め、まだマスターアップしていないのに「マスターアップしましたよ~!」とHPでマスターアップボイスを公開したりしながら魂をすり減らしがんばって、ようやくゲームは完成する。


 後半かなりはしょったが、やるべき作業が決まってしまえばとにかくそれをやるだけなので、実はあまり語ることがなかったりする。

 マスターアップはだいたい発売日の2週間ほど前がデッドラインなので、その日までに完成できるようとにかくがんばるしかないのだ。

 どうしても無理だったら延期となるし、先ほどのように嘘マスターアップ告知をしていた場合は、マスターアップ後に延期するという珍事が起こる。


 外注になるとマスターアップ前の修羅場とはほぼ無縁になるので、気楽なものである。社内にいない分、議論の機会を与えられずクライアントからの要求をただ黙って聞くのみという状況に陥りがちでもあるが、発売日が迫ってもたっぷり眠れるのはなんとも幸せなことである。

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