第2話 2087年12月3日 静岡県静岡市岡崎区 岡崎晴朗高校 給食準備室

同市岡崎区の岡崎晴朗おかざきせいろう高校、物資供給不足で長期冬休み前の12月3日

昼の給食が早朝からの保健所の緊急査察で提供出来ずに、急遽午後の授業が中止になってはただ校舎は閑散と


下ごしらえ中そのままの給食準備室に、吊るし背広姿の長身とがたいの良い二人

長身の安原やすはら、高感度ラジオ放送をダイヤルを回しオフへ

「どうしても通信が途切れてるか、盗聴マイク仕掛けた三ヶ所見つかったな、かなりの上手が乗り込んで来たと見るが、あのがき、素行の悪さで値踏されてるが、上玉だったとは、ここは急いで売り捌くしかないか、」ただ右手の嚙まれた歯形を摩る

バランス悪くも上半身が発達したがたいの良い赤味噌あかみそ、何度も頷き

「安原さん、伝手はあるんですか、」

安原、こくりと

「ああ、止むえんがブローカーは山ほどいる、袖付きなら、引き合いも来る、こいつの身元探られる前に、転売で希釈するさ、」

赤味噌、呆けては小躍りし

「おお、生意気だけど、この美貌は、貴重ですって、そっちの方でも捌けますぜ、」

安原、淡々と

「やめとけ、この手のやんちゃは暴力で飼いならされる方だ、元の顔が拝めると思うな、」

赤味噌、こくりと

「カウボーイも大変なんですね、」

安原、パイプ椅子から立ち上がり

「まあな、最近の東南アジアは有志のユニオンとかが立ち上がって、大っぴらに商売出来ないからな、クライアントも慎重って事は、次の手順が来るかもな、」

赤味噌、ただ目を見張り

「それでも児童達に腰振らせて踊らせれば一発ですよね、大盛り上がりですって、おお、来たー、」

安原、ただ事も無げに

「いつぞの日本文化と一緒にするな、」

赤味噌、興奮隠そうともせず

「安原さん、この仕事終ったら、牧場行きましょうよ、1ヶ月抱きまくりですよ、」

安原、苦笑しては

「阿呆な事を言うな、1週間で十分、もっとも俺は戦前の酒が飲めれば、それでいい、」

赤味噌、居丈高にも

「だから、立たないんですよ、まだ、そんな年じゃないですって、」

安原、くすりともせず

「言うな、この仕事は、やたら便宜あれど綱渡りだ、普通の感性なら性欲が湧く訳がないぞ、」

赤味噌、ただ剛腕を唸らせては

「安原さん、俺、元気ですから何でも言って下さいよ、ぶん殴れば、皆黙りますって、」

安原、意味深にも

「まあ、力仕事に過分は無い、ただがきの線は細い、うっかりでも内蔵傷つけるな、いいか、頼んだぞ、」

不意に調理棚脇から警告音が鳴る

安原、ややうんざり顔で

「がきは食事の時間か、まあ生きている証拠だな、」


安原、冷凍ブロイラー群脇の寝かせた大型スーツケースに手を伸ばしては、そのままロックを外し、扉を徐に開く

中には、各種配線の繋がった低温治療カプセル着を着た、輪郭の通った活発であろう少女


赤味噌、堪らず手を伸ばし太腿を無造作に揉みながら

「おお、ぴくりともしない、本当に生きてるんですかね、」

安原、赤味噌の手を払うも

「ああ、戦前戦中の生命維持装置は優秀だ、万能麻酔の配列も手元にあるし、これなら児童が泣き喚く事無く戦場から生き延びるわけだ、」

赤味噌、怪訝も

「今日で二日目ですよ、本当に効くもんなんですかね、」

安原、大型スーツケース内のイジケータを確認しては

「脈は安定してるな、そう一週間は軽く持つ、とは言え生食の装着が完璧じゃなかったか、まああれだけ叫べば、口から液漏れもするか、」

赤味噌、ただ真顔で

「一週間ですか、能登半島ルート持ちますか、」

安原、神妙にも

「能登半島ルートは昭和の御世から定番だが、そうだな、かなりの数の転売も考えておくか、メインバッテリーも新品だが、サブは替えての、生食も多めに詰めておくか、」踵を返し、もう一つの小型トランクへと

赤味噌、この隙とばかりに、少女の太腿を荒々しく揉み解し

「うん、安原さん、このがき、大丈夫、こんなに張りが有りますよ、」

安原、ただ小型トランクの内の医療セットと根を詰めるも

「しかし、何か冷えるな、生食に霜がって、」


何かが凍てつく音、見る見る凍てついて行く給食準備室


赤味噌、尚も少女の太腿を揉み解しながら

「そういや、さすがに寒いですね、温度下げましたか、と言うか日本は冬ですよ、ほら、俺達って東南アジア行ったり来たりしてるから、感覚が寒がりなんですよ、」

安原、神妙にも一式を確認しながら

「いや、調理中のブロイラーがそのまま置いてるから、この温度だろ、まあ我慢しとけ、」

赤味噌、不意に手が止まり

「仕込も大変ですね、本当今のがきって、昼を食べれるだけましですよ、」

安原、尚も他の医療セットに霜が付いてないか確認しながら、

「偽造した保健所の証明書は見せたが、まあこの量だ、都度都度、投げ出した仕込みの様子見で戻られては、さすがに厄介だな、まあいつも廃棄食材の中に放り込もうと思ったが、そこは急展開だ、誰も寄らなくなったし、このタイミングでそこそこに引き上げるか、赤味噌、万が一は容赦なく抉れよ、」

赤味噌、意気揚揚に

「任せて下さい安原さん、ただ、このがき売却したら売り先教えて下さいね、期間を空けてはまた搔っ攫って、牧場に送り込んで楽しんでやりますよ、そう、この容姿なら、牧場も一儲け出来ますよ、いや、今回の案件は儲かりますね、」

安原、尚も点検しては

「それは駄目だ、今回の上等な贈答品の送り先は、どこそこのそういう得意先じゃない、袖付きである以上、ある程度の生き仏さがないとな、」

赤味噌、目を丸くしては、ただ少女の足を揉み解し

「厳しいな安原さん、もういいです、それは他の上玉の拐かしにしますよ、リスト回ってるんでしょう、この腐り切った日本国は食うのがやっとで、人減らしもやっとですからね、この日本国に生まれたのが不幸の始まりな訳ですよ、」

安原、尚も

「もう言うな、態度に出て抜かるぞ、売値は一次バイヤーが確定してたから上乗せは出来ん、やはり身代金も頂かないと諸経費で大赤字だ、しかも運悪くも転売の運びとはな、このままでは他の案件が回って来る迄当座は凌げないから、どうにか今件の密偵に根回しして身代金を丸め込ませる、ふん、ここでも五割持ってかれるなんてとんでもない性悪女だよな、そもそも売場もどうかしてる、上玉の袖付きかどうか判明しないで素行で売値を渋るなんて、誰が悪党なのやら、」

赤味噌、惚けながらただ少女の両足揉み解しては

「安原さん、とは言え、コールドスリープじゃないなら、ちょっとだけは良いですよね、身包み剥いで低温治療カプセル着着せてたら、もう堪らなくて、ちょっとだけですって、いいですよね、安原さん、ねえ、」しつこい程に同意を求める

安原、はたと手を止め

「またか、お前は、本当に下衆の極みだな、まあ煙草吸ってくるから、その間だけだ、贈答品をちゃんと拭いて決して汚すなよ、分かってるよな、」

赤味噌立ち上がり、直立不動に嬉々と敬礼しては

「あざす、安原さん、」


“ガシ”

赤味噌の右足が何かに掴まれると一気に右膝まで氷結


赤味噌、身震いしては唇が震える

「足が、これは、」

安原、堪らず医療セットの入った小型トランクの場より飛び出し

「どうした、」

赤味噌、見る見る唇が紫に

「安原さん、右足が凍った、何ですかこれ、感覚が無い、無い、」

安原、遠巻きにも、

「これは聞いてないぞ、何が起った、逃げるぞ、来い、」

赤味噌、ただ嗚咽し

「安原さん、逃げるの何も、足の感覚が、でも、たまんねえ、たまんねえよ、その澄ました顔、興奮する、」


大型トランクから伸びた右手が、尚も赤味噌の右足を掴んだまま、

“パキン”、一瞬で凍りつき全身から冷気が立ち上る赤味噌


安原、舌打ちし

「半覚醒か、折角の金づるが、何てこった、」徐にショルダーホルスターから鉛玉のリボルバーを抜きトリガー引こうも一瞬で「冷たい、凍ってるのか、」右指を引き剥がそうも、リボルバーと共に右手の皮が一気に剥がれ真っ赤に染まったまま、勢いのままにリボルバーを投げ捨て「痛い、全く、凍るよりましか、」その顔は恐怖そのもの


その少女珠音、生命維持装置スーツケースから、ゆっくり這い出ては、体中のコードを緩慢且つ強引に引き抜き

「ああ、ああ、」絶え絶えに


給食準備室にただ冷気で弾ける音が激しく響き始める


安原、右手の痛さを感じる暇も無く

「全く、こんな案件紹介するなんて、通りでだ、売値の割に着手金が高い訳だ、常々の上玉の取り合いの果てにこれか、はめやがって、どうなってやがる、」繁々と部屋を飛び出るも、瞬時に給食準備室が冷気で固まり、長い廊下には堪らず氷結の炸裂音が幾重にも木霊する

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