06:エロゲのタブー

 今回はシナリオを書く上でのタブーを話していこうと思う。

 ジャンルによって異なるため、請け負うことの多いオーソドックスな恋愛アドベンチャーについてのみ触れることとする。


 設定段階から関わる場合、どういう要素を盛り込むか、逆にどういう要素を避けるべきか話しあうわけだが、真っ先に出るのが「寝取られ要素は絶対に避けること」である。

 寝取られと一言で言ってもその幅は非常に広く、「恋人が他の男と浮気すること」以外にも、「(たとえ故意ではなくても)主人公以外の男がヒロインの体に触れること」だったり、度が過ぎると「ヒロインが他の男と話すこと」までも寝取られに含めたりする。

 前回話したように「ヒロインが他の男の視界に入ること」すら嫌うユーザーも(ごく少数だろうが)いるので、そういったユーザーに究極的な配慮をした作品では、男性キャラは主人公以外一切出てこない。


 それと「主人公以外の男性キャラに得をさせないこと」も重要となる。

 たとえば、ヒロインと主人公、そして友人の男子生徒が外で談笑していたとする。突風が吹いて、ヒロインのスカートがめくれてしまった。そのとき、パンツを見ていいのは主人公だけで、友人は余所見をしているか、飛んで来た新聞紙が顔に当たるなどして視界を奪われていなくてはいけない。

 友人がヒロインのパンツを見てしまうことで、「ヒロインが汚された!」と感じるユーザーがいるのだ。これもある意味、寝取られになるのかもしれない。


 ぶっちゃけると、そこまで気にしないユーザーの方が多い。しかし気にするユーザーは確かにいて、不景気ゆえにどこのメーカーもリスクを徹底的に避ける傾向にある。

 つまり、たとえ少数でも、可能性が低くても、ユーザーが不快に感じるかもしれないシーンは書いてはいけないのだ。

 その最たるものが寝取られで、特に萌えイチャラブ系の作品ではかなり気を使う部分である。


 そして寝取られを避けることと同じくらいに、もはや常識となっているのが「ヒロインは処女であること」である。

 どんなに魅力的なヒロインでも経験済みなだけでバッシングを受けることになるし、作品自体が間違いなく炎上する。

 たとえ経験していなくても、過去に主人公以外の恋人や好きな人がいただけでもうアウトだ。

 中には人妻キャラにも処女であることを求めるユーザーもいる。

 「ヒロインは処女であること」は大前提であり、絶対に守らなければいけない要素である。

 迂闊に非処女ヒロインを出してしまうと、ディスクをかち割られたり、怪文書を送られたり、毎日何通も怒りのメールが届いたりする。

 所属ライター時代に似たような経験をしたので間違いない。

 しかし、実は烈火の如く怒っていたのは未プレイのユーザーがほとんどだった。

 プレイしたユーザーからはあまり批判はなく、ゲームを遊ばずネットなどで情報を集めたユーザーから「非処女ヒロインを出されたら今後お前のところのゲームを安心して買えない」というようなメールが届くのだ。

 なので俺個人としては「非処女でも納得できるキャラクターであればユーザーは怒らない」と思っていて、「そんなに神経質にならなくてもいいんじゃないか?」とも思っていたりする。

 もっともリスクが高いのは間違いないので、ヒロインは処女にするのが安心安定ではある。


 最後に「主人公は有能であること」。

 これは他の二つに比べればさほど重要視はされないし、クライアントからわざわざそういった指定がされることもあまりないのだが、個人的に気をつけている要素ではある。

 主人公が悩み、失敗し、それを糧に成長する。

 そういった物語は受けない。

 正確には受けることは受けるのだが、拒絶反応を示すユーザーも多い。

 主人公が悩んで失敗するところを見ると自分まで落ち込んで、イライラしてしまうからだ。

 だから悩むのはヒロインだけで、主人公はスマートにその悩みを解決しなければならない。

 最強系の主人公や、無条件に登場人物が主人公を褒め称えるのは、そういった「ゲームの中でイライラさせるな」というユーザーへの配慮だったりするのだ。

 とにかくストレスを排除し、ユーザーを気持ちよくさせるゲームが今は評価され売れる傾向にあって、どのメーカーもそういったゲームを作りたがっている。

 「ゴキブリという言葉はユーザーが不快になるから他の言葉に言い換えろ」なんて指示を出すくらいに、過剰すぎるほどにユーザーに配慮するメーカーだってある。


 俺もクリエイターの端くれであるから、「批判を恐れて自分たちで制限ばっかり作ってどうするの」と思ったりもするわけだが、神経質なほど配慮したゲームが売れているのも事実で、チャレンジした作品は賞賛と同数かそれ以上に批判されるのもまた現実である。

 売れないからこそどのメーカーも必死なわけで、売れ筋を作り続けるのは商業的に正解であるから、現状を嘆きこそすれ、作り手側の判断を責めることはとてもできない。


 売り上げが年々下がっていき景気回復が見えない以上、この窮屈な状況はまだまだ続いていくのだろう。

 せめて機会が巡ってきたときに恐れず一歩踏み出せるよう、チャレンジ精神だけは忘れないようにしたいものである。

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