第84話 魔王復活①

「魔王が復活するって、どういうことだよ!?」


 俺は、受付のお姉さんの姿をした女神に詰め寄った。

 そもそも、魔王がまだ復活していなかったってことすら初耳なんだけど。

 いったい今、魔王はどういう状況なんだろうか。


「順を追って説明します。この世界の魔王は、深い眠りについているのです。それを魔軍参謀――現在の魔王軍トップが復活させる儀式をおこなっていました。順当に行けば魔王の復活は149日後になる予定でした。わたしとしては、その間にあなたたちにレベルアップしてもらうつもりだったのです。ところが――その復活が今日になってしまったのです」


「そんな……いったい何があったんだ?」


「アラタ、空を見てください」


 俺は言われたとおり視線を上に移す。

 赤、青、黄色。3つの月が、すべて満月になっていた。


「もうおわかりですね。そう――まんげ・つです」


「お前、今とんでもないところで区切ったな」


「3つの月がそろって満月になることで、異質点――自然界のエネルギーにちょっとしたズレが生まれてしまうのです。魔軍参謀はそれを利用するつもりなのでしょう」


「だからっていきなり今日だなんて……。お前も女神なら、こうなることくらいは予想しとけよ」


「してはいました。それでも魔王復活の儀式はおこなわれないと、われわれ神々は踏んでいたのです。なぜなら、エネルギー足りなくて魔王の復活が不完全になってしまうからです」


「それでも今日復活させるのか。何か強行しなきゃいけない理由でもあるのか?」


「それは……わたしにもわかりません」


 ふむ……。

 いったい魔王軍側に何が起こっているのだろうか。

 そもそも今まで接点がないだけに、まったく予想ができない。


「ねえ新太。さっきギルドのお姉さんのこと、女神って言ってなかった?」


「お兄ちゃん、その人女神さまなの?」


 あ……、花梨も菜々芽も気づいてなかったのか。


「め、女神だと!? アラタ、こちらの方は女神さまなのか!? まさかギルドの受付の人が女神さまだなんて、今までわたしは粗相をしていなかっただろうか!! ええとどうすれば……そうだ!! とりあえず、ははーっ!!」


 シェリルは軽くパニックを起こしたあと、参勤交代を拝む平民のように、大地にひれ伏していた。

 ……いやいや、それ女神にやることじゃないだろ。


「シェリル・ルーデリア、顔を上げて下さい。あなたの信仰心は普段のおこないから充分に伝わっていますよ。それよりも事態は急を要しています。急いで魔王と戦う準備を整えて――――え……?」


 女神がすべてを言い終える前だった。

 上空に異変が起こる。

 どこまでも広がる青い空が、突然ゆがんだ。

 そして次の瞬間、ブラウン管のテレビが砂嵐を起こしたような音が周囲に響き、空一面に大きな映像が出現する。


 そこには――

 モンスターと思われる男の顔がアップで映っていた。


 皮膚が緑色で、は虫類のようなつくりになっているが、目鼻立ちは人間と同じような位置にあった。ところどころに包帯を巻いていて、傷だらけの満身創痍になっているのだが、それがなぜなのかはわからない。


 そんなモンスターが、あざ笑うようにニヤけながら演説を始める。


「我は魔軍参謀ダーレス。聞け、愚かな人間どもよ!! もうすぐだ、もうすぐ偉大なる魔王様が復活するぞ!! フハッ、フハーッハッハッハ!!」

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