4.

 大学に行けば。

 今まで生まれて育った土地を離れることが出来れば。

 新しい人間関係を築くことができれば。

 自分の中の何かが変わると思っていた。こうも劇的に環境が変化したのだ、変わらない方がおかしい。そう思っていた。

 しかし現実はこうだ。何一つ変わりやしないどころか、かえって退屈になった気さえする。

 確かに自由は増えた。

 何時に帰ろうが誰に何を言われる訳でもないし、好きなものを好きなときに食べられる。

 授業だって、高校までに比べると、休もうと思えば簡単に休めてしまう。

 なにも充実したキャンパスライフを夢見ていた訳ではない。けれどこれではあまりにも平坦すぎる。

 そんなときに、こんなつまらない毎日を壊してくれそうなものに出会えたのだ。

 ようやく見つけた可能性にすがりついて何が悪い。

 壁にかけた時計に目をやる。六時過ぎ。夕飯には少し早い。

 ベッドの上の衣類の山を端に追いやって横になる。少し酔いが回っていた。押し寄せる眠気に逆らわず目を閉じる。

 瞼の裏で蜂蜜色の鱗がきらめいた。

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