第93話 最凶の魔法
花梨が、俺を好き……。
それなら今までの花梨の態度に納得がいく。
というか、何で俺は今までこのことに気がつかなかったんだろう。
俺に冷たい態度を取るのは、恥ずかしさの裏返しだったんだ。
そして中学の授業中に、俺が下ネタを言ったときも――
「俺さ、中学のときのことずっと気になってたんだ。授業中に俺が下ネタギャグかましたら、花梨がすげーにらんできたの。あのとき俺は、花梨はエロい話が嫌いなんだと思ったんだけど、実は違ったんだな。今考えてわかったよ」
この世界に来てから、俺がエロいことをすると相変わらず怒るくせに、シェリルのエロ魔法には目くじら立てないんだよな。
それに花梨自身だってエロ魔法使ってるし、知らないうちにBL好きになってたみたいだし、エロ関連の話題がまったく受けつけられないってことはなさそうだ。
「俺がエロいことすると怒るのは、俺が好きだからだったんだな。ずっと気づかなかったよ。だから花梨は、そんな俺に不満がたまってたんだろ? ……俺さ、今すぐに答え出せないけど真剣に考えてみるから、ちょっと時間くれないか?」
俺の顔が熱い。
きっと真っ赤になっていることだろう。
勇気を出して、ここまで正直に言ったんだ。
これならきっと、花梨の不満も解消してくれるはず。
「ククククッ、フハハハハハ――ッ!! こいつは傑作じゃ!!」
ところが、魔王の精神体はいまだ花梨に居座っていた。
しかも腹を抱えて大笑い。あれ、いったいどうして……?
「アラタやら、またずいぶんと思い上がった勘違いをしてくれたのう。花梨とやらの欲求不満の原因は、恋心などではないわ! だが自信に満ちたその言動、妾は嫌いではないぞ」
「えええええええええ!?」
ち、違うのかよ!?
これ恥ずかしいってもんじゃないぞ!!
お前、俺のこと好きなのか?とか言っちゃったじゃねーか!!
どんだけチャラ男なんだよ俺はぁ――!!
しかしそれなら、本当の理由は何だというんだろうか。
うむむ、まったくもってわからん……。
「さて、このまま待っておっても答えは出なそうじゃな。それなら妾の最凶の魔法で貴様らを葬ってやるとしよう。花梨とやらの記憶にあった、とっておきじゃぞ」
魔王は下腹部に魔力を集めると、フェザータッチで股間をさわった。
「食らうがいい。――――
ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――ッ!!!!!!
とてつもない爆発だった。
耳をつんざく轟音と、空気中のすべてが赤く染まる一面の炎。
何が起きているのかわからないほどの衝撃に襲われる。
渦中にいた俺は何もできずに、ただその場に倒れていた。
きのこ型の雲が空に立ち上り、風に流れて煙が晴れていく。
周囲は見渡す限り、焼け野原になっていた。
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