第108話 俺、今、女子相談中(異世界の俺の部屋)
で——。
立ち話もなんなので、どこか落ち着いたところに行こう。
と話しかけても、疑問符だらけの顔つきの
まあ、そりゃあそうかもしれない。あいつからしたら、どこでも同じだ。この異世界の街角はすべてゲームの中だ。それが現実、もしくは現実としか思えないような状態である俺とは違って、人目の無い隔離された落ち着いたところでこっそり相談しようが、このまま天下の往来で大声で話そうが、どちらもパソコンに向かってキーボードを叩いているに過ぎない。
でも、実際に
だから……。
「ここがあんたの部屋ってわけ?」
やって来たのは俺の部屋だった。
聖騎士の隊長クラスとなった俺は、この後、神殿内の騎士の宿舎に住むことになる。——その義務が生じるはずであったが、隊長になったばかりの俺は、引っ越し前でまだ場末の安宿暮らしてあった。
……というか、そういう脳内設定だったんだけど、本当にそのとおりであった。なんとなく街のこの辺なのかなって一帯をウロウロしてたら、宿の女主人に声をかけられて俺はその中に入ることになるのだった。その後は「ここかな?」って思った部屋が俺の部屋だった。もらった鍵を回して中に入れば、
「何だか私の部屋と雰囲気似てるね」
そのとおりであった。
もちろんあいつのだだ
家具の置き場所、大きさ、その形とか、そもそもの部屋の作りなどが、
でも、それも脳内設定のはずだったんだけどな。ゲームの中には住んでる部屋なんて出てこないし。
「なんか、そういう話聞くと、ここはあんたの妄想の中の世界というようにも思えてくるね」
「ああ」
俺もその可能性は考えていないでもなかった。俺が考えて、誰にも伝えてないし、書き残してさえいないような設定がこの世界には多々反映されているのだった。これは、——俺の妄想がこの世界を作り出したと考えれば理屈に合わないでもないが、
「でも、私はあんたの妄想の中の人物じゃないわよ。というか、自分がボッチオタクの妄想産物だなんて、そんなの勘弁して……」
確かにこいつが俺の妄想だとは思えないんだよな。
もちろん
「俺も、妄想するならもっとましな女性を妄想するよ」
百合ちゃんとか。
「はあ? まあ、そんな軽口叩いてるんならこのまま全く助けて上げなくても良いんだけど。その聖騎士様がこっちの世界でこのままやり放題にするのをほおっておいて……」
「いや、それじゃお前も困るだろ?」
なにしろゲームの中のキャラクター(と俺たちは思っている)聖騎士ユウ・ランドが入れ替わったのは
「くっ!」
「聖騎士様が現代日本で常識はずれの行動をすれば、それがそのまま
どちらにしても、俺たちはこの事態をなんとかするしかない。少なくとも、これが俺の妄想中の中の世界だったにしても、画面の向こうから俺にチャットで話しかけているあいつは、聖騎士ユウ・ランドに現代日本で暴走されると困るのは確かなのだから、
「……じゃあ、ちゃんと起きてることを整理しよう」
俺の提案にしょうがないといった顔でうなずく
*
というわけで異世界の俺の部屋で始めた
『ゲームの中、——そっちの世界で私がどうやってあんたを助けるかは話さなくて良いの?』
と言われたが、
聖騎士様をさっさと見つけてこちらの世界にお戻り願わないといけないことのほうだ。戻る方法は多分、今までの体入れ替わりの経緯から考えて、これもキスする——モニターの中に見えるだろうユウ・ランドと接吻願うしかないだろうけど、
「ともかく探しに行くしかないが……」
「どこにいったのか皆目見当つかないわよね」
「
「街中うろついてたら、森のなかに隠れられたりしたら」
我が地元は東京にもほど近い郊外であるが、山も川もある自然も豊かな場所なのである。それは普段は心地よく、郷土の自慢ポイントでもあるのだが、この場合はより探索を困難にする要素であった。
「でも、聖騎士様の目的が、まずは状況の把握や視察なら、森の中に隠れているなんてことはないか……。何かに追われて逃げているのならともかく、聖都で普通に歩いているときに俺と入れ替わったんだからな。まあ、何かの陰謀や事件を想定して慎重になっているだろうけど」
「この世界を偵察してくる、とか言ってたのだから、たぶん隠れて出てこないってことはないんじゃないかな?」
「そうだな。なるべく人目につかないように動くかもしれないが、じっと
「でも、私だけじゃ……」
「人数が足りないな」
歩いていける範囲と考えても結構広さになる。情報収集のため住宅地や森とかよりも繁華街を中心に移動していると考えても、隣駅くらいまで考えたらそれなりの範囲の捜索となってしまう。
「なら、他の人にも頼むしかないよね」
首肯する俺。
頼める人っていったら……。
体入れ替わりの事情を知る、
「じゃあ、私から頼んでみるよ」
三人に順番で電話をかけてもらうことになった。
まずは百合ちゃん。
今度はゲームの中のキャラクターと入れ替わってしまったと言う事態に驚くも、すぐに状況を理解して、すぐに聖騎士探索をしてくれる了解と、このあとゲームの中でも助けが欲しければと、
ゲームの中に入れ替わったなんて、そんな馬鹿げたことを言われても、一切の疑いも挟まずに真摯に話を聞いてくれて、そして迷いなくすぐに行動してくれる。さすが百合ちゃんであった。天使であった。
そして、下北沢花奈。
彼女も、事態をすぐに理解してくれて、探索にもすぐ参加してくれる約束をしてくれたのだが、
『中世世界の聖騎士。取材したい!』
とどうもこの機会を創作に生かそうと私利私欲は満々のようであるが、
『
なんと、ニワカで急造聖騎士としてゲームを楽しんでいた俺とは違って、すでにこの世界の強者である風の下北沢花奈でっあった。それは、たのもしい。彼女は
『まお……いいじゃないそんなこと。後で』
と言い淀んだというのがのが少し心配であった……。
で、最後に女帝——生田緑。
ついこの間まで俺が入れ替わっていたクラスのリア中のトップ女子に
『え、聖騎士? なにそれ、でも、というか、それが
『……?』
『今、私の横にいるんだけど』
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