とあるエロゲシナリオライターの日常

ひょうろくだま

00:はじめに

 これはただの日記である。

 俺の近況だったり、しょうもない愚痴を垂れ流すだけの、自己満足極まりない、ただの日記だ。

 このように人目のつく場所に公開しているわけだから、誰かに読んで欲しいなどと思っているわけだが、ありのままの俺の心情をごまかさず書き殴るつもりであるから、事実を誇張していたり、ねじ曲げたり、あるいは隠してしまったりすることもあるだろう。

 つまり、この日記は真実を書き記しているとは限らない。

 すべてどこかの暇人の妄想である、くらいに思って読んでもらえると助かる。


 俺の職業はシナリオライターで、主なクライアントはエロゲメーカーである。

 以前はとあるメーカーに勤めていたが、訳あって退職し、現在はフリーランスとして活動している。

 この日記では守秘義務に抵触しない程度に、俺の仕事内容を語っていく。

 実は契約書をかわさないことも多いため(付け加えればこちらから契約書の話をしてもスルーし続けるメーカーも多いため)、守秘義務なんぞあってないようなものだったりもするのだが、一応俺も大人であり社会人であるわけだから、常識の範囲内で語っていこうと思う。


 まず俺の仕事の話をする前に、エロゲ業界について触れておきたい。

 エロゲだけじゃなくゲーム業界全体に言えることかもしれないが、景気は非常に悪い。

 個人的なエロゲ業界のピークであった2004年から2005年頃では1万本くらい売って当たり前という空気が確かにあったが、今では5千本でまぁまぁ、8千本でよくやった、1万本でヒット、このような感覚である。

 ゲームの傾向も変わってきていて、2004年頃は「エロなんかいらねぇシナリオの質が重要」なんて一部で言われていたりもしたが、今企画会議でそんなことを言おうものなら袋叩きにされる。

 理由は簡単で、シナリオを重視した作品よりもキャラクター性を重視した作品の方がグッズの売り上げがいいからである。

 とある営業曰く、コアなエロゲユーザーというのは数千人程度で、彼らに2本、3本と複数買いさせることがヒットの秘訣、ということらしい。

 つまり重要なのは店舗特典であり、この不景気の中何万本と売るためにはゲームよりも特典をユーザーに欲しいと思わせる必要があるわけだ。

 ユーザーが萌えゲーばかり求めるからシナリオゲーが絶滅しかけているんだ、なんて主張をたまに見かける。しかし俺自身は萌えゲー好きのユーザーとシナリオゲー好きのユーザーの数に、さして違いはないと思っている。

 メーカー側が複数買いをする(あるいはしやすい)萌えゲーユーザーを狙い撃ちしているだけであって、ユーザー側に責任があるわけがない。

 かつては初期出荷数が数千本でも、発売後にシナリオが評価されれば売り上げがドカンと伸びたりした。しかし、今ではまず間違いなくそんなことにはならない。

 リピートがかかることはあるがその数は微々たるもので、初期出荷の何倍にも膨れあがったりはしない。

 初期出荷分は、店舗に入った予約数とほぼ同数と言われている。店舗が在庫を抱えることを嫌うため、余分な発注をしないのだ。だからたとえ売り切れても、大量に再入荷したりしない。仕入れるのは確実に売れる数だけだ。

 そんな実情であるから、メーカーにとっては初期出荷、いわゆる初動がすべてであり、だからこそ経営のためにも複数買いをしてもらいやすい萌えゲーを作るわけだ。

 それが、今のエロゲ業界なのである。


 そういった萌えゲー至上主義の中で、もっとも重宝されるのは固定ファンを持つ原画家である。その次に、無難な話を書けるライター。

 体験版でシナリオがめちゃくちゃ面白かったとしても、残念ながら予約は伸びない。しかしキャラがめちゃくちゃ可愛いと予約は笑えるほど伸びる。

 だから打ち合わせでは「キャラとイチャイチャしていれば話の中身なんてなくていい」と本当に言われるし、「○○先生に原画を担当してもらえる時点で売り上げは確保できているから、シナリオなんてクソにならない限りどうでもいい」とさえ言われてしまったりする。

 メーカーが求める人材はキャラを可愛く書けるライターであり、シナリオを面白く書けるライターではない。

 もっとも、大御所ライターであれば話はまったく別なんだが、残念ながら俺はほぼ無名。しかも2004年あたりのシナリオゲーにどっぷり浸かったタイプのライターである。

 ぶっちゃけ『萌え』ってなんなのかよくわかっていない。得意分野で勝負しようにも、「そんなものユーザーは求めてないから」と企画書は通らない。


 これは、時代に適応できていない底辺ライターの日記である。

 次回からは、俺がどんな風に仕事しているか、メーカー側からは主にどんな要求があるのか、そのあたりを書いていきたい。

 売れないライターであるから景気の良い話にはならないが、よければ俺の気が晴れるそのときまで付き合ってもらえると嬉しい。

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