日本酒『オヤジの店』に憧れて!?

 20歳そこそこの時、初めて香港に行った友人と、なぜか『オヤジの店』を開拓することになりました。


 私たちの持つ、『オヤジの店』イメージは、地酒をたくさん揃えているお店だとかのことで、焼き鳥などをつまみに、美味しい日本酒を飲んでみたい……と、変な方向に興味が湧いてしまったのです。


 相変わらず、遠足みたいなカッコで。20歳には見られず。

 香港のガイドブックのせいではなく、もともとそんなカッコだったのか……。

 服装的に垢抜けた、というか見られるカッコになるには、後一年くらいかかりました。


 私と友人は高校は同じで、そこから先は違う学校でしたが、最寄り駅が同じだったので、一緒に通っていました。

 私の学校では、飲むのが好きな子が多く、ビールや、居酒屋のカクテルとかサワーとかは、よく飲まれていましたが、その友人の通った学校には、なぜか酒豪が多く、飲んでる酒が違いました。


 羨ましいことに、友人は既に日本酒デビューを果たしていました!

 なので、私は、その友人から「これなら美味しくて、飲みやすいよ」という確かな情報をもとに、最初から美味しい日本酒を飲むことが出来、日本酒に対して印象は良かったのです。


 初めに飲んだのが、「美少年」でした。

 ちょっと注文するのが恥ずかしかったのですが、友人が勧めるもので。

 確かに、飲みやすくて、美味しく、初心者向けな覚えがあります。


 それから、宮城の「一ノ蔵」!

 これなら、居酒屋チェーン店にもあったりして、気軽に飲めました。

 ただ、これも、いろいろ種類があって、本当に美味しいのが、どの種類なのかまでは、飲み比べていないのでわかりません。

 とりあえず、お店に「一ノ蔵」があると、絶対頼んでました。


 菊水、出羽桜、真澄、上善水如、酔鯨、八海山、腰の寒中梅、もっといろんな種類飲んだと思いますが、あまり有名でないものもあり、結局は、何の酒というより、純米酒か吟醸酒か、というところになりました。となると、吟醸酒の方が好きだったかな。

 後味スッキリで、キレの良い、もっぱら辛口が好きだったので。


 超端麗辛口の吟醸酒(『J moon』でも、蓮華が優のことを辛口だと、そう比喩していました)であれば、何でも気に入ったと思います。


 今日、たまたま上善水如のスパークリングを見つけましたが、どんなだろう?

 一ノ蔵の発泡清酒というのもあるらしい。

 「シャンパンのような……」とか言われてて、どういうことだろう? 想像付きません。

 飲むしかないか!


 話は戻りますが、20歳くらいの時、友人が雑誌で探して来た、新宿かどこかの地酒のお店を『オヤジの店』と目星をつけ、二人でワクワクしながら行ってみると、本当に、おじさんたちしか客はおらず、遠足みたいなカッコの私たちは、まったく場違いで、「未成年じゃないのか?」という疑わしい視線を浴びながら、小さくなって飲んでいた覚えがあります。


 よくはわからず、甘口のお酒と、辛口のと、頼んでみました。

 甘口は、若年の私どもには、良さがわかりませんでした。

 またしても、百万年早かったのでしょうか?


 大人は甘口の酒が好きなんだ、そうなんだ、私たちは日本酒の味がわかっていないから、辛口みたいな後口スッキリの美味しく作られた、誰が飲んでも美味しいお酒しかダメなのだろう。


 後に、雑誌関連の仕事をした時(奏汰のモデルになった歌手にインタビューした頃)、上司から「辛口が好きな方が通だ!」と言われましたが、疑わしいです。

 好みの問題なのだと思います。


 それからも、地酒の店やら、オヤジの店やら行っていたと思えば、バーにも行き、バーはお気に入りのところを発見出来た(優さん似のバーテンダーがいる店、他)のですが、オヤジの店はイマイチなところばかりで、私たち視点の『真のオヤジの店』は見つけられずにいました。


 そんな中、後輩男子で、かまってちゃんの割りには、下に見られたくないという、ちょっとめんどくさい人がいたのですが、そいつが、私たちのオヤジ志向? に反応してきました。

 バーとかそういうところは知らないもんだから、違う方向で私たちに張り合おうとしていたようで。


「この間、年配のおじさんたちに連れていってもらった、すごくいい感じのオヤジの店があったんですよ! 多分、お二人とも、気に入ると思いますよ!」


 彼には、私たちが、以前、美味しい焼き鳥屋を探していると、割と人気のあるお店に連れて行ってもらったのですが、当時、生物なまものが好きではなかった私と友人が、勧められるままに鳥刺しを食べたら、翌日腹を壊し、2〜3日、大変な目に合いました。(鳥刺しは、とても美味しかったのですが……)

 なのに、そいつは、ピンピンしてました。


 彼と上司がどこかに食べに行った時も、上司が腹を壊してしまい、彼はピンピンしていたそうで。

 ヤツは、普段、いったい何を食べているのか?


 まあ、「オヤジの店に行かれるなら」と、私と友人は、のこのこ付いて行きました。


 が——

 狭くて(いや、それはいいとして)、コンクリート打ちっ放しの床、出される酒も美味しくなく、冷やなのに常温でぬるく(常温が適してるからとかじゃなく)、つまみも美味しくない。


 彼は、「この間は、どうも! 気に入ったんで、今日は、先輩二人を連れてきました!」と、顔見知りになった大将に、自慢気に話していました。

 ああ、この頃には、バーとかにも行くようになっていたので、さすがに、もう『遠足』ではなくなり、普通に見られるカッコになっていました。


「どーです? いい店でしょう?」


 そう後輩が私たちに言いました。

 お店の大将がすぐそこにいる手前、「美味しいです」としか言いようがありません。

 とにかく、店のことには私も友人も触れず、その後輩の恋バナをたらたらと聞かされました。


 「なんかアドバイスください」とか言うから、まだ相手の子の連絡先すら聞けてない状態で、アドバイスも何もないだろー、と思いました。


 友人は、「好きなら、さっさと連絡先聞いて、一緒に出かけなよ」と言い、私は、「ああいう子は、いきなり二人で出かけるっていうと引きそうだから、まずは、グループで遊びに行ってから、距離を縮めたらいいんじゃないか」と提案。


「あの子は引っ張っていってもらいたい子だから、さっさと行動起こした方がいいよ」

「でも、なんとなく、警戒してそうだったし」


 しばらく、私と友人の話し合いを見ていたヤツは、やれやれと肩を竦めた。


「二人の意見が割れてたんじゃ、俺は一体どうすればいいんですか? どっちにするか、早く決めてください」


 ピキッと来た私と友人——

「そんなこたぁ、お前が自分で考えろ!」


 まったく、その日は、酒がマズく、つまみもマズく、話題も面白くなく、ちっとも酔えなかった……。


 後日、再会した友人に、私は言いました。

「あいつの勧めたオヤジの店って、なんか違ってたね。酒も冷えてなくてマズかったし、料理もマズかったし、やる気ない感じの」


 すると、友人も、まったく同じ感想でした。

「あんなの、ただのさびれた店だよ! 我々の求める『真のオヤジの店』じゃないっ!」


 『真のオヤジの店』……そういえば、あれ以来、いろいろ行って、まあまあなところは見つけたけど、いつの間にか、探索終わってたかも?

 そして、そのまあまあだった店は、今はもうない。


 憧れの『真のオヤジの店』探索……フェイドアウト……

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