ヤサシイヒト

 卒業式が終わり、三年生が卒業した。

 隣に住んでいる幼馴染の二つ上のお兄さんも卒業していった。

 お兄さんは東京の大学へ行くので、明日引っ越すらしい。だから気軽に会えるのは今日が最後。そう思っている。


 私とお兄さんは昔から星が好きだった。高校でも同じ天文部に入っていた。星は本当に好きだった。けれど興味を持ったきっかけは、お兄さんが小さい頃から好きだったからだ。


 いつからかお兄さんと会話をする事が恥ずかしくなった。それが態度に現れ、素っ気ない返事をしたり発言がツンツンしていたと思う。でもそんな事はきっとお兄さんはお見通しで、仕草で告白しなくても知られていたと思う。


 私は卒業式の前日の夜、卒業式が終わったら一緒に帰ろうと言った。だから今、私の前にその人がいる。

 たぶん、いや絶対察していると思うけど、何も言わずに前を歩いてくれている。


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