第61話 毒消し
俺はバイブを構えてスイッチを入れる。
ところが――
白い刃は、1ミリたりとも出てこなかった。
ちょっ、まだ俺の精力は回復してないのかよ。
亜鉛サプリでも飲んでおけばよかった、なんて本気で思ってしまう。
そんな丸腰の俺に、キノコのお化けが襲いかかってきた。
――やられる!
そう思ったときのことだった。
「ンゴぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
股ンゴが叫んだあと、突然しゅるしゅると小さくなった。
顔や手足が消えて、普通のキノコに戻ってしまう。
……あれ? 何が起こったんだ?
何もしてないのに、勝手に戦闘が終了しちゃったんだけど……。
モンスターの姿から元に戻ってしまったキノコ。
俺はおそるおそる拾い上げると、メッセージが流れた。
【あらたはクエストを達成した! ギルドに帰って報告をしよう!!】
「えっと……、何がどうなったんだ?」
「おそらくはアラタのそれを、仲間のキノコだとでも思ったのだろうな」
シェリルが俺のバイブを指さした。
なるほど、形が似てる。それで戦うのをやめてくれたのか。
た、助かったあああああああ!!
……いや、まだ助かってない。
食らった毒は今も体内をめぐり、俺はその場に倒れてしまう。
戦闘終わったら治るタイプかと期待してたんだけど、違ったかー。
「悪いシェリル。とりあえず俺の毒、治してくれないか?」
「ああそうだな。確かさっき買ったはず……ほら、毒消しそうだ」
シェリルがサプリのような錠剤を、俺の口に入れてくれる。
ん……?
毒消しそうなのに、草じゃないのか?
まあいいか。すりつぶして固めたやつかもしれないし。
俺は錠剤を飲みこんだ。水なしだとちょっとつらいな……。
【あらたは毒消しそうをつかった! あらたの毒はなおらなかった!!】
――――は?
何で治らないんだよ!! 毒消しそうだろ!!
【毒消しそう:回復アイテム ランクF
名称からして毒を消しそうだが、逆に言うと消さなそうでもあるアイテム。そもそも世界には数え切れないほどの多種多様な毒があるというのに、たった一種のアイテムですべてを消そうなどと考えるほうが愚かである。ざんねん!】
「おいシェリル! 毒消しそうの『そう』って、草じゃないのかよ!!」
「アラタwwwwww」
「草は生やさなくていいから!」
うん、このアイテム解説、確かに現実的なんだけどさ。
でもまあ、これだけは言わせてくれ……。
何でここだけ、ゲームっぽさを消す必要があるんですかねえ!!
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