第38話 はじめての街

 その後、俺たちは何事もなく街に到着した。


「うっわ……」


  大きな門を抜けて中に入ると、予想以上に人がいっぱいで賑わっていた。

 建物はレンガ造り、中世の西洋風。まさにゲームっぽい街並み。そして何より、すっごく広い!!


 たいていのロープレは真っ直ぐ進むとすぐに端から端まで行けてしまうものだが、この街はそんなことなかった。たくさんの建物が並んでいて、いろんな種類の店もある。日本にはない未知の雰囲気に、俺たちのテンションはいきなり最高潮だ。


「すごいねお兄ちゃん! 人もお店もいっぱいだよ!!」


「ああ。これが異世界の街……すげーな」


「どうだ、大きい街だろう。この辺りでは交易の中心となっている場所だからな」


 ふふん、と胸をはるシェリル。

 しかし俺と目が合うと、一度自分の胸を見たかと思ったら、ちょっと気まずそうな表情をしてひっこめてしまった。


 ……いやいや、小さい胸をはったって大きくならんぞとかは言わないから。


 それにしても街かあ。うはー、やりたいことがいっぱいだな。

 やっぱまずは買物か。いやいや、情報を集めるってのも大事なことだぞ。

 くぅ~、街に着くってゲームのときも楽しかったけど、今回のはリアルなだけあって、それ以上の楽しみがあるなあ。


「アラタ、この街には冒険者ギルドもあるのだぞ」


「えっ!? シェリル、それマジか!?」


「ああ、大マジだ。あとでアラタを冒険者に認定してもらおう」


「おお……」


 うおおおおっ、燃えてきたー!! ギルドなんてものもあるのかよ!!

 冒険者に認定されたら、クエスト受けて金をかせぐこともできるのだろうか。

 モンスターから素材手に入れて、自分だけの最強の武器作って……熱いぜ!!


 そうは思ったものの、俺の足はいきなりガクッと来て沈んでしまう。

 レンガの道にひざをつく俺。……そうだ、体は疲労困憊だったんだっけ。


「なあシェリル、まずはどこか休めるところに入らないか?」


「え……? アラタ、そんな……。でも、その……アラタなら……・」


 ん……? 何コレどういうこと?

 シェリルが顔を真っ赤にして、うつむいてるんだけど。


 よく見たら、ここは宿屋の目の前だった。

 そしてその宿屋には、異世界にはまるで似つかわしくない、ピンク色のネオンがチカチカと点灯している。看板には「ご休憩できます」との文字が……。


 えっと、その…………。

 ゆうべはおたのしみでしたね、って宿屋の主人に言われちゃうやつかな?





 つーかさ、アラタとならって……どういうこと?

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