文庫

 文庫は手軽だし、価格も安い。ベストセラーだって二、三年待てば文庫化されるし、近年は一年ちょっとで文庫になるから単行本なんて買うのもったいない。さらにおまけのストーリーがついたりする。ボーナストラックなんていうのがそうだ。ますます、単行本を買う気が失せる。今も電車に乗る暇つぶしに文庫を読んでいるところだ。

「しかしのう、若者よ。文庫とは本来、蔵書を納める場所という意味だ。それがなんで、そんなちんちくりんの本のことを文庫というようになったのかのう」

 突然武士の亡霊が現れて、何事かぼやくと電車の中なのに馬に乗って消えていった。

 僕はあれは誰だと、考えていると、電車の車掌が、

「次は金沢文庫、金沢文庫でございます」

とアナウンスした。

 そうか、今の武士は北条実時だったんだと僕は思った。


(このオチがわからなかったらウィキペディアを引いてください)

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