第45話 ねこみみ

 俺は大慌てで、客引きの声から逃げだした。


 はあ、はあ……っ、危ない目にあった……。

 もし俺が金を持っていたら、散財していたかもしれない。


 そういや花梨と菜々芽はだいじょうぶだろうか。

 ふたりを探すと……すぐに見つかった。

 ふたりはまだ、最初にいたかわいい小物の店でキャッキャしてた。



 つーかさ、まだその店から動いてなかったのか?


 それとも一周回ったあとに、ここに戻ってきたのだろうか。

 何はともあれ、女子の買物ってすごいな……。


 花梨も菜々芽も、散財をしている様子はない。

 よかった。俺はひと安心して、ふたりの元へと行く。


「あ、お兄ちゃーん!」

「えっ!? あ……新太にゃあっ!?」


「…………にゃあ? 花梨、何言ってるんだ?」


「う、うるさいにゃあ!! あっち行けにゃあ!!」


 …………?

 花梨の様子がちょっとおかしい。


 へんな語尾をつけたかと思ったら、俺を見るなりその場にかがみこんで、何かを隠すように両手で頭を必死におさえていた。


 花梨の頭についていたのは――ネコ耳。


 ぴょこんとしたふたつのネコ耳だ。髪の毛に埋もれた部分をよく見ると、ヘアバンドになっていた。

 ……ははあ、なるほど。ゲームでもよくあるビジュアル重視の装備品か。



「あ、新太!! にゃに見てるんだにゃあ!! そんなに見るにゃあ!!」



 真っ赤になった花梨は、慌ててネコ耳ヘアバンドを取ろうとする。

 ところが髪の毛が絡まっているのか、なかなか外せないようだ。


「にゃあ!? と、取れにゃい!! にゃんでどうして!?」


「えー、リンお姉ちゃんそれ取っちゃうの? すごく似合ってるのにー」


「新太にゃんかに、こんな姿見られたくないにゃあ!!」


「もうバッチリ見ちまったよ。それより、何でそんな言葉づかいなんだ?」


「おもしろいでしょー。これつけると、ネコっぽい言葉になっちゃうんだって。リンお姉ちゃんかわいいよねー」


「あー、特殊効果があるアイテムなのか」


 菜々芽の説明で納得した。

 それにしても花梨、何というか……ネコ耳似合ってるな。

 俺が見てると、花梨は恥ずかしいのか泣きそうな顔になってしまう。



「ぐすっ。…………見るにゃあ」

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