第23話 2087年12月21日 青森県青森市八戸区階上村 旧モズマート跡地

暫定県道を抑えめのヘッドライトで道なりに進んだ、一見古の赤いラシーン、現ラシーンマークツー

嘉織、バックミラーに浮かび上がる車体のマーキングを見ては、ダブルタップ、機影トレースに刻一刻と表示される

「さて、15台か、もっと巻き込まないと、」

佐治、後ろを振り返っては戻り

「早めに始末して、極道の後衛呼び込まないといけませんね、」

純、後ろを見張ったまま

「そうだよね、それならあそこ行こうか、」

嘉織、確と

「純、一気に捲るか、」


ラシーンマークツー、ギアも適度に誘っては、追尾してくる車両はうっすらとする雪道を必死に追いつきながらも漸くとばかり、戦中営業していたショッピングセンター跡地内に飛び込む

ラシーンマークツー、抜群の小回りで駐車場内で只管巻いては翻弄し、いよいよ、モズマートの店舗の左出入り口へと獣除けバンパーで豪快に突入、翻弄されるまま理性の吹き飛んだ後続の15台も続く


防犯上薄い照明のモズマート、店内レイアウトは今も尚も、ラシーンマークツーそのまま商品棚飾りを次々撥ね除け疾駆

純、はきと

「嘉織ちゃん、そこ曲がって、中央出口だよ、」

嘉織、バックミラーで後続伺うも

「純、早い、でも全部巻き込んだか、」

純、こくりと

「リールを定期的に変えないと、喬爺駄目だって、」

嘉織、忽ち目を見張り

「喬爺、突然殺す気か、」

ラシーンマークツー急ブレーキと同時に短距離後輪ドラフトで中央出入り口突破


後続の極道の車両群15台全て、勢い殺せずそのまま突っ込み、店内で次々衝突しながらも、目敏くも右出口を目指し、勢いそのまま、純によって無尽に張られたリールが次々弾け飛び、見る見る店内誘爆の火炎が舞い上がる

モズマート内のトラップ、床づたいにスーパーナパームが瞬時に広がり、紅蓮の炎が上がっては全車両タイヤを溶かし、灼熱の中空転しては身動きすら出来ず、例え炎でもからがら車両から逃げるが極道達、漸く出口に辿り着くも、尚も続く炎は容赦なく全て焼き尽くすべく車に引火し大爆発炎上、衝撃で吹き飛びただ気を失う極道達


駐車場で、ラシーンマークツーから見守る一同、モズマートから放つの爆炎を唖然と

佐治、頻りに感嘆

「おお、正に侮れない一族だ、」

純、炎で照らし出される中、目を凝らし各出口を確認しては

「追いかけて来る車両無いね、」

嘉織、見据えたまま

「人影あったな、出て来ても黒焦げか、これなら碌に起動しないか、時間があったら回収してやるか、」

佐治、ただ見張ったまま

「いやー、作戦初っ端から盛大ですね、傭兵オートマシーンと言えど死にますよ、これは、」

久住、不意に

「いや、この気配、くたばっていませんよ、放っておきましょう、」

嘉織、何度かきついブレーキランプ出しては、確認し

「ふん、起きやしない、一発で駆逐って、張り合いないな、なんだこれ、」

純、ゆっくり頷き

「喬爺、やっぱり凄いね、」

佐治、はたと

「しかし、この安普請で、よく崩れないものですね、」

嘉織、ただうんざりと

「純、」

純、こくりと

「かれこれ、23度目かな、何度となく来るから、耐炎の支柱に入れ替えたんだよね、でもね、そこまでするなら、いっそ新モズマートとして開店した方が良いかなの話もあって、でもそこは敬治が出しゃばっちゃうから、トラップ置き場のままなんだよね、」

嘉織、くしゃりと

「ふん、喬爺もさ、安易に各施設に入り込むなと散々言われたけど、しっかり勉強させて貰ってるぜ、」

純、前のめりにも

「それ、私がいたから大丈夫だったでしょう、あのまま進んでたら、一緒に黒焦げだったよ、」

嘉織、ひくつくも

「来て早々純のトラップ替えなんて気付かないよ、まあ純も、喬爺と同じ思考回路なんて、どう感化されたものやら、」大仰にお手上げも

佐治、ただ感慨深気に

「日本の戦中派は実に恐ろしいものです、」

純、不意に

「元三沢基地が近いから、原爆落とされれば、奮起しちゃうよね、」

嘉織、とくとくと

「全く、中国も日本中の米軍基地に原爆落としやがって、そこまで日本に拘るなんて、尋常じゃないよ、なあ佐治、第三次世界大戦で中国は一体何を奪いたかったんだ、資金、資源、技術、女、それとも隠匿した財宝か、なあ、」

佐治、視線も遠く

「強いて言えば、その全てでしょう、それが戦争です、これ以上は別の機会にしましょう、ただ長くなりますからね、」スーパーナパームの陽炎をただ見つめる

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