殺戮者だった魔王様は、殺した主人を愛す。

桐生桜嘉

前世の記憶

第1話それは無慈悲で残酷なモノ。 レネクスside

男は、殺戮者だった。


人の絶望した顔を見ることに喜びを感じる者。


人を傷つけることを楽しむ者。


……人を殺すことに快楽を感じる者。


そして――



――――愛を、知らぬ者。





そんな彼が流した涙は、生涯にたった一度しかない。




最後の殺しをしたとき。


――“その時”だけである。




それは、彼が初めて“愛”を感じたときだった。


初めて罪を、自覚したとき。




腕の中にあるソレは、気づいたときにはもう、光を映してはいなかった。


男が死の間際に感じたのは、悲しみと、消えゆく優しい温もり。




忘れもしない、“彼女”がくれた、無償の愛――――。





――『私は、あなたを、愛しているわ』――






“彼女”は殺された。




――自分の愛する男に。






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